東北大学 1964年 理系 第4問 解説

方針・初手
$z\neq 0$ であるから、各式はまず $z$ を掛けて分母を払うのが自然である。
すると、(2) では $z\bar z=|z|^2$ を用いて $z$ が実数であることが分かり、(3) では $|z|^2$ だけの方程式に落ちる。したがって、複素数そのものを直接追うよりも、$z\bar z$ や $|z|^2$ を使って整理するのが要点である。
解法1
(1)
与式 $$ z+1-\frac{a}{z}=0 $$ に $z$ を掛けると
$$ z^2+z-a=0 $$
を得る。したがって、$z$ は二次方程式の解であり
$$ z=\frac{-1\pm\sqrt{1+4a}}{2} $$
である。
ただし、もとの条件は $z\neq 0$ である。実際、$a=0$ のとき上の2解は $0,-1$ となるが、$z=0$ はもとの式では許されない。よって $a=0$ のときは $z=-1$ のみである。
(2)
与式 $$ \bar z+1-\frac{a}{z}=0 $$ に $z$ を掛けると
$$ z\bar z+z-a=0 $$
すなわち
$$ |z|^2+z-a=0 $$
となる。ここで $|z|^2$ と $a$ は実数であるから、
$$ z=a-|z|^2 $$
より $z$ は実数である。
そこで $z=x$($x\in\mathbb{R},\ x\neq 0$)とおくと、$\bar z=z=x$ であるから、与式は
$$ x+1-\frac{a}{x}=0 $$
となる。これに $x$ を掛けて
$$ x^2+x-a=0 $$
を得る。実数解 $x$ が存在するための条件は判別式より
$$ 1+4a\geq 0 $$
すなわち
$$ a\geq -\frac14 $$
である。
なお、$a=0$ のときは解が $x=0,-1$ となるが、$x=0$ は不適であり、$x=-1$ が使えるので問題ない。したがって求める範囲は
$$ a\geq -\frac14 $$
である。
(3)
与式 $$ z(\bar z)^2+\bar z-\frac{a}{z}=0 $$ に $z$ を掛けると
$$ z^2(\bar z)^2+z\bar z-a=0 $$
となる。ここで
$$ z^2(\bar z)^2=(z\bar z)^2=|z|^4,\qquad z\bar z=|z|^2 $$
であるから、
$$ |z|^4+|z|^2-a=0 $$
を得る。
ここで
$$ t=|z|^2 $$
とおくと、$z\neq 0$ より
$$ t>0 $$
であり、方程式は
$$ t^2+t-a=0 $$
となる。したがって
$$ a=t^2+t $$
である。$t>0$ なので
$$ a>0 $$
が必要である。
逆に $a>0$ なら、二次方程式 $$ t^2+t-a=0 $$ の正の解
$$ t=\frac{-1+\sqrt{1+4a}}{2} $$
が存在する。よって $|z|^2=t$ を満たす複素数 $z$ は存在する。たとえば $z=\sqrt t$ とすればよい。
したがって求める範囲は
$$ a>0 $$
である。
解説
この問題の要点は、複素数をそのまま扱うのではなく、$z\bar z=|z|^2$ を使って実数条件に落とすことである。
(2) では $|z|^2+z-a=0$ から $z$ 自身が実数であることが直ちに分かる。この見抜きができれば、あとは実数の二次方程式になる。
(3) では $z$ を掛けると $z^2(\bar z)^2$ が $(z\bar z)^2=|z|^4$ に変わるため、複素数の偏角は消えて、$|z|^2$ だけの問題になる。存在条件を問われているので、最後は $t=|z|^2>0$ という条件を忘れないことが重要である。
答え
(1)
$$ z=\frac{-1\pm\sqrt{1+4a}}{2} $$
ただし $a=0$ のときは $z=0$ を除き、$z=-1$ のみ。
(2)
$$ a\geq -\frac14 $$
(3)
$$ a>0 $$
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