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名古屋大学 2017年 理系 第4問 解説

数学C/複素数平面数学A/場合の数数学1/命題と集合テーマ/存在証明
名古屋大学 2017年 理系 第4問 解説

方針・初手

集合の条件から要素を具体的に決定していく問題です。 (1) は条件(II)と(III)を組み合わせて $1, -1$ を作ります。 (2) は条件(II)の「$z$ と $-z$ がペアで存在する」ことに着目します。 (3), (4) は、$M$ の要素全体に特定の要素 $z$ を掛け合わせても、全体として集合 $M$ に一致するという性質を利用すると見通しよく解けます。

解法1

(1) (I) より集合 $M$ は $n$ 個の要素からなるため、空集合ではない。 よって、ある要素 $z \in M$ が存在する。 条件(II)より、$\frac{1}{z} \in M$ である。 条件(III)より、$M$ の要素の積は $M$ に含まれるから、

$$ z \cdot \frac{1}{z} = 1 \in M $$

さらに、条件(II)より $1 \in M$ ならば $-1 \in M$ である。 以上より、$1$ および $-1$ は集合 $M$ の要素である。(証明終)

(2) 条件(II)より、任意の $z \in M$ に対して $-z \in M$ が成り立つ。 $0$ でない複素数からなる集合 $M$ であるから、任意の $z \in M$ に対して $z \neq 0$ であり、$z \neq -z$ である。 したがって、$M$ の要素は $\{z, -z\}$ という $2$ 個の要素からなるペアに余すことなく分割できる。 各ペアは互いに素であるため、集合 $M$ の要素数 $n$ は $2$ の倍数、すなわち偶数である。(証明終)

(3) $n=4$ のとき、$M$ の要素は $4$ 個である。 これを $M = \{z_1, z_2, z_3, z_4\}$ とおく。 任意の $z \in M$ を選び、$M$ の各要素に掛けた集合

$$ M' = \{zz_1, zz_2, zz_3, zz_4\} $$

を考える。 条件(III)より $M'$ の要素はすべて $M$ に属する。 また、$i \neq j$ のとき、$z \neq 0$ より $zz_i \neq zz_j$ であるから、$M'$ の $4$ つの要素はすべて異なる。 したがって、$M'$ は要素数 $4$ の集合であり、$M$ 自身と一致する($M' = M$)。 $M'$ の全要素の積と $M$ の全要素の積は等しいから、

$$ (zz_1)(zz_2)(zz_3)(zz_4) = z_1 z_2 z_3 z_4 $$

$$ z^4 (z_1 z_2 z_3 z_4) = z_1 z_2 z_3 z_4 $$

$M$ の要素はすべて $0$ でないから、$z_1 z_2 z_3 z_4 \neq 0$ である。 両辺を $z_1 z_2 z_3 z_4$ で割ると、

$$ z^4 = 1 $$

これは任意の $z \in M$ について成り立つ。 方程式 $z^4 = 1$ を解くと、$z = 1, -1, i, -i$ の $4$ つの解をもつ。 $M$ の要素数は $4$ 個であるから、$M$ はこれらの解全体からなる集合に一通りに定まり、

$$ M = \{1, -1, i, -i\} $$

となる。 逆にこの集合が条件を満たすか確認する。 (I) 要素は $4$ 個である。 (II) $\frac{1}{i} = -i, \frac{1}{-i} = i$ などから満たす。 (III) $M$ の要素同士の積はすべて $M$ に含まれるため満たす。 よって、条件を満たす。(証明終)

(4) $n=6$ のとき、$M$ の要素は $6$ 個である。 これを $M = \{z_1, z_2, z_3, z_4, z_5, z_6\}$ とおく。 (3) と同様に、任意の $z \in M$ に対して $M$ の全要素に $z$ を掛けた集合を考えると、それは $M$ 自身と一致する。 両者の全要素の積が等しいことから、

$$ z^6 (z_1 z_2 z_3 z_4 z_5 z_6) = z_1 z_2 z_3 z_4 z_5 z_6 $$

$$ z^6 = 1 $$

が任意の $z \in M$ に対して成り立つ。 方程式 $z^6 = 1$ を解くと、

$$ z = \cos\frac{2k\pi}{6} + i\sin\frac{2k\pi}{6} \quad (k=0, 1, 2, 3, 4, 5) $$

すなわち、

$$ z = \pm 1, \frac{1 \pm \sqrt{3}i}{2}, \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2} $$

となる。解はちょうど $6$ 個存在し、$M$ の要素数も $6$ 個であるから、$M$ はこれらの解全体からなる集合に一通りに定まる。 (3)と同様に、この集合は方程式 $z^6 = 1$ の解の集合であるため、乗法および逆数についての条件(II), (III)を満たし、要素数 $6$ も満たす。 したがって、集合 $M$ は一通りに定まる。(証明終)

解法2

(3) について、要素を直接考察して決定する別解です。

(3) $n=4$ のとき、$M$ の要素数は $4$ 個である。 (1), (2) より、$M$ は $1, -1$ を要素にもち、残りの $2$ 個の要素は互いに符号が反転した関係にある。 残りの要素を $\alpha, -\alpha$ とおくと、

$$ M = \{1, -1, \alpha, -\alpha\} $$

と表せる。ここで、$\alpha \neq 0, 1, -1$ である。 条件(III)より、$\alpha \cdot \alpha = \alpha^2$ は $M$ の要素である。 $\alpha^2$ が $M$ のどの要素になるかで場合分けする。

(i) $\alpha^2 = 1$ のとき $\alpha = \pm 1$ となり、$\alpha \neq \pm 1$ に矛盾する。

(ii) $\alpha^2 = -1$ のとき $\alpha = \pm i$ となる。 このとき、$M = \{1, -1, i, -i\}$ となる。 これが条件(I), (II), (III)を満たすことは(解法1と同様に)容易に確認できる。

(iii) $\alpha^2 = \alpha$ のとき $\alpha(\alpha - 1) = 0$ より $\alpha = 0, 1$ となり矛盾する。

(iv) $\alpha^2 = -\alpha$ のとき $\alpha(\alpha + 1) = 0$ より $\alpha = 0, -1$ となり矛盾する。

以上より、条件を満たす $\alpha$ は $\pm i$ に限られ、集合 $M$ は

$$ M = \{1, -1, i, -i\} $$

の一通りに定まる。

解説

大学数学における「群(とくに有限部分群)」の性質を背景とした問題です。 条件(II), (III)は、集合 $M$ が乗法に関する群であることを意味しています。 群の知識がなくても解答は可能ですが、「任意の要素を全体に掛けても集合としては変わらない」という事実は、$M$ の要素が方程式 $z^n = 1$ を満たすことを示すための非常に強力な手段となります(解法1)。 この発想がない場合、(3)については解法2のように具体的に要素を書き下して条件を絞り込むことができますが、(4)で要素が $6$ 個になると場合分けが複雑になり、行き詰まりやすくなります。

答え

(1) $$ 1,-1 \in M $$

(2) $n$ は偶数である。

(3) $$ M = \{1, -1, i, -i\} $$

(4) $$ M = \left\{1, -1, \frac{1 + \sqrt{3}i}{2}, \frac{1 - \sqrt{3}i}{2}, \frac{-1 + \sqrt{3}i}{2}, \frac{-1 - \sqrt{3}i}{2}\right\} $$

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