大阪大学 2011年 理系 第4問 解説

方針・初手
- (1) は $x \geqq 1$ の条件を用いて、絶対値の中身を $x$ の一次式で上から評価する。
- (2) は与えられた恒等式を利用して $\sqrt[3]{f(x)} - x - k$ の有理化のような操作を行う。分子の次数を下げるように $k$ の値を定めるのがポイントである。
- (3) は (2) の結果を利用して極限を考える。自然数(整数)からなる数列が収束するとき、その数列は十分先で一定値になる性質を利用し、多項式の一致の定理へ持ち込む。
解法1
(1)
三角不等式より、任意の $x$ に対して
$$ |px + q| \leqq |px| + |q| = |p||x| + |q| $$
が成り立つ。 $x \geqq 1$ のとき、$|x| = x$ であり、また $1 \leqq x$ であるから両辺に $|q| \geqq 0$ をかけて $|q| \leqq |q|x$ が成り立つ。 したがって、
$$ |px + q| \leqq |p|x + |q|x = (|p| + |q|)x $$
となる。ここで $r = |p| + |q|$ とおけば、$r$ は $p, q$ にのみ依存する定数であり、$x \geqq 1$ のとき $|px + q| \leqq rx$ を満たす。 よって、条件をみたす定数 $r$ が存在することが示された。
(2)
与えられた恒等式において、$\alpha = \sqrt[3]{f(x)}$、$\beta = x + k$ とおく。
$$ \alpha - \beta = \frac{\alpha^3 - \beta^3}{\alpha^2 + \alpha\beta + \beta^2} $$
分子について計算すると、
$$ \begin{aligned} \alpha^3 - \beta^3 &= f(x) - (x + k)^3 \\ &= (x^3 + ax^2 + bx + c) - (x^3 + 3kx^2 + 3k^2x + k^3) \\ &= (a - 3k)x^2 + (b - 3k^2)x + c - k^3 \end{aligned} $$
ここで、$x^2$ の項を消去するために $a - 3k = 0$、すなわち $k = \frac{a}{3}$ とする。 このとき、
$$ \alpha^3 - \beta^3 = \left(b - \frac{a^2}{3}\right)x + c - \frac{a^3}{27} $$
となる。$p = b - \frac{a^2}{3}, q = c - \frac{a^3}{27}$ とおくと、$p, q$ は定数であり、$\alpha^3 - \beta^3 = px + q$ と表せる。
次に分母について考える。 $x \geqq 1$ において、$a, b, c$ は正の定数であるから、
$$ f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c > x^3 $$
ゆえに、$\alpha = \sqrt[3]{f(x)} > x$ である。 また、$k = \frac{a}{3} > 0$ より、$\beta = x + k > x$ である。 したがって、$x \geqq 1 > 0$ であることに注意すると、
$$ \alpha^2 + \alpha\beta + \beta^2 > x^2 + x \cdot x + x^2 = 3x^2 > x^2 > 0 $$
が成り立つ。
これらを用いて $\alpha - \beta$ の絶対値を評価すると、
$$ |\sqrt[3]{f(x)} - x - k| = |\alpha - \beta| = \frac{|px + q|}{\alpha^2 + \alpha\beta + \beta^2} < \frac{|px + q|}{x^2} $$
ここで (1) の結果より、$x \geqq 1$ ならば $|px + q| \leqq rx$ となる定数 $r$ が存在する。これを用いると、
$$ \frac{|px + q|}{x^2} \leqq \frac{rx}{x^2} = \frac{r}{x} $$
したがって、$l = r$ とおけば、$x \geqq 1$ ならば $|\sqrt[3]{f(x)} - x - k| < \frac{l}{x} \leqq \frac{l}{x}$ となり、$|\sqrt[3]{f(x)} - x - k| \leqq \frac{l}{x}$ を満たす定数 $k, l$ ($k = \frac{a}{3}, l = r$)が存在することが示された。
(3)
(2) で存在が示された定数 $k, l$ を用いる。すべての自然数 $n$ は $n \geqq 1$ を満たすので、(2) の不等式に $x = n$ を代入して、
$$ |\sqrt[3]{f(n)} - n - k| \leqq \frac{l}{n} $$
が成り立つ。 仮定より $\sqrt[3]{f(n)}$ は自然数であり、$n$ も自然数であるから、数列 $m_n$ を $m_n = \sqrt[3]{f(n)} - n$ と定めると、$m_n$ は整数からなる数列である。 上の不等式は、
$$ |m_n - k| \leqq \frac{l}{n} $$
と書き換えられる。 $n \to \infty$ のとき $\frac{l}{n} \to 0$ であるから、$n$ を十分大きくすれば $\frac{l}{n} < \frac{1}{2}$ とできる。 例えば、$n > 2|l|$ なる自然数 $n$ については、
$$ |m_n - k| < \frac{1}{2} $$
が成り立つ。 任意の自然数 $n, n'$ がともに $n, n' > 2|l|$ を満たすとき、
$$ |m_n - m_{n'}| = |(m_n - k) - (m_{n'} - k)| \leqq |m_n - k| + |m_{n'} - k| < \frac{1}{2} + \frac{1}{2} = 1 $$
$m_n, m_{n'}$ は整数であるから、差の絶対値が $1$ 未満となるためには $m_n - m_{n'} = 0$、すなわち $m_n = m_{n'}$ でなければならない。 よって、ある番号 $N$ 以上では $m_n$ は一定の整数値 $m$ をとる。 このとき、$n \geqq N$ なるすべての $n$ に対して $|m - k| \leqq \frac{l}{n}$ が成り立つが、$n \to \infty$ とすると右辺は $0$ に収束するため、
$$ |m - k| \leqq 0 \iff k = m $$
となる。したがって、$k$ は整数 $m$ であることがわかる。
ゆえに、$n \geqq N$ なるすべての自然数 $n$ において、
$$ \sqrt[3]{f(n)} - n = m \iff f(n) = (n + m)^3 $$
が成り立つ。 多項式 $g(x) = f(x) - (x + m)^3$ を考えると、$g(x)$ は高々3次の多項式である。 しかし、$g(n) = 0$ が $n \geqq N$ なる無限個の自然数 $n$ に対して成り立つため、多項式の恒等定理により $g(x) = 0$ は恒等式である。 すなわち、$f(x) = (x + m)^3$ と表される。
最後に、$m$ が自然数であることを確認する。 $f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c$ と $(x + m)^3 = x^3 + 3mx^2 + 3m^2x + m^3$ の係数を比較すると、
$$ 3m = a $$
が得られる。問題の条件より $a$ は正の定数であるから、$3m > 0$ すなわち $m > 0$ である。 $m$ は正の整数であるから、自然数である。 以上より、関数 $f(x)$ は自然数の定数 $m$ を用いて $f(x) = (x+m)^3$ と表されることが示された。
解説
関数の漸近的な挙動と整数条件を組み合わせた証明問題である。 (1) は基本的な不等式評価である。 (2) では $x \to \infty$ のときに $\sqrt[3]{x^3+ax^2+\dots} \approx x + \frac{a}{3}$ と近似できることを厳密に不等式で評価させる誘導となっている。恒等式を用いて無理式を有理化する手法は、極限計算で頻出する変形である。 (3) は「極限値に収束する整数列は、十分先でその極限値に一致して定数列になる」という事実(離散性の活用)が鍵となる。多項式の一致の定理(恒等定理)へ帰着させる論理展開は難関大でよく見られるテーマであるため、確実に押さえておきたい。
答え
(1)
略(証明終)
(2)
略(証明終)
(3)
略(証明終)
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