大阪大学 2002年 理系 第1問 解説

方針・初手
3次方程式の実数解の配置に関する問題である。アプローチとしては大きく2つ考えられる。
1つ目は、関数 $f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c$ のグラフの概形を考える方法である。$f(x)=0$ が異なる3つの実数解をもつことから、$f(x)$ は極大値と極小値をもつ。導関数 $f'(x)=0$ の解(極値をとる $x$ の値)の符号を調べることで、グラフが $x$ 軸と交わる場所を特定できる。
2つ目は、解と係数の関係を用いる方法である。「少なくとも2つの解が負」という結論を示すために、背理法を用いて「負の解が1個以下」と仮定し、与えられた条件 $b > 0$ などに矛盾することを導く。
解法1
$f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c$ とおく。
3次方程式 $f(x) = 0$ が異なる3つの実数解をもつため、関数 $f(x)$ は極大値と極小値をもち、極大値は正、極小値は負である。 極値をもつことから、2次方程式 $f'(x) = 3x^2 + 2ax + b = 0$ は異なる2つの実数解をもつ。 それらを $\alpha, \beta$ ($\alpha < \beta$)とおく。
$f'(x) = 0$ における解と係数の関係より、以下の等式が成り立つ。
$$ \begin{cases} \alpha + \beta = -\frac{2}{3}a \\ \alpha\beta = \frac{1}{3}b \end{cases} $$
問題の条件より $a > 0, b > 0$ であるから、
$$ \begin{cases} \alpha + \beta < 0 \\ \alpha\beta > 0 \end{cases} $$
積が正であることから $\alpha$ と $\beta$ は同符号であり、和が負であることから共に負であることがわかる。 すなわち、$\alpha < \beta < 0$ である。
また、$f(x)$ の $x^3$ の係数は正であるから、$f(x)$ は $x = \alpha$ で極大値、$x = \beta$ で極小値をとる。 $f(x) = 0$ が異なる3つの実数解をもつことと合わせて、増減表やグラフの概形を考えると、3つの実数解 $x_1, x_2, x_3$ ($x_1 < x_2 < x_3$)は極値をとる $x$ の値と交互に並ぶ。 したがって、解の大小関係は以下のようになる。
$$ x_1 < \alpha < x_2 < \beta < x_3 $$
ここで、$\beta < 0$ であるから、
$$ x_1 < x_2 < \beta < 0 $$
が成り立つ。 よって、$x_1, x_2$ は共に負の実数であり、$f(x) = 0$ は少なくとも2つの負の実数解をもつことが示された。
解法2
3次方程式 $x^3 + ax^2 + bx + c = 0$ の異なる3つの実数解を $p, q, r$ ($p > q > r$)とおく。
3次方程式の解と係数の関係より、以下の等式が成り立つ。
$$ \begin{cases} p + q + r = -a \\ pq + qr + rp = b \\ pqr = -c \end{cases} $$
「少なくとも2つの実数解は負である」という命題を背理法を用いて証明する。 この命題の否定は「負の実数解は1個以下である」となる。
3つの実数解は互いに異なる($p > q > r$)ため、負の実数解が1個以下であるという仮定は、2番目に大きい解 $q$ が0以上であること、すなわち $p > q \ge 0$ と同値である。
$p > q \ge 0$ のとき、$p > 0$ であるため、 $p + q > 0$ かつ $pq \ge 0$ が成り立つ。
解と係数の関係の第1式より、
$$ r = -a - (p + q) $$
条件 $a > 0$ および $p + q > 0$ より、$-a < 0, -(p+q) < 0$ であるから、
$$ r < -(p + q) < 0 $$
となる。次に、解と係数の関係の第2式を変形する。
$$ b = pq + r(p + q) $$
ここで、$p + q > 0$ であるから、両辺に $r < -(p + q)$ を用いると不等式の向きはそのまま維持され、
$$ b < pq - (p + q)^2 $$
右辺を展開して整理すると、
$$ \begin{aligned} b &< pq - (p^2 + 2pq + q^2) \\ &= -p^2 - pq - q^2 \\ &= -\left(p + \frac{q}{2}\right)^2 - \frac{3}{4}q^2 \end{aligned} $$
$p > 0, q \ge 0$ より $p + \frac{q}{2} > 0$ であるから、$-\left(p + \frac{q}{2}\right)^2 < 0$ となり、右辺は全体として負となる。 すなわち $b < 0$ が導かれる。
しかし、これは問題の条件である $b > 0$ に矛盾する。 したがって、仮定「負の実数解は1個以下である」は誤りであり、少なくとも2つの実数解は負であることが示された。
解説
3次方程式の実数解の配置(符号)を問う標準的な問題である。
解法1のように、微分を用いて関数のグラフの概形を描き、極値をとる $x$ 座標($\alpha, \beta$)と実数解($x$ 軸との交点)の位置関係を比較するアプローチは視覚的にも分かりやすく、論理の飛躍も防ぎやすい強力な手法である。方程式が3つの実数解をもつとき、「解は極値をとる $x$ 座標と交互に現れる」という事実は頻繁に用いる。
解法2は、解と係数の関係から直接不等式評価を行い、背理法で矛盾を導く代数的なアプローチである。「少なくとも2つが負」の否定を「$p > q \ge 0$」と数式化し、$r$ の上限を評価して $b$ に代入する処理は、式の扱いに慣れている必要があるが、記述量は少なく簡潔にまとまる。
答え
(証明終。解法1または解法2の通り、題意は示された。)
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