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東京工業大学 1982年 理系 第2問 解説

数学C/平面ベクトル数学2/三角関数数学1/図形計量テーマ/最大・最小テーマ/図形総合
東京工業大学 1982年 理系 第2問 解説

方針・初手

(1) は、集合 $L$ の元であるベクトル $\vec{v} = m\vec{a} + n\vec{b}$ の大きさの2乗 $|\vec{v}|^2$ を計算し、$\vec{a}$ と $\vec{b}$ のなす角 $\theta$ を用いて表すことが第一歩である。$m, n$ は整数であるという条件と、$\cos\theta$ のとりうる値の範囲から、$|\vec{v}|^2$ が特定の離散的な値(整数の2乗)以上になることを評価する。

(2) は、(1) の結果を利用する。$r=1$ という条件は、$\min(1, |\vec{a}+\vec{b}|, |\vec{a}-\vec{b}|) = 1$ と言い換えられる。これを用いて $\cos\theta$ の値の範囲を絞り込み、三角形の面積 $S = \frac{1}{2}\sin\theta$ の最小値を求める。

解法1

(1)

$L$ の元を $\vec{v} = m\vec{a} + n\vec{b}$($m, n$ は整数)とおく。$\vec{v}$ が零ベクトルでないとき、$(m, n) \neq (0, 0)$ である。

$\vec{a}, \vec{b}$ は半径 $1$ の円周上の点であるから、$|\vec{a}| = 1, |\vec{b}| = 1$ である。$\vec{a}, \vec{b}$ のなす角を $\theta$ とし、$x = \cos\theta$ とおく。点 $A, B$ は同一直径上にない異なる2点であるから、$0 < \theta < \pi$ であり、$-1 < x < 1$ である。

$|\vec{v}|^2$ を計算すると、以下のようになる。

$$ |\vec{v}|^2 = |m\vec{a} + n\vec{b}|^2 = m^2|\vec{a}|^2 + 2mn\vec{a}\cdot\vec{b} + n^2|\vec{b}|^2 = m^2 + n^2 + 2mn x $$

これを $x$ の関数とみて $f(x) = 2mn x + m^2 + n^2$ とおく。$f(x)$ は $x$ の1次関数または定数関数($mn=0$ のとき)である。 $-1 \le x \le 1$ における $f(x)$ の両端の値を調べる。

$$ f(1) = m^2 + n^2 + 2mn = (m+n)^2 \ge 0 $$

$$ f(-1) = m^2 + n^2 - 2mn = (m-n)^2 \ge 0 $$

関数 $f(x)$ の区間 $-1 < x < 1$ における値は、$f(-1)$ と $f(1)$ の間に存在する。すなわち、つねに以下が成り立つ。

$$ f(x) \ge \min(f(-1), f(1)) = \min((m-n)^2, (m+n)^2) $$

ここで、$m, n$ は整数であるから、$m-n$ と $m+n$ も整数であり、その2乗は非負の整数となる。$m, n$ の関係によって場合分けを行う。

(i)

$m = n$ のとき $(m, n) \neq (0, 0)$ より $m \neq 0$ である。 このとき $\vec{v} = m(\vec{a}+\vec{b})$ となる。

$$ |\vec{v}|^2 = m^2|\vec{a}+\vec{b}|^2 $$

$m$ は0でない整数より $m^2 \ge 1$ であるから、$|\vec{v}|^2 \ge |\vec{a}+\vec{b}|^2$ となり、$|\vec{v}| \ge |\vec{a}+\vec{b}|$ を得る。

(ii)

$m = -n$ のとき $(m, n) \neq (0, 0)$ より $m \neq 0$ である。 このとき $\vec{v} = m(\vec{a}-\vec{b})$ となる。

$$ |\vec{v}|^2 = m^2|\vec{a}-\vec{b}|^2 $$

$m$ は0でない整数より $m^2 \ge 1$ であるから、$|\vec{v}|^2 \ge |\vec{a}-\vec{b}|^2$ となり、$|\vec{v}| \ge |\vec{a}-\vec{b}|$ を得る。

(iii)

$m \neq n$ かつ $m \neq -n$ のとき $m-n \neq 0$ かつ $m+n \neq 0$ である。$m-n, m+n$ はともに0でない整数であるから、$(m-n)^2 \ge 1$ かつ $(m+n)^2 \ge 1$ が成り立つ。 したがって、$\min((m-n)^2, (m+n)^2) \ge 1$ となる。 これより、$|\vec{v}|^2 = f(x) \ge 1$ が導かれ、$|\vec{v}| \ge 1$ を得る。

以上の (i), (ii), (iii) より、$(m, n) \neq (0, 0)$ である任意の整数 $m, n$ について、$|\vec{v}| \ge |\vec{a}+\vec{b}|$、 $|\vec{v}| \ge |\vec{a}-\vec{b}|$、 $|\vec{v}| \ge 1$ のいずれかが必ず成り立つ。 よって、零ベクトルでない $\vec{v}$ の大きさは、常にこれらの最小値以上となる。

$$ |\vec{v}| \ge \min(1, |\vec{a}+\vec{b}|, |\vec{a}-\vec{b}|) $$

また、$L$ の元として、以下の3つのベクトルが存在する。 ・ $(m, n) = (1, 0)$ のとき $\vec{v} = \vec{a}$ であり、$|\vec{v}| = 1$ ・ $(m, n) = (1, 1)$ のとき $\vec{v} = \vec{a}+\vec{b}$ であり、$|\vec{v}| = |\vec{a}+\vec{b}|$ ・ $(m, n) = (1, -1)$ のとき $\vec{v} = \vec{a}-\vec{b}$ であり、$|\vec{v}| = |\vec{a}-\vec{b}|$

これらはすべて $L$ に含まれ、零ベクトルではない($0 < \theta < \pi$ より)。 したがって、零ベクトルでない $L$ の元の大きさの最小値 $r$ は、$1, |\vec{a}+\vec{b}|, |\vec{a}-\vec{b}|$ のうちの最小のものに等しいことが示された。(証明終)

(2)

(1) の結果より、$r=1$ であるということは、以下の条件と同値である。

$$ \min(1, |\vec{a}+\vec{b}|, |\vec{a}-\vec{b}|) = 1 $$

これが成り立つためには、$|\vec{a}+\vec{b}| \ge 1$ かつ $|\vec{a}-\vec{b}| \ge 1$ であることが必要十分である。それぞれの両辺を2乗して計算する。

$$ |\vec{a}+\vec{b}|^2 = |\vec{a}|^2 + 2\vec{a}\cdot\vec{b} + |\vec{b}|^2 = 2 + 2\cos\theta \ge 1 $$

$$ |\vec{a}-\vec{b}|^2 = |\vec{a}|^2 - 2\vec{a}\cdot\vec{b} + |\vec{b}|^2 = 2 - 2\cos\theta \ge 1 $$

これらを整理すると、以下の不等式を得る。

$$ 2\cos\theta \ge -1 \iff \cos\theta \ge -\frac{1}{2} $$

$$ -2\cos\theta \ge -1 \iff \cos\theta \le \frac{1}{2} $$

したがって、$\cos\theta$ の満たすべき条件は $-\frac{1}{2} \le \cos\theta \le \frac{1}{2}$ である。 $0 < \theta < \pi$ であるから、$\theta$ の値の範囲は以下のように定まる。

$$ \frac{\pi}{3} \le \theta \le \frac{2\pi}{3} $$

ここで、$\triangle OAB$ の面積 $S$ は、以下のように表される。

$$ S = \frac{1}{2}|\vec{a}||\vec{b}|\sin\theta = \frac{1}{2}\sin\theta $$

$\frac{\pi}{3} \le \theta \le \frac{2\pi}{3}$ の範囲において、$\sin\theta$ は $\theta = \frac{\pi}{3}, \frac{2\pi}{3}$ のときに最小値 $\frac{\sqrt{3}}{2}$ をとる。 したがって、$S$ の最小値は以下のようになる。

$$ S \ge \frac{1}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{\sqrt{3}}{4} $$

解説

(1) は、一見すると $m, n$ の2変数関数を扱う難しそうな問題であるが、内積を変数($x = \cos\theta$)とみなして $x$ の1次関数として捉えることで、端点の評価に帰着させることができる。「端点において非負整数の2乗になる」という事実が最大のポイントである。幾何学的には、$L$ がなす格子点の原点からの最短距離を求めており、それは基本ベクトルまたはその和・差のベクトルのいずれかになるという事実(最短ベクトル問題における性質)を証明している。

(2) は (1) の結論をそのまま適用するだけであるが、「最小値が1である」という条件を「3つの候補のうち、1以外の2つも1以上である」という同値変形に落とし込む論理展開が重要である。

答え

(1) 略(解法1の証明を参照) (2)

$S$ の最小値は $\frac{\sqrt{3}}{4}$

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