大阪大学 1991年 理系 第3問 解説

方針・初手
動円の中心 $C$ の座標と、ベクトル $\overrightarrow{CP}$ の成分をそれぞれ求め、足し合わせることで点 $P$ の座標を求める。すべらずに転がる条件から、大円と動円の接点が描く弧の長さが等しいことを利用し、$\overrightarrow{CP}$ の $x$ 軸の正の向きとのなす角を決定する。
解法1
(1)
円 $D$ の中心を $C$ とし、大円との接点を $T$ とする。
はじめ、$\theta = 0$ のとき、接点 $T_0$ は $(1,0)$ にあり、$D$ の中心 $C_0$ は $(1-r, 0)$ にある。
点 $P$ ははじめ $P_0(1-r+a, 0)$ にあるので、ベクトル $\overrightarrow{C_0P_0}$ は $x$ 軸の正の向きと同じであり、その長さは $a$ である。
円 $D$ が長さ $\theta$ だけすべらずに転がったとき、中心 $C$ は原点まわりを角 $\theta$ だけ回転するので、
$$ C((1-r)\cos\theta, (1-r)\sin\theta) $$
である。
このとき、接点 $T$ の座標は $(\cos\theta, \sin\theta)$ であり、ベクトル $\overrightarrow{CT}$ の $x$ 軸の正の向きとなす角(偏角)は $\theta$ である。
すべらずに転がるという条件から、大円上で接点が動いた弧の長さと、円 $D$ 上で接点が動いた弧の長さは等しい。大円の半径は $1$ であるから、この弧の長さは $\theta$ である。
円 $D$ の半径は $r$ であるため、円 $D$ 上の弧の長さ $\theta$ に対応する中心角は $\frac{\theta}{r}$ となる。
円 $D$ は大円の内側を反時計回りに転がるので、円 $D$ に固定された点 $P$ は、ベクトル $\overrightarrow{CT}$ の向きから時計回りに $\frac{\theta}{r}$ だけ回転した方向にある。
したがって、ベクトル $\overrightarrow{CP}$ の偏角は $\theta - \frac{\theta}{r} = \frac{r-1}{r}\theta$ と表される。
$|\overrightarrow{CP}| = a$ であるから、
$$ \overrightarrow{CP} = \left(a\cos\frac{r-1}{r}\theta, a\sin\frac{r-1}{r}\theta\right) $$
よって、点 $P$ の座標 $(x,y)$ は $\overrightarrow{OP} = \overrightarrow{OC} + \overrightarrow{CP}$ より、
$$ x = (1-r)\cos\theta + a\cos\frac{r-1}{r}\theta $$
$$ y = (1-r)\sin\theta + a\sin\frac{r-1}{r}\theta $$
(2)
点 $P$ が最初の位置 $(1-r+a, 0)$ に戻るとき、
$$ x = (1-r)\cos\theta + a\cos\frac{r-1}{r}\theta = 1-r+a $$
$$ y = (1-r)\sin\theta + a\sin\frac{r-1}{r}\theta = 0 $$
を満たす $\theta > 0$ が存在する必要がある。
$1-r > 0$ および $a > 0$ であることから、第1式において、
$$ (1-r)\cos\theta + a\cos\frac{r-1}{r}\theta \leqq (1-r)\cdot 1 + a\cdot 1 = 1-r+a $$
が成り立つ。等号が成立するのは、$\cos\theta = 1$ かつ $\cos\frac{r-1}{r}\theta = 1$ のときに限られる。
したがって、ある自然数 $m$ と整数 $k$ を用いて、
$$ \theta = 2m\pi $$
$$ \frac{r-1}{r}\theta = 2k\pi $$
と表される。これらから $\theta$ を消去すると、
$$ \frac{r-1}{r}\cdot 2m\pi = 2k\pi $$
$$ m(r-1) = kr $$
$$ m = (m-k)r $$
$$ r = \frac{m}{m-k} $$
ここで、$0 < r < 1$ であり $m > 0$ であるから、$m-k > m$ すなわち $k < 0$ でなければならない。
$k$ は負の整数であるから、$n = -k$ とおくと $n$ は自然数であり、
$$ r = \frac{m}{m+n} $$
と表せる。
これは $r$ が有理数であることを意味する。
逆に $r$ が $0 < r < 1$ を満たす有理数であるとき、互いに素な自然数 $p, q\ (p < q)$ を用いて $r = \frac{p}{q}$ と表せる。
このとき、$m = p$、$n = q-p$ とおくと $m, n$ は自然数であり、$\theta = 2p\pi$ のときに点 $P$ は最初の位置に戻る。
よって、求める条件は「$r$ が有理数であること」である。
(3)
$r = \frac{1}{2}$ のとき、(1) の式に代入すると、
$$ x = \frac{1}{2}\cos\theta + a\cos(-\theta) = \left(\frac{1}{2}+a\right)\cos\theta $$
$$ y = \frac{1}{2}\sin\theta + a\sin(-\theta) = \left(\frac{1}{2}-a\right)\sin\theta $$
となる。($\cos(-\theta)=\cos\theta, \sin(-\theta)=-\sin\theta$ を用いた)
ここで、$0 < a \leqq \frac{1}{2}$ の範囲で場合分けを行う。
(i)
$0 < a < \frac{1}{2}$ のとき
$x, y$ の式から $\cos\theta, \sin\theta$ を求めて $\cos^2\theta + \sin^2\theta = 1$ に代入すると、
$$ \frac{x^2}{\left(\frac{1}{2}+a\right)^2} + \frac{y^2}{\left(\frac{1}{2}-a\right)^2} = 1 $$
これは原点を中心とし、$x$ 軸上に長軸、$y$ 軸上に短軸をもつ楕円である。
(ii)
$a = \frac{1}{2}$ のとき
$$ x = \cos\theta $$
$$ y = 0 $$
となり、点 $P$ の軌跡は $x$ 軸上の線分 $-1 \leqq x \leqq 1$ である。
これらの形状が求める概形となる。
解説
ハイポトロコイド(内トロコイド)の媒介変数表示を自力で導出する典型問題である。(1) で正確に $\overrightarrow{CP}$ の偏角を求められるかが鍵となる。「大円と小円の接点」に注目し、接点が大円上で進んだ弧長と小円上で進んだ弧長が等しいことを利用する考え方は、サイクロイド系の問題の定石である。(2) における「いつか元の位置に戻る」という条件は、2つの回転の周期性が一致する条件(有理数条件)に帰着する。三角関数の最大値の条件から $\cos\theta=1$ を導く論証がポイントとなる。(3) は $r=\frac{1}{2}$ のとき内サイクロイドが線分になるという有名な定理の確認である。
答え
(1)
$$ x = (1-r)\cos\theta + a\cos\frac{r-1}{r}\theta $$
$$ y = (1-r)\sin\theta + a\sin\frac{r-1}{r}\theta $$
(2)
$r$ が有理数であること。
(3)
$0 < a < \frac{1}{2}$ のとき、軌跡は楕円 $\frac{x^2}{\left(\frac{1}{2}+a\right)^2} + \frac{y^2}{\left(\frac{1}{2}-a\right)^2} = 1$
$a = \frac{1}{2}$ のとき、軌跡は線分 $y=0 \ (-1 \leqq x \leqq 1)$
概形は、上記の方程式が表す通り、原点を中心とし座標軸上に主軸を持つ楕円(または $x$ 軸上の線分)となる。
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