トップ 東京工業大学 1964年 理系 第2問

東京工業大学 1964年 理系 第2問 解説

数学2/式と証明数学1/方程式不等式テーマ/不等式の証明
東京工業大学 1964年 理系 第2問 解説

方針・初手

相加平均と相乗平均の大小関係(AM-GM不等式)を拡張・応用する問題です。 (1) では、2変数の場合の相加平均と相乗平均の大小関係を出発点とし、4変数の場合を証明してから、それを利用して3変数の場合を証明するという流れ(コーシーの帰納法)をとるのが定石です。 (2) では、(1) で示した3変数、4変数の不等式と、2変数の不等式を適切に組み合わせることで、与えられた式の各項を評価し、連鎖的な大小関係を導きます。

解法1

(1)

2つの正数 $x, y$ に対して、相加平均と相乗平均の大小関係より、以下の不等式が成り立つ。

$$\frac{x+y}{2} \ge \sqrt{xy}$$

(等号成立は $x=y$ のとき)

まず、4つの正数 $a, b, c, d$ についての不等式を示す。 上の2変数の不等式を2回用いると、

$$\frac{a+b+c+d}{4} = \frac{1}{2} \left( \frac{a+b}{2} + \frac{c+d}{2} \right) \ge \frac{1}{2} (\sqrt{ab} + \sqrt{cd}) \ge \sqrt{\sqrt{ab} \sqrt{cd}} = \sqrt[4]{abcd}$$

となり、示された。 等号が成立するのは、$a=b$ かつ $c=d$ かつ $\sqrt{ab}=\sqrt{cd}$、すなわち $a=b=c=d$ のときである。

次に、3つの正数 $a, b, c$ についての不等式を示す。 上で示した4変数の不等式において、$d = \frac{a+b+c}{3}$ とおくと、$d$ も正数であるから、

$$\frac{a+b+c+\frac{a+b+c}{3}}{4} \ge \sqrt[4]{abc \left( \frac{a+b+c}{3} \right)}$$

左辺を計算すると、

$$\frac{\frac{4}{3}(a+b+c)}{4} = \frac{a+b+c}{3}$$

となるため、不等式は以下のように書ける。

$$\frac{a+b+c}{3} \ge \sqrt[4]{abc} \cdot \left( \frac{a+b+c}{3} \right)^{\frac{1}{4}}$$

両辺は正であるから、両辺を $\left( \frac{a+b+c}{3} \right)^{\frac{1}{4}}$ で割ると、

$$\left( \frac{a+b+c}{3} \right)^{\frac{3}{4}} \ge (abc)^{\frac{1}{4}}$$

両辺を $\frac{4}{3}$ 乗して、

$$\frac{a+b+c}{3} \ge (abc)^{\frac{1}{3}} = \sqrt[3]{abc}$$

となり、示された。 等号が成立するのは、$a=b=c=d$ すなわち $a=b=c=\frac{a+b+c}{3}$ より $a=b=c$ のときである。

(2)

(1) の結果および2変数の相加・相乗平均の大小関係を用いて、$P, Q, R, S$ の大小を比較する。

まず、$P$ と $R$ を比較する。 2変数の相加・相乗平均の大小関係より、

$$\sqrt{ab} \le \frac{a+b}{2}$$ $$\sqrt{ac} \le \frac{a+c}{2}$$ $$\sqrt{ad} \le \frac{a+d}{2}$$ $$\sqrt{bc} \le \frac{b+c}{2}$$ $$\sqrt{bd} \le \frac{b+d}{2}$$ $$\sqrt{cd} \le \frac{c+d}{2}$$

これら6つの不等式を辺々足し合わせると、

$$6R \le \frac{3a+3b+3c+3d}{2} = \frac{3}{2}(a+b+c+d)$$

両辺を6で割ると、

$$R \le \frac{a+b+c+d}{4} = P$$

等号成立は $a=b=c=d$ のときである。したがって、$P \ge R$ を得る。

次に、$R$ と $S$ を比較する。 (1) で示した3変数の相加・相乗平均の大小関係において、$x=\sqrt{ab}, y=\sqrt{bc}, z=\sqrt{ca}$ とすると、

$$\sqrt[3]{\sqrt{ab}\sqrt{bc}\sqrt{ca}} \le \frac{\sqrt{ab}+\sqrt{bc}+\sqrt{ca}}{3}$$

左辺は $\sqrt[3]{\sqrt{a^2 b^2 c^2}} = \sqrt[3]{abc}$ であるから、

$$\sqrt[3]{abc} \le \frac{\sqrt{ab}+\sqrt{bc}+\sqrt{ca}}{3}$$

同様にして、他の3つの文字の組に対しても以下の不等式が成り立つ。

$$\sqrt[3]{abd} \le \frac{\sqrt{ab}+\sqrt{bd}+\sqrt{da}}{3}$$ $$\sqrt[3]{acd} \le \frac{\sqrt{ac}+\sqrt{cd}+\sqrt{da}}{3}$$ $$\sqrt[3]{bcd} \le \frac{\sqrt{bc}+\sqrt{cd}+\sqrt{db}}{3}$$

これら4つの不等式を辺々足し合わせると、左辺は $4S$ となる。右辺の分子には $\sqrt{ab}, \sqrt{ac}, \sqrt{ad}, \sqrt{bc}, \sqrt{bd}, \sqrt{cd}$ がそれぞれ2回ずつ現れるため、

$$4S \le \frac{2(\sqrt{ab}+\sqrt{ac}+\sqrt{ad}+\sqrt{bc}+\sqrt{bd}+\sqrt{cd})}{3}$$

右辺の分子のかっこ内は $6R$ であるから、

$$4S \le \frac{2 \times 6R}{3} = 4R$$

よって $S \le R$ となる。等号成立は $a=b=c=d$ のときである。したがって、$R \ge S$ を得る。

最後に、$S$ と $Q$ を比較する。 (1) で示した4変数の相加・相乗平均の大小関係において、4つの数を $\sqrt[3]{abc}, \sqrt[3]{abd}, \sqrt[3]{acd}, \sqrt[3]{bcd}$ として適用すると、

$$\frac{\sqrt[3]{abc}+\sqrt[3]{abd}+\sqrt[3]{acd}+\sqrt[3]{bcd}}{4} \ge \sqrt[4]{\sqrt[3]{abc} \cdot \sqrt[3]{abd} \cdot \sqrt[3]{acd} \cdot \sqrt[3]{bcd}}$$

左辺は $S$ である。右辺の根号の中身を計算すると、

$$\sqrt[3]{abc \cdot abd \cdot acd \cdot bcd} = \sqrt[3]{a^3 b^3 c^3 d^3} = abcd$$

となるため、右辺は $\sqrt[4]{abcd} = Q$ となる。 よって $S \ge Q$ となる。等号成立は $a=b=c=d$ のときである。

以上の結果をまとめると、$P \ge R \ge S \ge Q$ となる。

解説

(1) は、多変数の相加平均と相乗平均の大小関係(AM-GM不等式)の証明として非常に有名な手法です。2変数から4変数に拡張し、そこから1つの変数を全体の平均値に置き換えて3変数に落とし込むという「コーシーの帰納法」と呼ばれる考え方が用いられています。

(2) は、基本対称式に関連するマクローリンの不等式(Maclaurin's inequality)の具体例に相当します。各項の形をよく観察し、2変数、3変数、4変数のAM-GM不等式をどの部分に適用すれば目的の式が現れるかを考える力が問われます。

答え

(1) 略(解法1の証明を参照)

(2) $P \ge R \ge S \ge Q$

自分の記録

ログインすると保存できます。

誤りを報告

解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。