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名古屋大学 2008年 理系 第1問 解説

旧課程/行列・一次変換数学2/複素数と方程式数学2/式と証明テーマ/整式の証明
名古屋大学 2008年 理系 第1問 解説

方針・初手

ケーリー・ハミルトンの定理を用いて行列 $A$ が満たす2次の関係式を求め、$A$ の高次方程式 $f(A) = O$ の次数を下げます。多項式 $f(x)$ を $A$ が満たす2次式で割り算し、剰余の定理のような考え方を用います。(2)(1) の結果を利用して $f(x)$ を因数分解し、2次方程式の解の配置問題(解の存在範囲)として処理します。

解法1

(1)

行列 $A = \begin{pmatrix} -1 & -1 \\ 1 & -1 \end{pmatrix}$ に対して、ケーリー・ハミルトンの定理より、以下の関係式が成り立ちます。

$$ A^2 - (-1 - 1)A + \{(-1)(-1) - (-1) \cdot 1\}E = O $$

$$ A^2 + 2A + 2E = O $$

多項式 $f(x) = x^4 + ax^3 + bx^2 + cx + 2$ を $x^2 + 2x + 2$ で割ると、次のように変形できます。

$$ f(x) = (x^2 + 2x + 2)\{x^2 + (a - 2)x + (b - 2a + 2)\} + (c - 2b + 2a)x + (4a - 2b - 2) $$

この恒等式に行列 $A$ を代入すると、条件 $f(A) = O$ および $A^2 + 2A + 2E = O$ より、以下の式が得られます。

$$ f(A) = O \cdot \{A^2 + (a - 2)A + (b - 2a + 2)E\} + (c - 2b + 2a)A + (4a - 2b - 2)E = O $$

$$ (c - 2b + 2a)A + (4a - 2b - 2)E = O $$

この式に $A = \begin{pmatrix} -1 & -1 \\ 1 & -1 \end{pmatrix}$ と $E = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$ を代入し、成分を計算します。

$$ (c - 2b + 2a) \begin{pmatrix} -1 & -1 \\ 1 & -1 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 4a - 2b - 2 & 0 \\ 0 & 4a - 2b - 2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} $$

行列の各成分を比較すると、以下の連立方程式が得られます。

$$ \begin{cases} -(c - 2b + 2a) + (4a - 2b - 2) = 0 \\ -(c - 2b + 2a) = 0 \\ c - 2b + 2a = 0 \end{cases} $$

第2式(または第3式)より、以下が成り立ちます。

$$ c - 2b + 2a = 0 $$

これを第1式に代入すると、以下が得られます。

$$ 4a - 2b - 2 = 0 $$

これら2つの式から $b, c$ を $a$ を用いて表します。まず、下の式から $b$ を求めます。

$$ 2b = 4a - 2 \iff b = 2a - 1 $$

これを上の式に代入して $c$ を求めます。

$$ c = 2b - 2a = 2(2a - 1) - 2a = 2a - 2 $$

よって、$b = 2a - 1, c = 2a - 2$ となります。

(2)

(1) の結果を用いると、多項式 $f(x)$ を $x^2 + 2x + 2$ で割った余りは $0$ となり、商の定数項は $b - 2a + 2 = (2a - 1) - 2a + 2 = 1$ となります。したがって、$f(x)$ は次のように因数分解されます。

$$ f(x) = (x^2 + 2x + 2)(x^2 + (a - 2)x + 1) $$

方程式 $f(x) = 0$ の解は、$x^2 + 2x + 2 = 0$ または $x^2 + (a - 2)x + 1 = 0$ の解です。

ここで、$x^2 + 2x + 2 = (x + 1)^2 + 1 > 0$ であるため、方程式 $x^2 + 2x + 2 = 0$ は実数解を持ちません。

ゆえに、$f(x) = 0$ が少なくとも1つの正の解を持つための条件は、2次方程式 $x^2 + (a - 2)x + 1 = 0$ が少なくとも1つの正の解(重解を含む)を持つことです。

$g(x) = x^2 + (a - 2)x + 1$ とおきます。

$g(0) = 1 > 0$ であるため、放物線 $y = g(x)$ は $y$ 軸の正の部分と交わります。したがって、$g(x) = 0$ が正の解と負の解を1つずつ持つことはなく、「少なくとも1つの正の解を持つ」という条件は、「2つの正の解(重解を含む)を持つ」ことと同値になります。

$g(x) = 0$ が2つの正の解を持つ条件は、判別式を $D$ とすると以下のようになります。

(i) 判別式 $D \ge 0$

(ii) 放物線の軸の位置が $x > 0$

(i) について、判別式を計算します。

$$ D = (a - 2)^2 - 4 \cdot 1 \cdot 1 = a^2 - 4a = a(a - 4) \ge 0 $$

これを解くと、以下の範囲が得られます。

$$ a \le 0, \quad 4 \le a $$

(ii) について、関数 $g(x)$ を平方完成すると以下のようになります。

$$ g(x) = \left( x + \frac{a - 2}{2} \right)^2 + 1 - \frac{(a - 2)^2}{4} $$

放物線の軸は $x = -\frac{a - 2}{2}$ です。これが正となる条件は以下の通りです。

$$ -\frac{a - 2}{2} > 0 \iff a - 2 < 0 \iff a < 2 $$

(i), (ii) の共通範囲を求めます。

$a \le 0, 4 \le a$ と $a < 2$ を同時に満たす範囲は、以下のようになります。

$$ a \le 0 $$

解説

行列の多項式 $f(A) = O$ が与えられたとき、ケーリー・ハミルトンの定理を利用して次数を下げるのは定番の処理です。行列 $A$ が単位行列の定数倍(スカラ行列)ではないため、$pA + qE = O$ が成り立つならば $p = 0$ かつ $q = 0$ であるという性質を用いても構いませんが、成分を比較する方が論理の飛躍がなく確実です。

(2) では、$f(x) = 0$ が4次方程式から2つの方程式に分解でき、一方が実数解を持たないため、もう一方の2次方程式の解の配置問題に帰着します。端点の値 $g(0) > 0$ であることから、解が正負に分かれる可能性が消え、重解を含む2正解の条件に絞られる点に気づくことが重要です。

答え

(1) $b = 2a - 1, \quad c = 2a - 2$

(2) $a \le 0$

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