名古屋大学 2023年 理系 第4問 解説

方針・初手
(1)は、与えられた多項式の恒等式に $x=1$ を代入することで、全ての係数の和を求める。
(2)は、$P_n(x+1)$ の式に二項定理を適用して展開し、指定された形に整理する。
(3)は、$P_{n+1}(x)$ と $P_n(x+1)$ の間に成り立つ関係式を見つけ、恒等式の両辺において $x^{k+1}$ の係数を比較する。
解法1
(1)
与えられた恒等式 $$P_n(x) = \sum_{m=1}^n {}_nB_m x^m$$ の両辺に $x=1$ を代入する。
左辺は、 $$P_n(1) = 1 \cdot (1+1) \cdots (1+n-1) = 1 \cdot 2 \cdots n = n!$$ となる。
右辺は、 $$\sum_{m=1}^n {}_nB_m \cdot 1^m = \sum_{m=1}^n {}_nB_m$$ となる。
これらが等しいことから、 $$\sum_{m=1}^n {}_nB_m = n!$$ が示された。
(2)
等式 $P_n(x) = \sum_{m=1}^n {}_nB_m x^m$ において、$x$ を $x+1$ に置き換えると、 $$P_n(x+1) = \sum_{m=1}^n {}_nB_m (x+1)^m$$ となる。
ここで、二項定理を用いると、 $$(x+1)^m = {}_mC_0 + {}_mC_1 x + \cdots + {}_mC_m x^m$$ と展開できる。
これを上の式に代入すると、 $$P_n(x+1) = \sum_{m=1}^n {}_nB_m ({}_mC_0 + {}_mC_1 x + \cdots + {}_mC_m x^m)$$ となり、分配法則を用いて展開することで、 $$P_n(x+1) = \sum_{m=1}^n ({}_nB_m \cdot {}_mC_0 + {}_nB_m \cdot {}_mC_1 x + \cdots + {}_nB_m \cdot {}_mC_m x^m)$$ が示された。
(3)
$P_{n+1}(x)$ および $P_n(x+1)$ の定義式を考えると、 $$P_{n+1}(x) = x(x+1)(x+2)\cdots(x+n)$$ $$P_n(x+1) = (x+1)(x+2)\cdots(x+n)$$ であるから、これら2つの多項式には以下の関係式が成り立つ。 $$P_{n+1}(x) = x P_n(x+1)$$
この恒等式の両辺において、$x^{k+1}$ の係数を比較する。
まず、右辺 $x P_n(x+1)$ における $x^{k+1}$ の係数は、$P_n(x+1)$ における $x^k$ の係数に等しい。 (2)で示した等式において、$x^k$ を含む項が現れるのは $m \geqq k$ のときであり、その係数は ${}_nB_m \cdot {}_mC_k$ である。 したがって、$P_n(x+1)$ 全体における $x^k$ の係数は、これを $m=k$ から $n$ まで足し合わせたものになるため、 $$\sum_{m=k}^n {}_nB_m \cdot {}_mC_k$$ となる。和の添字の文字を $m$ から $j$ に置き換えると、 $$\sum_{j=k}^n {}_nB_j \cdot {}_jC_k$$ となる。
一方、左辺 $P_{n+1}(x)$ については、その定義より $$P_{n+1}(x) = \sum_{m=1}^{n+1} {}_{n+1}B_m x^m$$ と展開される。 $k=1, 2, \cdots, n$ のとき、$k+1$ は $2$ 以上 $n+1$ 以下の整数となるため、$x^{k+1}$ の項は存在し、その係数は $${}_{n+1}B_{k+1}$$ となる。
両辺の係数は一致しなければならないため、 $$\sum_{j=k}^n {}_nB_j \cdot {}_jC_k = {}_{n+1}B_{k+1}$$ が示された。
解説
多項式の恒等式を題材とした係数比較の問題である。 (1)の「係数の総和を求めるために $x=1$ を代入する」という操作は、多項式の問題における定石である。 (3)では、展開されたシグマの式を直接いじるのではなく、元の定義式 $P_n(x)$ に立ち返って $P_{n+1}(x) = x P_n(x+1)$ という漸化式的な構造を見抜けるかどうかが鍵となる。この関係式を見つければ、あとは(2)の結果を利用して特定の次数の係数を拾い上げるだけで簡潔に証明できる。 なお、本問で扱われている係数 ${}_nB_m$ は、第一種スターリング数(符号なし)に関する性質を背景に持っている。
答え
(1) 題意の通り証明された。
(2) 題意の通り証明された。
(3) 題意の通り証明された。
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