東北大学 1985年 文系 第1問 解説

方針・初手
$\vec{AB},\vec{BC},\vec{CA}$ は三角形の周を一周するベクトルなので
$$ \vec{AB}+\vec{BC}+\vec{CA}=\vec{0} $$
が成り立つ。これを用いると、$a,b,c$ を辺の長さや角と結びつけられる。
特に、辺の長さの二乗を $a,b,c$ で表しておくと、(1) と (2) は角や辺の等しさの問題に帰着でき、(3) は面積公式 $$ 4S^2=|\vec{AB}|^2|\vec{AC}|^2-(\vec{AB}\cdot \vec{AC})^2 $$ に代入すればよい。
解法1
$\vec{x}=\vec{AB},\ \vec{y}=\vec{BC},\ \vec{z}=\vec{CA}$ とおくと
$$ \vec{x}+\vec{y}+\vec{z}=\vec{0} $$
であり、条件は
$$ \vec{z}\cdot \vec{x}=a,\qquad \vec{x}\cdot \vec{y}=b,\qquad \vec{y}\cdot \vec{z}=c $$
である。
まず辺の長さの二乗を求める。
$\vec{z}=-(\vec{x}+\vec{y})$ より
$$ a=\vec{z}\cdot \vec{x}=-(\vec{x}+\vec{y})\cdot \vec{x} =-|\vec{x}|^2-\vec{x}\cdot \vec{y} =-|\vec{AB}|^2-b $$
したがって
$$ |\vec{AB}|^2=-a-b $$
である。同様にして
$$ |\vec{BC}|^2=-b-c,\qquad |\vec{CA}|^2=-c-a $$
を得る。
(1) $abc=0$ のとき
$\vec{AC}=-\vec{CA}$ であるから、
$$ a=\vec{CA}\cdot \vec{AB} =-\vec{AC}\cdot \vec{AB} =-|\vec{AC}||\vec{AB}|\cos A $$
となる。よって
$$ a=0 \iff \cos A=0 \iff \angle A=90^\circ $$
である。
同様に
$$ b=-|\vec{AB}||\vec{BC}|\cos B,\qquad c=-|\vec{BC}||\vec{CA}|\cos C $$
であるから、
$$ b=0 \iff \angle B=90^\circ,\qquad c=0 \iff \angle C=90^\circ $$
となる。
したがって $abc=0$ のときは、$a,b,c$ のうち少なくとも1つが $0$ なので、$\triangle ABC$ は直角三角形である。
(2) $(a-b)(b-c)(c-a)=0$ のとき
上で得た式から
$$ |\vec{BC}|^2-|\vec{CA}|^2=(-b-c)-(-c-a)=a-b $$
である。したがって
$$ a=b \iff |\vec{BC}|^2=|\vec{CA}|^2 \iff BC=CA $$
となる。
同様に
$$ b=c \iff CA=AB,\qquad c=a \iff AB=BC $$
である。
よって $(a-b)(b-c)(c-a)=0$ のとき、$a=b$ または $b=c$ または $c=a$ が成り立つから、対応する2辺が等しい。したがって $\triangle ABC$ は二等辺三角形である。
(3) $\triangle ABC$ の面積
$\triangle ABC$ の面積を $S$ とする。すると
$$ 4S^2=|\vec{AB}|^2|\vec{AC}|^2-(\vec{AB}\cdot \vec{AC})^2 $$
である。
ここで
$$ |\vec{AB}|^2=-a-b,\qquad |\vec{AC}|^2=|\vec{CA}|^2=-c-a $$
であり、また $\vec{AC}=-\vec{CA}$ より
$$ \vec{AB}\cdot \vec{AC}=-\vec{AB}\cdot \vec{CA}=-a $$
である。したがって
$$ \begin{aligned} 4S^2 &=(-a-b)(-c-a)-(-a)^2\ &=(a+b)(a+c)-a^2\ &=ab+bc+ca \end{aligned} $$
となる。
面積は正であるから
$$ S=\frac12\sqrt{ab+bc+ca} $$
を得る。
解説
この問題の要点は、$\vec{AB}+\vec{BC}+\vec{CA}=\vec{0}$ を使って、内積 $a,b,c$ を辺の長さや角に結びつけることである。
(1) では $a,b,c$ がそれぞれ $-\cos A,\ -\cos B,\ -\cos C$ に比例することを見ると、$0$ になることは直角条件そのものである。
(2) では $a-b,\ b-c,\ c-a$ が辺の長さの二乗の差に一致することを見抜けると、二等辺三角形だとすぐ分かる。
(3) ではベクトルの面積公式 $$ 4S^2=|\vec{u}|^2|\vec{v}|^2-(\vec{u}\cdot \vec{v})^2 $$ を使うのが最短である。
答え
(1) $abc=0$ のとき、$\triangle ABC$ は直角三角形である。
(2) $(a-b)(b-c)(c-a)=0$ のとき、$\triangle ABC$ は二等辺三角形である。
(3) $\triangle ABC$ の面積 $S$ は
$$ S=\frac12\sqrt{ab+bc+ca} $$
である。
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