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東京大学 1970年 文系 第2問 解説

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東京大学 1970年 文系 第2問 解説

方針・初手

座標平面上の2点を見込む角($\angle APB$)の条件から、$x$ を含む不等式を立てる。直角三角形の辺の比を用いて正接($\tan$)の加法定理を利用するか、ベクトルの内積を用いて余弦($\cos$)を計算するのが定石である。本問は各点が $y$ 軸上にあり、直角三角形を利用しやすいため、正接の加法定理を用いると計算が容易になる。

解法1

原点を $O$ とし、$\angle APO = \alpha$、$\angle BPO = \beta$ とおく。

直角三角形 $APO$ および $BPO$ に着目すると、点 $P$ の $x$ 座標は $x > 0$ であるから、

$$ \tan \alpha = \frac{OA}{OP} = \frac{1}{x} $$

$$ \tan \beta = \frac{OB}{OP} = \frac{11}{x} $$

となる。$x>0$ より、角度の範囲は $0^{\circ} < \alpha < \beta < 90^{\circ}$ である。 ここで $\angle APB = \beta - \alpha$ であるから、正接の加法定理を用いると、

$$ \tan \angle APB = \tan (\beta - \alpha) = \frac{\tan \beta - \tan \alpha}{1 + \tan \beta \tan \alpha} $$

$$ \tan \angle APB = \frac{\frac{11}{x} - \frac{1}{x}}{1 + \frac{11}{x} \cdot \frac{1}{x}} = \frac{\frac{10}{x}}{\frac{x^2 + 11}{x^2}} = \frac{10x}{x^2 + 11} $$

$\angle APB < \beta < 90^{\circ}$ より、$\angle APB$ は鋭角である。 $y = \tan \theta$ は $0^{\circ} < \theta < 90^{\circ}$ において単調増加であるため、$\angle APB \geqq 30^{\circ}$ となるための条件は、

$$ \tan \angle APB \geqq \tan 30^{\circ} = \frac{1}{\sqrt{3}} $$

すなわち、

$$ \frac{10x}{x^2 + 11} \geqq \frac{1}{\sqrt{3}} $$

$x^2 + 11 > 0$ であるから、両辺に $\sqrt{3}(x^2 + 11)$ を掛けて整理すると、

$$ 10\sqrt{3}x \geqq x^2 + 11 $$

$$ x^2 - 10\sqrt{3}x + 11 \leqq 0 $$

二次方程式 $x^2 - 10\sqrt{3}x + 11 = 0$ を解くと、

$$ x = 5\sqrt{3} \pm \sqrt{(5\sqrt{3})^2 - 11} = 5\sqrt{3} \pm \sqrt{75 - 11} = 5\sqrt{3} \pm \sqrt{64} = 5\sqrt{3} \pm 8 $$

したがって、求める $x$ の範囲は、

$$ 5\sqrt{3} - 8 \leqq x \leqq 5\sqrt{3} + 8 $$

ここで、$5\sqrt{3} = \sqrt{75} > \sqrt{64} = 8$ より、$5\sqrt{3} - 8 > 0$ であり、$x>0$ の条件を満たしている。

解法2

$\overrightarrow{PA}$ と $\overrightarrow{PB}$ の内積を用いて、$\angle APB = \theta$ についての不等式を立てる。

$$ \overrightarrow{PA} = (0 - x, 1 - 0) = (-x, 1) $$

$$ \overrightarrow{PB} = (0 - x, 11 - 0) = (-x, 11) $$

ベクトルの内積と大きさはそれぞれ、

$$ \overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PB} = (-x)(-x) + 1 \cdot 11 = x^2 + 11 $$

$$ |\overrightarrow{PA}| = \sqrt{(-x)^2 + 1^2} = \sqrt{x^2 + 1} $$

$$ |\overrightarrow{PB}| = \sqrt{(-x)^2 + 11^2} = \sqrt{x^2 + 121} $$

これらより、内積の定義から $\cos \theta$ を求めると、

$$ \cos \theta = \frac{\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PB}}{|\overrightarrow{PA}| |\overrightarrow{PB}|} = \frac{x^2 + 11}{\sqrt{x^2 + 1}\sqrt{x^2 + 121}} $$

$x > 0$ のとき $\cos \theta > 0$ であり、$\theta$ は三角形の内角より $0^{\circ} < \theta < 180^{\circ}$ であるから、$\theta$ は鋭角($0^{\circ} < \theta < 90^{\circ}$)である。 $y = \cos \theta$ は $0^{\circ} < \theta < 90^{\circ}$ において単調減少であるため、$\theta \geqq 30^{\circ}$ となる条件は、

$$ \cos \theta \leqq \cos 30^{\circ} = \frac{\sqrt{3}}{2} $$

よって、

$$ \frac{x^2 + 11}{\sqrt{x^2 + 1}\sqrt{x^2 + 121}} \leqq \frac{\sqrt{3}}{2} $$

両辺ともに正であるから、両辺を2乗して分母を払って整理する。

$$ \frac{(x^2 + 11)^2}{(x^2 + 1)(x^2 + 121)} \leqq \frac{3}{4} $$

$$ 4(x^4 + 22x^2 + 121) \leqq 3(x^4 + 122x^2 + 121) $$

$$ 4x^4 + 88x^2 + 484 \leqq 3x^4 + 366x^2 + 363 $$

$$ x^4 - 278x^2 + 121 \leqq 0 $$

ここで $t = x^2$ $(t > 0)$ とおくと、

$$ t^2 - 278t + 121 \leqq 0 $$

方程式 $t^2 - 278t + 121 = 0$ の解は、

$$ t = 139 \pm \sqrt{139^2 - 121} = 139 \pm \sqrt{19321 - 121} = 139 \pm \sqrt{19200} $$

$\sqrt{19200} = \sqrt{6400 \times 3} = 80\sqrt{3}$ であるから、$t = 139 \pm 80\sqrt{3}$。 したがって、$t$ の範囲は、

$$ 139 - 80\sqrt{3} \leqq t \leqq 139 + 80\sqrt{3} $$

$x > 0$ より $x = \sqrt{t}$ であるから、両端の平方根をとる。2重根号を外す処理を行うと、

$$ \sqrt{139 \pm 80\sqrt{3}} = \sqrt{139 \pm 2\sqrt{4800}} $$

足して $139$、掛けて $4800$ となる2数を探すと $75$ と $64$ であるから、

$$ \sqrt{139 \pm 2\sqrt{4800}} = \sqrt{75} \pm \sqrt{64} = 5\sqrt{3} \pm 8 $$

したがって、求める範囲は

$$ 5\sqrt{3} - 8 \leqq x \leqq 5\sqrt{3} + 8 $$

解説

見込む角の最大・最小や不等式を扱う典型問題である。解法に示した通り、直角三角形の辺の長さが扱いやすい場合は正接($\tan$)の加法定理を用いるのが定石である。ベクトルの内積($\cos$)を用いると、本問のように途中の計算で大きな数の2乗や2重根号を外す処理が生じるため、計算ミスを誘発しやすい。

また、不等式を解くにあたって、対象となる角が鋭角であるか鈍角であるかを確認し、三角関数の単調性の向き($\tan$ ならそのまま、$\cos$ なら不等号が逆転する)に注意する必要がある。

答え

$$ 5\sqrt{3} - 8 \leqq x \leqq 5\sqrt{3} + 8 $$

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