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名古屋大学 1993年 文系 第2問 解説

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名古屋大学 1993年 文系 第2問 解説

方針・初手

線分が正方形の周と2点で交わるための条件を、線分の両端点の位置から考える。 線分の長さが $2a < l$ であることから、両端が対向する2辺に同時に届くことは不可能であり、必ず1つの角を挟む隣り合う2辺(またはその延長)の外部にそれぞれ出なければならないことに着目する。 中心を原点とする座標平面を設定して代数的に条件を求める方法と、直角三角形の斜辺の中点の軌跡を利用する幾何的な方法の2つを示す。

解法1

正方形の中心を原点 $\text{O}$ とし、各辺が座標軸に平行になるように $xy$ 平面を設定する。 正方形の頂点を $A(-l/2, l/2), B(-l/2, -l/2), C(l/2, -l/2), D(l/2, l/2)$ とする。 点 $M(x, y)$ は正方形の内部にあるので、次を満たす。

$$ -l/2 < x < l/2, \quad -l/2 < y < l/2 $$

線分の長さを $2a$ とし、その両端を $P, Q$ とする。 線分が正方形の周と2点で交わるためには、$P, Q$ がともに正方形の外部(境界線を含む)になければならない。 正方形の幅は $x$ 軸方向、$y$ 軸方向ともに $l$ であり、線分の各軸方向の射影の長さの最大値は $2a$ である。 $2a < l$ であるため、線分の両端が対向する2辺(たとえば $x = l/2$ と $x = -l/2$)の外部に同時に出ることはできない。 したがって、$P, Q$ は隣り合う2辺の外部(または周上)に出る必要がある。

対称性から、点 $M$ が第1象限($0 \le x < l/2, 0 \le y < l/2$)にある場合について考える。 このとき、辺 $x = -l/2, y = -l/2$ までの距離は $l/2$ 以上であり、$a < l/2$ より線分がこれらの辺の外部に出ることはない。 よって、$P, Q$ の一方が辺 $x = l/2$ の右側、もう一方が辺 $y = l/2$ の上側に出る必要がある。 これを満たすためには、線分は右下がりの傾きを持たなければならない。線分が $x$ 軸の正の向きとなす角を $-\alpha$ $(0 < \alpha < \pi/2)$ とすると、端点 $P, Q$ の $M$ からの相対位置ベクトルは $\pm(a\cos\alpha, -a\sin\alpha)$ と表せる。 $P$ が右側、$Q$ が上側に出るとすると、それぞれの座標の条件は次のようになる。

$$ \begin{cases} x_P = x + a\cos\alpha \ge l/2 \\ y_Q = y + a\sin\alpha \ge l/2 \end{cases} $$

すなわち、次を満たす $\alpha$ が存在することが条件である。

$$ \begin{cases} a\cos\alpha \ge l/2 - x \\ a\sin\alpha \ge l/2 - y \end{cases} $$

$M$ は第1象限にあるので、$l/2 - x > 0$ かつ $l/2 - y > 0$ である。 上の2式の両辺はともに正であるから、両辺を2乗して辺々を加えると次が得られる。

$$ a^2(\cos^2\alpha + \sin^2\alpha) \ge (l/2 - x)^2 + (l/2 - y)^2 $$

$$ (x - l/2)^2 + (y - l/2)^2 \le a^2 $$

逆にこの不等式を満たすとき、$r = \sqrt{(l/2 - x)^2 + (l/2 - y)^2}$ $(r \le a)$ とし、$\cos\alpha_0 = \frac{l/2 - x}{r}, \sin\alpha_0 = \frac{l/2 - y}{r}$ を満たす $\alpha_0$ をとれば元の不等式を満たすため、これは必要十分条件である。 よって、第1象限における $M$ の存在範囲は、頂点 $D(l/2, l/2)$ を中心とする半径 $a$ の円の内部および周上のうち、正方形の内部にある部分である。

他の象限についても対称性から同様に、各頂点を中心とする半径 $a$ の円の内部および周上となる。 $2a < l$ より $a < l/2$ であるから、これら4つの円は互いに交わらない。

解法2

線分が正方形の周と2点で交わるためには、両端が正方形の外部または周上に出る必要がある。 線分の長さが $2a < l$ であることから、両端が対向する辺に同時に届くことは不可能である。したがって、両端は1つの角を挟む隣り合う2辺の外部(または周上)に届かなければならない。

正方形の1つの角の頂点を $C$ とし、その角をなす2辺を含む半直線を $CX, CY$ とする。 長さ $2a$ の線分の両端 $P, Q$ がそれぞれ半直線 $CX, CY$ 上にある(周と交わる限界の)状態を考える。 このとき、$\triangle CPQ$ は $\angle C = 90^\circ$ の直角三角形であり、斜辺 $PQ$ の長さは $2a$ である。 直角三角形の斜辺の中点 $M$ はこの三角形の外心と一致するため、頂点 $C$ から $M$ までの距離は斜辺の半分の長さに等しい。

$$ CM = a $$

線分の両端が半直線 $CX, CY$ のさらに外部に出るためには、中点 $M$ が頂点 $C$ にこれより近い位置にある必要がある。 すなわち、$M$ は $CM \le a$ を満たさなければならない。

正方形の4つの頂点 $A, B, C, D$ すべてについて同様に考えられるため、$M$ が存在する条件は、いずれかの頂点からの距離が $a$ 以下となることである。 $M$ は正方形の内部の点であり、$a < l/2$ であるから、各頂点を中心とする半径 $a$ の領域は互いに重ならず、その四分円の内部および境界弧(正方形の辺上の点は除く)が求める範囲となる。

解説

直角三角形の斜辺の中点の軌跡が、直角の頂点を中心とする円弧を描くという幾何的な基本性質($CM=a$)に帰着できるかどうかがポイントである。この図形的性質に気づけば解法2のように非常に簡潔に解答できる。思いつかなくても、解法1のように座標を設定して代数的に立式すれば確実に解くことができる。 $2a < l$ という条件は、線分が対向する辺に届かないこと、および4つの頂点付近の領域が互いに重ならないことを保証するための重要な制約である。 図示する境界線の扱いについて、円弧部分は線分の端点が正方形の辺上にある(周と交わっている)状態に対応するため範囲に含まれるが、$M$ は「正方形の内部」という指定があるため、正方形の辺上に重なる境界線は除外されることに注意したい。

答え

求める点 $M$ の存在する範囲は、正方形の各頂点を中心とする半径 $a$ の円の内部および周上のうち、正方形の内部にある部分である。

(図示の補足) 正方形の4つの角に、それぞれ半径 $a$ の四分円が描かれた領域となる。 境界線については、正方形の内部にある四分円の円弧部分は領域に含む(実線)が、正方形の辺上にある部分は含まない(破線)。

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