大阪大学 1993年 文系 第1問 解説

方針・初手
領域の境界で反射する物体の軌跡は、反射面を鏡として領域全体を次々と折り返し、軌跡を直進する直線として扱う(鏡像法)のが定石である。 本問でも、$xy$ 平面を $y = \pm 1$ を境界として幅 $2$ の帯状領域に展開し、点 $P$ の軌跡を直線として捉え直す。展開した平面上で $n$ 回目の反射区間がどの $y$ 座標の範囲に対応するかを定式化し、問題で指定された線分との交点を持つ条件を求める。
解法1
点 $P$ は原点を出発し、反射の法則(入射角=反射角)に従って領域 $M = \{(x, y) \mid -1 \leqq y \leqq 1\}$ の境界で反射を繰り返す。 この運動を展開し、反射せずに直進し続ける仮想の $XY$ 平面を考える。点 $P$ は原点から傾き $a$($a > 0$)で $X$ の正の方向へ出発するため、展開平面上での軌跡は半直線 $Y = aX \ (X \geqq 0)$ となる。
このとき、$x$ 方向の速度成分は一定であるから、実際の点 $P$ の $x$ 座標と展開平面上の $X$ 座標は常に等しい($X = x$)。 一方、展開平面上の直線 $Y = \pm 1, \pm 3, \pm 5, \dots$ を通過することが、実際の領域 $M$ における反射に対応する。$a > 0$ であるから、$Y$ は単調に増加し、点 $P$ は $Y = 1, 3, 5, \dots$ つまり $Y = 2k-1$($k$ は正の整数)の直線を通過するときに $k$ 回目の反射を行う。
したがって、「$n$ 回目と $(n+1)$ 回目の反射の間」とは、展開平面上において $Y$ が以下の範囲にある区間を指す。
- $n = 0$ のとき(出発から1回目の反射まで):$0 \leqq Y \leqq 1$
- $n \geqq 1$ のとき:$2n - 1 \leqq Y \leqq 2n + 1$
展開平面上の点 $(x, Y)$ に対応する実際の点 $P(x, y)$ の $y$ 座標は、次のように表される。
(ア) $n$ が偶数のとき $Y$ は $2n$ を中心とする幅 $2$ の区間にある。このとき、領域は平行移動によって元の $M$ に重なるため、$y = Y - 2n$ となる。 軌跡の方程式は $Y = ax$ であるから、$y = ax - 2n$ となる。
(イ) $n$ が奇数のとき $Y$ は $2n$ を中心とする幅 $2$ の区間にある。このとき、領域は $Y = 2n$ を軸に反転して元の $M$ に重なるため、$y = 2n - Y$ となる。 軌跡の方程式は $Y = ax$ であるから、$y = 2n - ax$ となる。
点 $P$ が線分 $S : y = x - 2 \ \left(\frac{3}{2} \leqq x \leqq \frac{5}{2}\right)$ を通過する条件を、$n$ の値で場合分けして求める。 なお、線分 $S$ 上の点の $y$ 座標の範囲は、端点を代入して $-\frac{1}{2} \leqq y \leqq \frac{1}{2}$ であり、これは常に領域 $M$ の内部($-1 \leqq y \leqq 1$)に含まれている。
(i) $n = 0$ のとき 軌跡は $y = ax \ (0 \leqq y \leqq 1)$ である。 これと $y = x - 2$ が交わる条件を考える。 $ax = x - 2$ より、交点の $x$ 座標は $a = 1 - \frac{2}{x}$ を満たす。 また、この区間における $y$ 座標の条件 $0 \leqq y \leqq 1$ に $y = x - 2$ を代入すると、$0 \leqq x - 2 \leqq 1$ より $2 \leqq x \leqq 3$ を得る。 線分 $S$ の $x$ の範囲と合わせると、交点の $x$ 座標の満たすべき条件は $2 \leqq x \leqq \frac{5}{2}$ となる。 関数 $f(x) = 1 - \frac{2}{x}$ はこの範囲で単調増加であるから、
$$ f(2) \leqq a \leqq f\left(\frac{5}{2}\right) $$
$$ 0 \leqq a \leqq \frac{1}{5} $$
問題の条件 $a > 0$ より、$0 < a \leqq \frac{1}{5}$ となる。
(ii) $n \geqq 2$ の偶数のとき 軌跡は $y = ax - 2n \ (-1 \leqq y \leqq 1)$ である。 $y$ 座標は $S$ の $y$ の範囲を含んでいるため、$x$ 座標の条件のみを考えればよい。 $ax - 2n = x - 2$ より、交点において $a = \frac{x + 2n - 2}{x} = 1 + \frac{2n - 2}{x}$ が成り立つ。 $n \geqq 2$ より $2n - 2 > 0$ であるから、関数 $g(x) = 1 + \frac{2n - 2}{x}$ は $x > 0$ において単調減少である。 交点の $x$ 座標が $\frac{3}{2} \leqq x \leqq \frac{5}{2}$ を満たせばよいので、
$$ g\left(\frac{5}{2}\right) \leqq a \leqq g\left(\frac{3}{2}\right) $$
$$ 1 + \frac{2n - 2}{\frac{5}{2}} \leqq a \leqq 1 + \frac{2n - 2}{\frac{3}{2}} $$
$$ \frac{4n + 1}{5} \leqq a \leqq \frac{4n - 1}{3} $$
となる。
(iii) $n \geqq 1$ の奇数のとき 軌跡は $y = 2n - ax \ (-1 \leqq y \leqq 1)$ である。 同様に交点の $x$ 座標の条件のみを考える。 $2n - ax = x - 2$ より、交点において $a = \frac{2n + 2 - x}{x} = \frac{2n + 2}{x} - 1$ が成り立つ。 $n \geqq 1$ より $2n + 2 > 0$ であるから、関数 $h(x) = \frac{2n + 2}{x} - 1$ は $x > 0$ において単調減少である。 交点の $x$ 座標が $\frac{3}{2} \leqq x \leqq \frac{5}{2}$ を満たせばよいので、
$$ h\left(\frac{5}{2}\right) \leqq a \leqq h\left(\frac{3}{2}\right) $$
$$ \frac{2n + 2}{\frac{5}{2}} - 1 \leqq a \leqq \frac{2n + 2}{\frac{3}{2}} - 1 $$
$$ \frac{4n - 1}{5} \leqq a \leqq \frac{4n + 1}{3} $$
となる。
解説
ビリヤードの球のように境界で反射を繰り返す運動を扱う際の典型問題である。反射のたびにベクトルを反転させて考えるのは計算が煩雑になるため、鏡像法(軌跡を展開平面上の直線として捉える手法)を用いるのが鉄則である。 本問では、反射の回数 $n$ と展開平面上の座標帯の対応を正確に立式できるかが鍵となる。また、交点を持つ条件を不等式で処理する際、方程式を $a = (\text{x の式})$ の形に変形し、$x$ の定義域における値域を調べるアプローチを取ると、計算を簡潔かつミスなく進めることができる。$n=0$ のときだけ $y$ 座標の範囲によって $x$ の有効範囲が削られる点に注意したい。
答え
$n = 0$ のとき:
$$ 0 < a \leqq \frac{1}{5} $$
$n \geqq 1$ の偶数のとき:
$$ \frac{4n + 1}{5} \leqq a \leqq \frac{4n - 1}{3} $$
$n$ が奇数のとき:
$$ \frac{4n - 1}{5} \leqq a \leqq \frac{4n + 1}{3} $$
(なお、$n \geqq 1$ の場合は $\frac{4n + (-1)^n}{5} \leqq a \leqq \frac{4n - (-1)^n}{3}$ とまとめて表現することもできる。)
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