東京工業大学 1998年 理系 第4問 解説

方針・初手
点 $B$ における接線 $l$ と直線 $BA$ の傾き(あるいは方向ベクトル)をそれぞれ求め、2直線のなす角が等しいという条件を数式に翻訳する。 なす角の条件は、直線の傾きから正接($\tan$)を用いて立式するか、方向ベクトルから余弦($\cos$)を用いて立式するのが定石である。ここでは両方の解法を示す。 (2)の極限計算では、(1)で求めた $p$ の式の分子を有理化することで、極限値が求めやすい形に変形できることに気づくのがポイントである。
解法1
点 $B(p, q)$ は楕円 $C$ 上にあるから、以下の関係が成り立つ。
$$ \frac{p^2}{a^2} + q^2 = 1 \iff q^2 = \frac{a^2 - p^2}{a^2} $$
また、点 $B$ における接線 $l$ の方程式は以下のようになる。
$$ \frac{p}{a^2}x + qy = 1 $$
$p = 0$ と仮定すると、$q = 1$ ($q > 0$ より) となり、接線 $l$ は $y = 1$ となる。このとき、$l$ と直線 $x = 0$ ($y$ 軸) のなす角は直角となるが、問題文の「なす角は鋭角の方をとる」という条件に反する。よって $p \neq 0$ である。
接線 $l$ の傾きを $m$ とすると、$m = -\frac{p}{a^2 q}$ である。 直線 $x = p$ は $y$ 軸に平行な直線であるから、$l$ と直線 $x = p$ のなす鋭角を $\phi$ とすると、以下の式が成り立つ。
$$ \tan \phi = \left| \frac{1}{m} \right| = \frac{a^2 q}{|p|} $$
次に、直線 $BA$ の傾きを $m'$ とすると、$A(a, 0)$ より $m' = \frac{0 - q}{a - p} = -\frac{q}{a - p}$ である。 $l$ と直線 $BA$ のなす鋭角を $\theta$ とすると、正接の加法定理より以下の式が成り立つ。
$$ \tan \theta = \left| \frac{m - m'}{1 + mm'} \right| $$
絶対値の中の分母と分子をそれぞれ計算する。
$$ \begin{aligned} m - m' &= -\frac{p}{a^2 q} + \frac{q}{a - p} \\ &= \frac{-p(a - p) + a^2 q^2}{a^2 q(a - p)} \\ &= \frac{-ap + p^2 + a^2 - p^2}{a^2 q(a - p)} \\ &= \frac{a(a - p)}{a^2 q(a - p)} \\ &= \frac{1}{aq} \end{aligned} $$
$$ \begin{aligned} 1 + mm' &= 1 + \left(-\frac{p}{a^2 q}\right)\left(-\frac{q}{a - p}\right) \\ &= 1 + \frac{p}{a^2(a - p)} \\ &= \frac{a^3 - a^2 p + p}{a^2(a - p)} \end{aligned} $$
点 $B$ は楕円上の点で $q > 0$ であるから、$-a < p < a$ を満たす。 ここで、$a^3 - a^2 p + p$ の正負を調べる。
$$ a^3 - a^2 p + p = a^2(a - p) + p $$
$p > 0$ のときは $a - p > 0$ より明らかに正である。 $p < 0$ のときは、$p > -a$ であることを用いると、
$$ a^2(a - p) + p > a^2(a - (-a)) - a = 2a^3 - a = a(2a^2 - 1) $$
$a > 1$ より $a(2a^2 - 1) > 0$ となるため、常に $a^3 - a^2 p + p > 0$ である。 したがって、$1 + mm' > 0$ となり、$\tan \theta$ の絶対値はそのまま外すことができる。
$$ \tan \theta = \frac{\frac{1}{aq}}{\frac{a^3 - a^2 p + p}{a^2(a - p)}} = \frac{a(a - p)}{q(a^3 - a^2 p + p)} $$
条件より $\theta = \phi$ であるから、$\tan \theta = \tan \phi$ が成り立つ。
$$ \frac{a(a - p)}{q(a^3 - a^2 p + p)} = \frac{a^2 q}{|p|} $$
$$ |p|(a - p) = aq^2(a^3 - a^2 p + p) $$
$q^2 = \frac{a^2 - p^2}{a^2} = \frac{(a - p)(a + p)}{a^2}$ を右辺に代入する。
$$ |p|(a - p) = \frac{(a - p)(a + p)}{a}(a^3 - a^2 p + p) $$
$a - p > 0$ より両辺を $a - p$ で割り、両辺に $a$ をかける。
$$ a|p| = (a + p)(a^3 - a^2 p + p) $$
ここで、$p$ の符号で場合分けを行う。
(i)
$p > 0$ のとき
$$ ap = (a + p)(a^3 - a^2 p + p) $$
右辺を展開して整理する。
$$ \begin{aligned} ap &= a^4 - a^3 p + ap + a^3 p - a^2 p^2 + p^2 \\ ap &= a^4 - (a^2 - 1)p^2 + ap \\ (a^2 - 1)p^2 &= a^4 \\ p^2 &= \frac{a^4}{a^2 - 1} \end{aligned} $$
$p > 0$ より $p = \frac{a^2}{\sqrt{a^2 - 1}}$ となる。 しかし、これと $a$ との大小を比較すると、
$$ a^2 - a\sqrt{a^2 - 1} = a(a - \sqrt{a^2 - 1}) > 0 $$
であるから、$p > a$ となり、$-a < p < a$ を満たさず不適である。
(ii)
$p < 0$ のとき
$$ -ap = (a + p)(a^3 - a^2 p + p) $$
同様に右辺を展開して整理する。
$$ \begin{aligned} -ap &= a^4 - (a^2 - 1)p^2 + ap \\ (a^2 - 1)p^2 - 2ap - a^4 &= 0 \end{aligned} $$
これを $p$ についての2次方程式として解く。
$$ p = \frac{a \pm \sqrt{a^2 - (-a^4)(a^2 - 1)}}{a^2 - 1} = \frac{a \pm a\sqrt{a^4 - a^2 + 1}}{a^2 - 1} $$
$p < 0$ を満たすのはマイナスの符号の方である。
$$ p = \frac{a(1 - \sqrt{a^4 - a^2 + 1})}{a^2 - 1} $$
この値は $p > -a$ を満たす。なぜなら、
$$ \begin{aligned} p - (-a) &= \frac{a - a\sqrt{a^4 - a^2 + 1}}{a^2 - 1} + a \\ &= \frac{a - a\sqrt{a^4 - a^2 + 1} + a^3 - a}{a^2 - 1} \\ &= \frac{a(a^2 - \sqrt{a^4 - a^2 + 1})}{a^2 - 1} \end{aligned} $$
であり、$a^4 > a^4 - a^2 + 1$ より $a^2 > \sqrt{a^4 - a^2 + 1}$ となるため、分子が正となるからである。 以上より、求める座標 $p$ は確定する。
解法2
接線 $l$ の方程式は $\frac{p}{a^2}x + qy = 1$ であるから、法線ベクトルの一つは $\vec{n} = \left(\frac{p}{a^2}, q\right)$ である。 これを元に、接線 $l$ の方向ベクトルを $\vec{d_1} = (a^2 q, -p)$ とする。 また、直線 $BA$ の方向ベクトルを $\vec{v} = (a - p, -q)$ とし、直線 $x = p$ の方向ベクトルを $\vec{d_2} = (0, 1)$ とする。
$l$ と直線 $x = p$ のなす鋭角 $\phi$ について、以下の式が成り立つ。
$$ \cos \phi = \frac{|\vec{d_1} \cdot \vec{d_2}|}{|\vec{d_1}||\vec{d_2}|} = \frac{|-p|}{\sqrt{a^4 q^2 + p^2}} $$
$l$ と直線 $BA$ のなす鋭角 $\theta$ について、以下の式が成り立つ。
$$ \cos \theta = \frac{|\vec{d_1} \cdot \vec{v}|}{|\vec{d_1}||\vec{v}|} = \frac{|a^2 q(a - p) + pq|}{\sqrt{a^4 q^2 + p^2}\sqrt{(a - p)^2 + q^2}} $$
$\theta = \phi$ より $\cos \theta = \cos \phi$ であるから、分母の共通部分を払うと以下の式を得る。
$$ \frac{q|a^2(a - p) + p|}{\sqrt{(a - p)^2 + q^2}} = |p| $$
解法1と同様に $a^2(a - p) + p = a^3 - a^2 p + p > 0$ であるから、絶対値を外して両辺を2乗する。
$$ q^2(a^3 - a^2 p + p)^2 = p^2 \{ (a - p)^2 + q^2 \} $$
$q^2 = \frac{a^2 - p^2}{a^2}$ を代入し、両辺に $a^2$ をかける。
$$ (a^2 - p^2)(a^3 - a^2 p + p)^2 = p^2 \{ a^2(a - p)^2 + a^2 - p^2 \} $$
右辺を共通因数 $(a - p)$ でくくる。
$$ \begin{aligned} \text{右辺} &= p^2 \{ a^2(a - p)^2 + (a - p)(a + p) \} \\ &= p^2(a - p) \{ a^2(a - p) + a + p \} \\ &= p^2(a - p)(a^3 - a^2 p + a + p) \end{aligned} $$
左辺は $(a - p)(a + p)(a^3 - a^2 p + p)^2$ であるから、両辺を $a - p > 0$ で割る。
$$ (a + p)(a^3 - a^2 p + p)^2 = p^2(a^3 - a^2 p + a + p) $$
ここで計算の工夫として、$A = a^3 - a^2 p + p$ とおくと、右辺の括弧内は $A + a$ と表せる。
$$ (a + p)A^2 = p^2(A + a) $$
これを $A$ について整理し、因数分解する。
$$ \begin{aligned} (a + p)A^2 - p^2 A - ap^2 &= 0 \\ (A - p)\{ (a + p)A + ap \} &= 0 \end{aligned} $$
$A - p = a^3 - a^2 p = a^2(a - p) > 0$ より $A \neq p$ であるから、以下の関係が成り立つ。
$$ (a + p)A + ap = 0 $$
$A = a^3 - a^2 p + p$ を元に戻して展開する。
$$ (a + p)(a^3 - a^2 p + p) + ap = 0 $$
$$ a^4 - a^3 p + ap + a^3 p - a^2 p^2 + p^2 + ap = 0 $$
$$ a^4 - (a^2 - 1)p^2 + 2ap = 0 $$
$$ (a^2 - 1)p^2 - 2ap - a^4 = 0 $$
この方程式を解くと $p = \frac{a(1 \pm \sqrt{a^4 - a^2 + 1})}{a^2 - 1}$ を得る。 プラスの解は $p > a$ となってしまい、点 $B$ が楕円上にある条件 $-a < p < a$ に反するため不適である。 よってマイナスの解が適する。
解説
(1)は、なす角を等式化する際に、法線ベクトルから $\cos$ を求めるアプローチと、傾きから $\tan$ の加法定理を利用するアプローチが考えられる。ベクトルの内積計算(解法2)では、2乗した後の高次方程式の処理に工夫(置き換えによる因数分解)が求められる。一方、$\tan$ を用いる解法(解法1)では、絶対値の処理と場合分けが適切にできれば、計算量は比較的少なくて済む。
(2)の極限計算では、(1)で得られた答えの形そのままだと不定形となり見通しが悪い。そこで、分子の根号を解消するように有理化を行うのが定石である。これにより極限は容易に求まる。
答え
(1)
$$ p = \frac{a(1 - \sqrt{a^4 - a^2 + 1})}{a^2 - 1} $$
(2)
(1) で求めた $p$ の式の分子を有理化すると、
$$ \begin{aligned} p &= \frac{a(1 - \sqrt{a^4 - a^2 + 1})}{a^2 - 1} \\ &= \frac{a \{ 1 - (a^4 - a^2 + 1) \}}{(a^2 - 1)(1 + \sqrt{a^4 - a^2 + 1})} \\ &= \frac{a(a^2 - a^4)}{(a^2 - 1)(1 + \sqrt{a^4 - a^2 + 1})} \\ &= \frac{-a^3(a^2 - 1)}{(a^2 - 1)(1 + \sqrt{a^4 - a^2 + 1})} \\ &= \frac{-a^3}{1 + \sqrt{a^4 - a^2 + 1}} \end{aligned} $$
となる。これを用いて極限を計算する。
$$ \lim_{a \to 1} p = \lim_{a \to 1} \frac{-a^3}{1 + \sqrt{a^4 - a^2 + 1}} = \frac{-1}{1 + \sqrt{1 - 1 + 1}} = -\frac{1}{2} $$
$$ \begin{aligned} \lim_{a \to \infty} \frac{p}{a} &= \lim_{a \to \infty} \frac{-a^2}{1 + \sqrt{a^4 - a^2 + 1}} \\ &= \lim_{a \to \infty} \frac{-1}{\frac{1}{a^2} + \sqrt{1 - \frac{1}{a^2} + \frac{1}{a^4}}} \\ &= \frac{-1}{0 + \sqrt{1 - 0 + 0}} \\ &= -1 \end{aligned} $$
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