大阪大学 1991年 理系 第2問 解説

方針・初手
直線 $l$ 上の任意の点が1次変換 $f$ によって直線 $l'$ 上の点に移ることから、パラメータを用いて点の座標を表し、$t$ についての恒等式を立てる。そこから行列 $A$ の成分に関する条件を求め、$A^2 \neq O$ という条件を用いて $f(l')$ を調べる。
解法1
直線 $l: y = px + 1$ 上の点は、実数パラメータ $t$ を用いて $(t, pt+1)$ と表せる。 この点が1次変換 $f$ によって移る点は
$$ \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} t \\ pt+1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} at+b(pt+1) \\ ct+d(pt+1) \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} (a+bp)t+b \\ (c+dp)t+d \end{pmatrix} $$
この点が直線 $l': y = qx$ 上にあるため、次の関係式が成り立つ。
$$ (c+dp)t+d = q\{(a+bp)t+b\} $$
これがすべての実数 $t$ について成り立つので、 $t$ についての恒等式として係数を比較すると
$$ \begin{cases} c+dp = q(a+bp) \\ d = qb \end{cases} $$
第2式を第1式に代入すると
$$ c+qbp = qa+qbp $$
ゆえに $c=qa$ となる。したがって、行列 $A$ は次のように表せる。
$$ A = \begin{pmatrix} a & b \\ qa & qb \end{pmatrix} $$
このとき、$A^2$ を計算すると
$$ A^2 = \begin{pmatrix} a & b \\ qa & qb \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a & b \\ qa & qb \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a^2+abq & ab+b^2q \\ qa^2+q^2ab & qab+q^2b^2 \end{pmatrix} = (a+bq) \begin{pmatrix} a & b \\ qa & qb \end{pmatrix} = (a+bq)A $$
条件より $A^2 \neq O$ であるから、$A \neq O$ かつ $a+bq \neq 0$ である。
次に、直線 $l'$ 上の点は、実数パラメータ $s$ を用いて $(s, qs)$ と表せる。 この点を1次変換 $f$ によって移すと
$$ A \begin{pmatrix} s \\ qs \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b \\ qa & qb \end{pmatrix} \begin{pmatrix} s \\ qs \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} as+bqs \\ qas+q^2bs \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} (a+bq)s \\ q(a+bq)s \end{pmatrix} $$
ここで $a+bq \neq 0$ であるため、$s$ がすべての実数値を動くとき、 $X = (a+bq)s$ もすべての実数値を動く。 移った先の点は $(X, qX)$ となり、これは直線 $y = qx$ すなわち $l'$ 全体を表す。 したがって、$f$ による $l'$ の像は $l'$ である。
解説
直線のパラメータ表示を用いて、与えられた条件を恒等式に帰着させるのが本問のポイントである。 恒等式から行列 $A$ が $\begin{pmatrix} a & b \\ qa & qb \end{pmatrix}$ の形になることがわかり、$\det A = 0$ となることから、この1次変換 $f$ は平面全体を原点を通る直線(または原点のみ)に潰す変換であることがわかる。 「像が $l'$ である」ことを示すためには、移った先が $l'$ 上にあることに加えて、直線 $l'$ 全体を覆うこと(全射性)を示す必要がある。本問では $A^2 \neq O$ から導かれる $a+bq \neq 0$ がその役割を担っている。なお、$A^2 = (a+bq)A$ はケーリー・ハミルトンの定理からも直ちに見抜くことができる。
答え
$f$ による $l'$ の像が $l'$ に一致することが示された。
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