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東北大学 1964年 文系 第2問 解説

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東北大学 1964年 文系 第2問 解説

方針・初手

正方形の辺の長さを $1$ とし、座標平面上に設定して点 $P$ の座標を $(x, y)$ とおいて代数的に処理する。4つの垂線の長さは $x, y$ および $1-x, 1-y$ で表されるため、これらの中から任意の3つを選んだときに三角形の成立条件(最大辺が他の2辺の和より小さい)を満たすような $x, y$ の範囲を求める。

解法1

正方形の1辺の長さを $1$ としても一般性を失わない。 座標平面上において、正方形の頂点を $B(0,0), C(1,0), D(1,1), A(0,1)$ と定める。 点 $P$ は正方形の内部にあるので、その座標を $P(x,y)$ とすると、 $$ 0 < x < 1, \quad 0 < y < 1 $$ が成り立つ。

点 $P$ から辺 $AB(x=0)$, $BC(y=0)$, $CD(x=1)$, $DA(y=1)$ に下ろした垂線の足 $X, Y, Z, U$ までの距離はそれぞれ以下のようになる。 $$ PX = x, \quad PY = y, \quad PZ = 1-x, \quad PU = 1-y $$

これら4つの線分のうち、どの3つをとっても三角形の3辺となる条件を求める。 3つの正の数 $a, b, c$ が三角形の3辺となるための必要十分条件は、$a+b>c$ かつ $b+c>a$ かつ $c+a>b$ である。 4つの線分から3つを選ぶ方法は以下の4通りであり、それぞれについて条件を立てる。

(1) 3つの線分 $x, 1-x, y$ を選ぶ場合 $$ \begin{cases} x + (1-x) > y \\ x + y > 1-x \\ (1-x) + y > x \end{cases} $$ これを整理すると、 $$ \begin{cases} y < 1 \\ 2x + y > 1 \\ 2x - y < 1 \end{cases} $$ $y < 1$ は前提条件より常に成り立つ。

(2) 3つの線分 $x, 1-x, 1-y$ を選ぶ場合 $$ \begin{cases} x + (1-x) > 1-y \\ x + (1-y) > 1-x \\ (1-x) + (1-y) > x \end{cases} $$ これを整理すると、 $$ \begin{cases} y > 0 \\ 2x - y > 0 \\ 2x + y < 2 \end{cases} $$ $y > 0$ は前提条件より常に成り立つ。

(3) 3つの線分 $x, y, 1-y$ を選ぶ場合 $$ \begin{cases} y + (1-y) > x \\ x + y > 1-y \\ x + (1-y) > y \end{cases} $$ これを整理すると、 $$ \begin{cases} x < 1 \\ x + 2y > 1 \\ x - 2y > -1 \end{cases} $$ $x < 1$ は前提条件より常に成り立つ。

(4) 3つの線分 $1-x, y, 1-y$ を選ぶ場合 $$ \begin{cases} y + (1-y) > 1-x \\ (1-x) + y > 1-y \\ (1-x) + (1-y) > y \end{cases} $$ これを整理すると、 $$ \begin{cases} x > 0 \\ x - 2y < 1 \\ x + 2y < 2 \end{cases} $$ $x > 0$ は前提条件より常に成り立つ。

以上の結果をすべてまとめると、点 $P(x,y)$ が満たすべき条件は以下の連立不等式となる。 $$ \begin{cases} 1 < 2x + y < 2 \\ -1 < 2x - y < 1 \\ 1 < x + 2y < 2 \\ -1 < x - 2y < 1 \end{cases} $$

この領域を図示しやすくするため、正方形の中心 $\left(\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)$ が原点に移るように平行移動を行う。 $$ X = x - \frac{1}{2}, \quad Y = y - \frac{1}{2} $$ とおくと、連立不等式は以下のように書き換えられる。 $$ \begin{cases} -\frac{1}{2} < 2X + Y < \frac{1}{2} \\ -\frac{1}{2} < 2X - Y < \frac{1}{2} \\ -\frac{1}{2} < X + 2Y < \frac{1}{2} \\ -\frac{1}{2} < X - 2Y < \frac{1}{2} \end{cases} $$ すなわち、求める領域は以下の絶対値不等式を満たす $(X, Y)$ の範囲である。 $$ |2X + Y| < \frac{1}{2}, \quad |2X - Y| < \frac{1}{2}, \quad |X + 2Y| < \frac{1}{2}, \quad |X - 2Y| < \frac{1}{2} $$

この領域は原点対称であり、第1象限($X>0, Y>0$)における境界線は $2X + Y = \frac{1}{2}$ と $X + 2Y = \frac{1}{2}$ である。この2直線の交点は $\left(\frac{1}{6}, \frac{1}{6}\right)$ である。 元の座標 $(x,y)$ に戻して各頂点を計算すると、領域は正方形の内部にある八角形となり、その頂点は $\left(\frac{3}{4}, \frac{1}{2}\right), \left(\frac{2}{3}, \frac{2}{3}\right), \left(\frac{1}{2}, \frac{3}{4}\right), \left(\frac{1}{3}, \frac{2}{3}\right), \left(\frac{1}{4}, \frac{1}{2}\right), \left(\frac{1}{3}, \frac{1}{3}\right), \left(\frac{1}{2}, \frac{1}{4}\right), \left(\frac{2}{3}, \frac{1}{3}\right)$ となる。

解法2

正方形の1辺の長さを $1$ とし、解法1と同様に $P(x,y)$ とおいて4つの線分の長さを $x, 1-x, y, 1-y$ とする。

4つの線分からどの3つを選んでも三角形ができるための必要十分条件は、「4つの線分のうち最大のものが、他の任意の2つの線分の和より小さいこと」である。これはさらに言い換えると、「4つの線分のうち最大のものが、最小の2つの線分の和より小さいこと」と同値である。

正方形の図形的対称性から、点 $P$ が存在する領域は、正方形の中心に関して点対称かつ、縦横の対角線に関して線対称である。 したがって、$x \ge \frac{1}{2}, y \ge \frac{1}{2}, x \ge y$ の範囲(正方形を8等分した三角形の1つ)で条件を満たす領域を求め、それを対称移動して全体像を得る方針をとる。

$x \ge \frac{1}{2}, y \ge \frac{1}{2}, x \ge y$ のとき、4つの線分の長さについて以下の大小関係が成り立つ。 $$ 1-x \le \frac{1}{2} \le x $$ $$ 1-y \le \frac{1}{2} \le y $$ さらに $x \ge y$ であるから、4つの長さのうち最大のものは $x$ である。 一方、$1-x$ と $1-y$ はそれぞれ $x$ と $y$ 以下であるため、最小の2つの線分は $1-x$ と $1-y$ に確定する。

ゆえに、この範囲において満たすべき三角不等式の条件は、 $$ x < (1-x) + (1-y) $$ 整理すると、 $$ 2x + y < 2 $$ となる。

この不等式と、前提である $x \ge \frac{1}{2}, y \ge \frac{1}{2}, x \ge y$ の共通部分を図示すると、頂点 $\left(\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right), \left(\frac{2}{3}, \frac{2}{3}\right), \left(\frac{3}{4}, \frac{1}{2}\right)$ を結ぶ三角形の内部となる。 これを正方形の各対称軸で折り返して全体に広げると、求める領域は中心 $\left(\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)$ の八角形の内部となる。

解説

不等式の表す領域を図示する問題です。 解法1のように、愚直に4パターンの組み合わせすべてについて三角不等式を立式しても解くことができます。立式された連立不等式は一見複雑ですが、中心を原点に平行移動することで絶対値を用いた美しい対称形にまとめることができます。 一方、解法2のように図形の対称性と「最大値と最小値」に着目すると、調べるべき条件式を劇的に減らすことができます。「複数の線分から任意の3つを選んで三角形ができる」という条件を「最大の線分 $<$ 最小の2つの線分の和」と翻訳するアプローチは、難関大の数学でしばしば有効なテクニックです。

答え

正方形の各辺を座標軸に平行に置き、1辺の長さを $1$、頂点を $(0,1), (0,0), (1,0), (1,1)$ としたとき、点 $P$ の存在する範囲は、以下の8点を頂点とする八角形の内部(境界線を含まない)である。これを図示したものが求める斜線部分となる。

頂点の座標: $\left(\frac{3}{4}, \frac{1}{2}\right), \left(\frac{2}{3}, \frac{2}{3}\right), \left(\frac{1}{2}, \frac{3}{4}\right), \left(\frac{1}{3}, \frac{2}{3}\right), \left(\frac{1}{4}, \frac{1}{2}\right), \left(\frac{1}{3}, \frac{1}{3}\right), \left(\frac{1}{2}, \frac{1}{4}\right), \left(\frac{2}{3}, \frac{1}{3}\right)$

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