名古屋大学 2008年 理系 第2問 解説

方針・初手
線分 $AR : RQ$ および $BR : RP$ の比を求め、$\triangle APR$ と $\triangle BQR$ の面積を $\triangle ABC$ の面積 $S$ および $s, t$ を用いて表すことが第一歩である。 線分の比は、初等幾何(メネラウスの定理)を用いるか、ベクトルを用いて求めることができる。面積の条件式を立式し、$s$ についての方程式を解く。
解法1
$\triangle ABC$ の面積を $S$ とする。問題の設定より、点 P, Q はそれぞれ辺 AC, BC の内分点であるため、$0 < s < 1$ かつ $0 < t < 1$ である。 $AP : PC = s : 1-s$ より、
$$ \triangle ABP = sS $$
$BQ : QC = t : 1-t$ より、
$$ \triangle ABQ = tS $$
である。
線分 $AR : RQ$ と $BR : RP$ の比を、メネラウスの定理を用いて求める。 $\triangle BCP$ と直線 $AQ$ についてメネラウスの定理を用いると、
$$ \frac{CA}{AP} \cdot \frac{PR}{RB} \cdot \frac{BQ}{QC} = 1 $$
$$ \frac{1}{s} \cdot \frac{PR}{RB} \cdot \frac{t}{1-t} = 1 $$
よって、$PR : RB = s(1-t) : t$ となる。 したがって、$\triangle APR$ の面積は、
$$ \triangle APR = \frac{PR}{BP} \triangle ABP = \frac{s(1-t)}{t + s(1-t)} \cdot sS = \frac{s^2(1-t)}{s+t-st} S $$
と表せる。
次に、$\triangle ACQ$ と直線 $BP$ についてメネラウスの定理を用いると(点 B は直線 $CQ$ の延長上にあるとみる)、
$$ \frac{CB}{BQ} \cdot \frac{QR}{RA} \cdot \frac{AP}{PC} = 1 $$
$$ \frac{1}{t} \cdot \frac{QR}{RA} \cdot \frac{s}{1-s} = 1 $$
よって、$QR : RA = t(1-s) : s$ となる。 したがって、$\triangle BQR$ の面積は、
$$ \triangle BQR = \frac{RQ}{AQ} \triangle ABQ = \frac{t(1-s)}{s + t(1-s)} \cdot tS = \frac{t^2(1-s)}{s+t-st} S $$
と表せる。
(1) 条件 $\triangle APR = 2 \triangle BQR$ に求めた面積を代入すると、
$$ \frac{s^2(1-t)}{s+t-st} S = 2 \cdot \frac{t^2(1-s)}{s+t-st} S $$
$s, t$ の範囲より $s+t-st > 0$ であり、$S > 0$ であるから、両辺に $\frac{s+t-st}{S}$ を掛けて整理する。
$$ s^2(1-t) = 2t^2(1-s) $$
$$ (1-t)s^2 + 2t^2s - 2t^2 = 0 $$
$0 < t < 1$ より $1-t \neq 0$ であるから、これを $s$ についての2次方程式として解く。
$$ s = \frac{-t^2 \pm \sqrt{t^4 - (1-t)(-2t^2)}}{1-t} = \frac{-t^2 \pm \sqrt{t^4 + 2t^2 - 2t^3}}{1-t} $$
根号の中は $t^2(t^2 - 2t + 2)$ であり、$t > 0$ より $t\sqrt{t^2 - 2t + 2}$ として根号の外に出せる。
$$ s = \frac{-t^2 \pm t\sqrt{t^2 - 2t + 2}}{1-t} $$
$s > 0$ かつ $1-t > 0$ より、分子は正でなければならない。 $\sqrt{t^2 - 2t + 2} = \sqrt{(t-1)^2 + 1} > 1$ であるため、$t\sqrt{t^2 - 2t + 2} > t > t^2$ となり、複号が正の場合のみ条件を満たす。 (なお、このとき分子を $t(\sqrt{(t-1)^2+1} - t)$ とみれば、明らかに $s < 1$ も満たす)
したがって、
$$ s = \frac{-t^2 + t\sqrt{t^2 - 2t + 2}}{1-t} $$
(2) (1) の結果を用いて極限を計算する。
$$ \lim_{t \to +0} \frac{s}{t} = \lim_{t \to +0} \frac{1}{t} \cdot \frac{-t^2 + t\sqrt{t^2 - 2t + 2}}{1-t} $$
$$ = \lim_{t \to +0} \frac{-t + \sqrt{t^2 - 2t + 2}}{1-t} $$
$t \to +0$ のとき、不定形にはならず、そのまま代入して極限値が求まる。
$$ \lim_{t \to +0} \frac{-t + \sqrt{t^2 - 2t + 2}}{1-t} = \frac{-0 + \sqrt{0 - 0 + 2}}{1 - 0} = \sqrt{2} $$
解法2
線分比をベクトルを用いて求める別解を示す。
$\vec{AB} = \vec{b}$、$\vec{AC} = \vec{c}$ とする。条件より、 $\vec{AP} = s\vec{c}$、$\vec{AQ} = (1-t)\vec{b} + t\vec{c}$ と表せる。
点 R は線分 AQ 上にあるため、実数 $k$ ($0 < k < 1$) を用いて、
$$ \vec{AR} = k\vec{AQ} = k(1-t)\vec{b} + kt\vec{c} $$
と表せる。また、点 R は線分 BP 上にあるため、実数 $l$ ($0 < l < 1$) を用いて、
$$ \vec{AR} = (1-l)\vec{AB} + l\vec{AP} = (1-l)\vec{b} + ls\vec{c} $$
と表せる。$\vec{b}, \vec{c}$ は1次独立であるから、係数を比較して、
$$ \begin{cases} k(1-t) = 1-l \\ kt = ls \end{cases} $$
これを $k, l$ について解くと、
$$ k = \frac{s}{s+t-st}, \quad l = \frac{t}{s+t-st} $$
となる。
これにより、 $AR : RQ = k : 1-k = s : t(1-s)$ $BR : RP = l : 1-l = t : s(1-t)$ が分かり、これを用いて三角形の面積比を計算する。(以降は解法1と同じである)
解説
三角形の内部で交差する線分によって分割される面積比を扱う、典型的な平面図形の問題である。メネラウスの定理、チェバの定理、あるいはベクトルを用いて適切に線分比を求めることができれば、あとは計算を進めるだけである。
(1) において得られる $s$ の2次方程式から解を求める際、$0 < s < 1$ という幾何的な条件から複号の $\pm$ のうち適切な方($+$ のみ)を選択する論理展開を、曖昧にせず記述することが重要である。
(2) の極限計算は、式に $t$ を割る操作が含まれているため、一見すると $\frac{0}{0}$ の不定形のように思えるが、$t$ で約分した後の式はそのまま $t=0$ を代入しても分母が $0$ にならないため、有理化などの工夫は不要である。
答え
(1)
$$ s = \frac{-t^2 + t\sqrt{t^2 - 2t + 2}}{1-t} $$
(2)
$$ \sqrt{2} $$
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