東京工業大学 2019年 理系 第3問 解説

方針・初手
$M$の要素は、実部と虚部が共に整数である複素数(以下、ガウス整数と呼ぶ)$z = a+bi$($a, b$は整数)を用いて、$w = \frac{z}{3+2i}$ と表される。 そのまま $w$ の実部や虚部を整数 $a, b$ で表そうとすると分数が生じて扱いにくいため、$w$ に関する条件を $z = (3+2i)w$ を用いて $z$ に関する条件に書き換える。これにより、複素数平面上の指定された領域内に含まれる格子点(ガウス整数)の個数を数える問題に帰着させる。
解法1
(1)
$M$の要素$w$は、ガウス整数$z$を用いて $w = \frac{z}{3+2i}$ と表される。 $w$が原点を中心とする半径$r$の円上またはその内部にある条件は、
$$ |w| \leqq r $$
である。ここに $w = \frac{z}{3+2i}$ を代入すると、
$$ \left| \frac{z}{3+2i} \right| \leqq r $$
$$ |z| \leqq r|3+2i| $$
$$ |z| \leqq \sqrt{3^2 + 2^2}r = \sqrt{13}r $$
となる。両辺を2乗して、$|z|^2 \leqq 13r^2$ を得る。 $z = a+bi$($a, b$は整数)とおくと、$|z|^2 = a^2+b^2$ であるから、$N(r)$ は不等式
$$ a^2 + b^2 \leqq 13r^2 $$
を満たす整数の組 $(a, b)$ の個数に等しい。
$k = a^2 + b^2$ とおき、$k$ の値が小さい順に満たす整数の組 $(a, b)$ の個数を調べる。
- $k = 0$ のとき、$(a, b) = (0, 0)$ の1個。
- $k = 1$ のとき、$(a, b) = (\pm 1, 0), (0, \pm 1)$ の4個。累計5個。
- $k = 2$ のとき、$(a, b) = (\pm 1, \pm 1)$ の4個。累計9個。
- $k = 3$ のとき、満たす整数の組はない。
- $k = 4$ のとき、$(a, b) = (\pm 2, 0), (0, \pm 2)$ の4個。累計13個。
- $k = 5$ のとき、$(a, b) = (\pm 2, \pm 1), (\pm 1, \pm 2)$ の8個。累計21個。
- $k = 6, 7$ のとき、満たす整数の組はない。
- $k = 8$ のとき、$(a, b) = (\pm 2, \pm 2)$ の4個。累計25個。
よって、$13r^2$ の値による $N(r)$ の変化は以下のようになる。
- $0 \leqq 13r^2 < 1$ のとき、$N(r) = 1$
- $1 \leqq 13r^2 < 2$ のとき、$N(r) = 5$
- $2 \leqq 13r^2 < 4$ のとき、$N(r) = 9$
- $4 \leqq 13r^2 < 5$ のとき、$N(r) = 13$
- $5 \leqq 13r^2 < 8$ のとき、$N(r) = 21$
- $8 \leqq 13r^2 < 9$ のとき、$N(r) = 25$
条件 $10 \leqq N(r) < 25$ を満たすのは、$N(r) = 13$ または $N(r) = 21$ のときであり、そのための条件は
$$ 4 \leqq 13r^2 < 8 $$
である。$r \geqq 0$ であるから、
$$ \frac{2}{\sqrt{13}} \leqq r < \frac{2\sqrt{2}}{\sqrt{13}} $$
すなわち
$$ \frac{2\sqrt{13}}{13} \leqq r < \frac{2\sqrt{26}}{13} $$
となる。
(2)
領域$D$を、$0, 1, 1+\frac{i}{2}, \frac{1+i}{2}, \frac{1}{2}+i, i$ を頂点とする多角形の内部および境界とする。 $M$の要素$w$が領域$D$に含まれるための条件は、ガウス整数$z$が領域 $D' = (3+2i)D$ に含まれることである。 $D'$ は、$D$ の各頂点に $3+2i$ を掛けた点を頂点とする多角形である。 各頂点の対応は以下のようになる。
- $0 \cdot (3+2i) = 0$
- $1 \cdot (3+2i) = 3+2i$
- $\left(1+\frac{i}{2}\right)(3+2i) = 3+2i+\frac{3}{2}i-1 = 2+\frac{7}{2}i$
- $\left(\frac{1+i}{2}\right)(3+2i) = \frac{1}{2}(1+i)(3+2i) = \frac{1}{2}(3+2i+3i-2) = \frac{1}{2}+\frac{5}{2}i$
- $\left(\frac{1}{2}+i\right)(3+2i) = \frac{3}{2}+i+3i-2 = -\frac{1}{2}+4i$
- $i(3+2i) = -2+3i$
複素数平面上の点を $z = x+yi$ ($x, y$は実数) とし、座標 $(x, y)$ で表す。 領域$D'$の頂点は、$B_0(0, 0), B_1(3, 2), B_2(2, 3.5), B_3(0.5, 2.5), B_4(-0.5, 4), B_5(-2, 3)$ である。 求める個数は、この多角形の内部および境界にある格子点($x, y$が共に整数である点)の個数に等しい。
$x$座標ごとに、領域内の $y$ の範囲を調べ、含まれる整数の個数を数える。 各境界線の方程式は以下の通りである。
- 直線 $B_0 B_1$: $y = \frac{2}{3}x$
- 直線 $B_1 B_2$: $y - 2 = \frac{3.5-2}{2-3}(x-3) \implies y = -\frac{3}{2}x + \frac{13}{2}$
- 直線 $B_2 B_3$: $y - 3.5 = \frac{2.5-3.5}{0.5-2}(x-2) \implies y = \frac{2}{3}x + \frac{13}{6}$
- 直線 $B_3 B_4$: $y - 2.5 = \frac{4-2.5}{-0.5-0.5}(x-0.5) \implies y = -\frac{3}{2}x + \frac{13}{4}$
- 直線 $B_4 B_5$: $y - 3 = \frac{4-3}{-0.5-(-2)}(x+2) \implies y = \frac{2}{3}x + \frac{13}{3}$
- 直線 $B_5 B_0$: $y = -\frac{3}{2}x$
領域の $x$ 座標の最小値は $-2$、最大値は $3$ である。各整数 $x$ に対する $y$ の範囲を求める。
$x = -2$ のとき 下端は直線 $B_5 B_0$ 上で $y = 3$、上端は直線 $B_4 B_5$ 上で $y = 3$。 $y=3$ の1個。
$x = -1$ のとき 下端は直線 $B_5 B_0$ 上で $y = 1.5$、上端は直線 $B_4 B_5$ 上で $y = \frac{11}{3} = 3.66\dots$。 範囲は $1.5 \leqq y \leqq 3.66\dots$。これを満たす整数は $y=2, 3$ の2個。
$x = 0$ のとき 下端は点 $B_0$ で $y = 0$、上端は直線 $B_3 B_4$ 上で $y = 3.25$。 範囲は $0 \leqq y \leqq 3.25$。これを満たす整数は $y=0, 1, 2, 3$ の4個。
$x = 1$ のとき 下端は直線 $B_0 B_1$ 上で $y = \frac{2}{3}$、上端は直線 $B_2 B_3$ 上で $y = \frac{17}{6} = 2.83\dots$。 範囲は $0.66\dots \leqq y \leqq 2.83\dots$。これを満たす整数は $y=1, 2$ の2個。
$x = 2$ のとき 下端は直線 $B_0 B_1$ 上で $y = \frac{4}{3} = 1.33\dots$、上端は点 $B_2$ で $y = 3.5$。 範囲は $1.33\dots \leqq y \leqq 3.5$。これを満たす整数は $y=2, 3$ の2個。
$x = 3$ のとき 下端と上端はともに点 $B_1$ で $y = 2$。 $y=2$ の1個。
以上の個数の合計は、$1 + 2 + 4 + 2 + 2 + 1 = 12$ 個となる。
解説
複素数平面における1次分数変換(拡大・縮小および回転)の意味を理解しているかを問う問題である。 そのまま $w$ の実部と虚部を $a, b$ で表そうとすると分母に $13$ が現れ、場合分けが極めて煩雑になってしまう。本問最大のポイントは、$w = \frac{z}{3+2i}$ を $z = (3+2i)w$ と変形し、「$w$ が指定された領域を動くときに $z$ が動く領域」を考えることである。これにより、扱いやすいガウス整数(格子点)の個数を数える問題に帰着できる。 (1) は原点中心の円であるため、$|z|^2 \leqq 13r^2$ のように絶対値の2乗を用いると簡単に見通しが立つ。(2) は変換後の多角形の形状が複雑になるため、各頂点を移動させて座標平面上の領域を正しく把握し、$x$ 座標ごとに地道に格子点を数え上げるのが最も確実である。
答え
(1)
$$ \left\{ r \ \middle| \ \frac{2\sqrt{13}}{13} \leqq r < \frac{2\sqrt{26}}{13} \right\} $$
(2)
$$ 12 \text{ 個} $$
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