名古屋大学 2002年 理系 第2問 解説

方針・初手
(1) は与えられた $a, b$ の値を不等式に代入し、図形の形状(中心、軸の長さなど)と境界との関係を把握する。 (2) は、領域 $D$ が領域 $E$ に含まれる条件を立式する。$D$ 内の任意の点 $(x, y)$ が $x^2+y^2 \leqq 1$ を満たすための $a, b$ の条件を求める。不等式から $y$ を消去し、$x$ の関数として最大値を考える方針と、境界を媒介変数表示して三角関数の問題に帰着させる方針が考えられる。
解法1
(1) $a=2, b=1$ を不等式 $\frac{\{x-(1-a)\}^2}{a^2} + \frac{y^2}{b^2} \leqq 1$ に代入すると、
$$ \frac{(x+1)^2}{4} + y^2 \leqq 1 $$
となる。これは、中心が $(-1, 0)$、長軸が $x$ 軸上にあり長さ $4$、短軸が $y$ 軸に平行で長さ $2$ の楕円の周および内部を表す。 境界の楕円と座標軸との交点は、$y=0$ のとき $(x+1)^2 = 4$ より $x = 1, -3$ となるため $(1, 0), (-3, 0)$ である。 $x=0$ のとき $y^2 = \frac{3}{4}$ より $y = \pm\frac{\sqrt{3}}{2}$ となるため $\left(0, \frac{\sqrt{3}}{2}\right), \left(0, -\frac{\sqrt{3}}{2}\right)$ である。
(2) 領域 $D$ の不等式を $y^2$ について解くと、
$$ y^2 \leqq b^2 \left\{ 1 - \frac{(x-1+a)^2}{a^2} \right\} $$
となる。このとき、実数 $y$ が存在するための $x$ の範囲は $1-2a \leqq x \leqq 1$ である。 領域 $D$ が領域 $E$ に含まれるための条件は、この範囲の任意の $x$ と、対応する任意の $y$ に対して $x^2+y^2 \leqq 1$ が成り立つことである。 $y^2$ が最大となるときに成り立てば十分であるから、条件は $1-2a \leqq x \leqq 1$ において常に
$$ x^2 + b^2 \left\{ 1 - \frac{(x-1+a)^2}{a^2} \right\} \leqq 1 $$
が成り立つことと同値である。式を整理していく。
$$ x^2 - 1 + \frac{b^2}{a^2} \{ a^2 - (x-1+a)^2 \} \leqq 0 $$
$$ (x-1)(x+1) + \frac{b^2}{a^2} \{ a - (x-1+a) \} \{ a + (x-1+a) \} \leqq 0 $$
$$ (x-1)(x+1) + \frac{b^2}{a^2} (1-x) (x-1+2a) \leqq 0 $$
$$ (x-1) \left\{ x+1 - \frac{b^2}{a^2}(x-1+2a) \right\} \leqq 0 $$
ここで、$1-2a \leqq x \leqq 1$ の範囲では常に $x-1 \leqq 0$ である。 したがって、この不等式が常に成立するためには、$x < 1$ において
$$ x+1 - \frac{b^2}{a^2}(x-1+2a) \geqq 0 $$
が成り立てばよい。($x=1$ のときは常に $0 \leqq 0$ となり成立する) 左辺を $F(x)$ とおくと、$F(x)$ は $x$ についての1次以下の関数である。区間 $1-2a \leqq x \leqq 1$ において常に $F(x) \geqq 0$ となる条件は、区間の両端において値が $0$ 以上となることである。
(i) $x=1$ のとき
$$ F(1) = 2 - \frac{b^2}{a^2}(2a) = 2 - \frac{2b^2}{a} \geqq 0 $$
$a > 0$ であるから、両辺に $\frac{a}{2}$ を掛けて整理すると $a \geqq b^2$ となる。 $b > 0$ より $b \leqq \sqrt{a}$ である。
(ii) $x=1-2a$ のとき
$$ F(1-2a) = (1-2a)+1 - \frac{b^2}{a^2}(1-2a-1+2a) = 2 - 2a \geqq 0 $$
これを解いて $a \leqq 1$ となる。
問題の条件より $a, b$ は正数であるから、求める条件は $0 < a \leqq 1$ かつ $0 < b \leqq \sqrt{a}$ である。
解法2
(2) の別解 領域 $D$ の境界は楕円 $\frac{(x-1+a)^2}{a^2} + \frac{y^2}{b^2} = 1$ であり、その上の点 $(x, y)$ は媒介変数 $\theta$ ($0 \leqq \theta < 2\pi$) を用いて次のように表せる。
$$ \begin{cases} x = 1 - a + a \cos \theta \\ y = b \sin \theta \end{cases} $$
領域 $D$ は凸領域であり、領域 $E$(円 $x^2+y^2 \leqq 1$)も凸領域であるため、$D$ が $E$ に含まれるための条件は、$D$ の境界上のすべての点が $E$ に含まれることである。 したがって、任意の $\theta$ に対して $x^2+y^2 \leqq 1$ が成り立てばよい。
$$ x^2+y^2 = (1-a+a\cos\theta)^2 + b^2\sin^2\theta $$
$$ = (1-a)^2 + 2a(1-a)\cos\theta + a^2\cos^2\theta + b^2(1-\cos^2\theta) $$
$$ = (a^2-b^2)\cos^2\theta + 2a(1-a)\cos\theta + a^2-2a+1+b^2 \leqq 1 $$
ここで $t = \cos\theta$ とおくと、$-1 \leqq t \leqq 1$ であり、条件は次の $t$ についての不等式が常に成り立つことと言い換えられる。
$$ f(t) = (a^2-b^2)t^2 + 2a(1-a)t + a^2-2a+b^2 \leqq 0 $$
$f(1) = (a^2-b^2) + (2a-2a^2) + a^2-2a+b^2 = 0$ となることに着目すると、$f(t)$ は $t-1$ を因数にもつ。
$$ f(t) = (t-1) \{ (a^2-b^2)t - (a^2-2a+b^2) \} \leqq 0 $$
$-1 \leqq t \leqq 1$ において $t-1 \leqq 0$ であるから、これが常に成立するためには $t < 1$ において
$$ g(t) = (a^2-b^2)t - (a^2-2a+b^2) \geqq 0 $$
が成り立てばよい。$g(t)$ は $t$ についての1次以下の関数であるから、区間の両端において $g(t) \geqq 0$ となれば十分である。
(i) $t=1$ のとき
$$ g(1) = (a^2-b^2) - (a^2-2a+b^2) = 2a - 2b^2 \geqq 0 $$
$a > 0, b > 0$ より $b \leqq \sqrt{a}$ である。
(ii) $t=-1$ のとき
$$ g(-1) = -(a^2-b^2) - (a^2-2a+b^2) = -2a^2 + 2a = 2a(1-a) \geqq 0 $$
$a > 0$ であるから $1-a \geqq 0$ より $a \leqq 1$ である。
したがって、求める条件は $0 < a \leqq 1$ かつ $0 < b \leqq \sqrt{a}$ である。
解説
(2) は図形的な包含関係を不等式の問題に帰着させるのがポイントである。 $D$ の右端の頂点は常に $(1, 0)$ であり、これが円 $E$ の境界上にあることに気づくと、不等式を整理したときに $x=1$(または $\cos\theta=1$)が必ず境界条件を満たす(方程式の解になる)ことが予測できる。 これにより式が必ず $(x-1)$ または $(t-1)$ で因数分解できるため、2次不等式の複雑な場合分け(軸の位置や判別式)を回避し、1次関数の端点を調べるだけの平易な処理に持ち込むことができる。
答え
(1) 中心 $(-1, 0)$、長軸が $x$ 軸上にあり長さ $4$、短軸が $y$ 軸に平行で長さ $2$ の楕円の周および内部。 ($x$ 軸との交点は $(-3, 0), (1, 0)$、$y$ 軸との交点は $\left(0, \pm\frac{\sqrt{3}}{2}\right)$ である)
(2) 条件: $0 < a \leqq 1$ かつ $0 < b \leqq \sqrt{a}$
図示: $ab$ 平面において、横軸を $a$、縦軸を $b$ としたとき、放物線 $b=\sqrt{a}$ と直線 $a=1$ および $a$ 軸で囲まれた領域。 境界線は、曲線 $b = \sqrt{a} \ (0 < a \leqq 1)$ と直線 $a=1 \ (0 < b \leqq 1)$ の部分は含み、$a$ 軸上の部分($b=0$)および原点は含まない。
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