東京大学 1970年 文系 第3問 解説

方針・初手
地点 $P$ を原点とし、$P$ から $Q$ に向かう方向を正の向きとする座標軸を設定する。各時刻 $t$ における $A$ および $B$ の位置(座標)を式で表すことが第一歩である。
位置は速度を時間で積分し、初期位置を加えることで得られる。条件「$B$ が $Q$ にかえる」から該当する時刻の範囲を求め、その範囲内で「$A$ が $B$ に出会うか追いつく」という条件を、位置の大小関係の不等式として立式する。立式後は、$u$ についての定数分離を行い、関数の最小値を求める問題に帰着させる。
解法1
地点 $P$ を原点とし、$P$ から $Q$ に向かう方向を正の向きとする数直線を考える。 $P, Q$ は $25$ m 隔てているため、$Q$ の座標は $25$ となる。 時刻 $t$ における $A, B$ の座標をそれぞれ $x_A(t), x_B(t)$ とおく。 初期条件より、$x_A(0) = 0, x_B(0) = 25$ である。
$A$ は一定の速度 $u$ で進むため、
$$ x_A(t) = \int_0^t u \, ds = ut $$
$B$ の速度は $v = \frac{3}{4}t^2 - 3t$ であるため、
$$ x_B(t) = 25 + \int_0^t \left( \frac{3}{4}s^2 - 3s \right) ds = \frac{1}{4}t^3 - \frac{3}{2}t^2 + 25 $$
まず、$B$ が $Q$ にかえる時刻を求める。これは $x_B(t) = 25$ かつ $t > 0$ となる時刻である。
$$ \frac{1}{4}t^3 - \frac{3}{2}t^2 + 25 = 25 $$
$$ \frac{1}{4}t^2(t - 6) = 0 $$
$t > 0$ より $t = 6$ である。すなわち、$0 \leqq t \leqq 6$ の範囲での運動を考えればよい。
次に、「$A$ が $B$ に出会うかまたは追いつく」ための条件を考える。 これは、$0 < t \leqq 6$ の範囲において、$x_A(t) \geqq x_B(t)$ となる時刻 $t$ が少なくとも1つ存在することと同値である。
$$ ut \geqq \frac{1}{4}t^3 - \frac{3}{2}t^2 + 25 $$
$t > 0$ であるから、両辺を $t$ で割ると次のように定数分離できる。
$$ u \geqq \frac{1}{4}t^2 - \frac{3}{2}t + \frac{25}{t} $$
この不等式を満たす $t$ が $0 < t \leqq 6$ に存在するためには、$u$ が右辺の関数の最小値以上であればよい。 右辺を $g(t)$ とおき、微分して増減を調べる。
$$ g'(t) = \frac{1}{2}t - \frac{3}{2} - \frac{25}{t^2} = \frac{t^3 - 3t^2 - 50}{2t^2} $$
分子の関数を $h(t) = t^3 - 3t^2 - 50$ とおく。
$$ h'(t) = 3t^2 - 6t = 3t(t - 2) $$
$t > 0$ の範囲で $h(t)$ の増減を考えると、$0 < t < 2$ で単調減少、$t > 2$ で単調増加する。 極小値は $h(2) = 8 - 12 - 50 = -54 < 0$ であり、$h(5) = 125 - 75 - 50 = 0$ となる。 したがって、$t > 0$ における $h(t) = 0$ の解は $t = 5$ のみである。
これにより、$g'(t)$ は $0 < t < 5$ で負、$t > 5$ で正となるため、$g(t)$ は $t=5$ において極小かつ最小となる。$t=5$ は区間 $0 < t \leqq 6$ に含まれている。 最小値 $g(5)$ を計算する。
$$ g(5) = \frac{1}{4} \cdot 25 - \frac{3}{2} \cdot 5 + \frac{25}{5} = \frac{25 - 30 + 20}{4} = \frac{15}{4} $$
以上より、求める条件は $u \geqq \frac{15}{4}$ となる。
解法2
時刻 $t$ における $A, B$ の位置 $x_A(t), x_B(t)$ と、$B$ が $Q$ にかえる時刻が $t=6$ であることは解法1と同様に求める。
$t-x$ 平面において、曲線 $C: x = x_B(t)$ と直線 $L: x = x_A(t) = ut$ の位置関係を考える。 $A$ が $B$ に出会うか追いつく条件は、$0 < t \leqq 6$ において、直線 $L$ が曲線 $C$ と交点を持つ、または曲線 $C$ よりも上側($x$ が大きい側)にあることである。
曲線 $C$ の式は $x = \frac{1}{4}t^3 - \frac{3}{2}t^2 + 25$ である。 これを $t$ について2階微分して凹凸を調べる。
$$ x_B'(t) = \frac{3}{4}t^2 - 3t $$
$$ x_B''(t) = \frac{3}{2}t - 3 = \frac{3}{2}(t - 2) $$
$t > 2$ において $x_B''(t) > 0$ となるため、この区間で曲線 $C$ は下に凸である。 直線 $L$ は原点を通る傾き $u$ の直線である。傾き $u$ が小さいうちは $L$ は $C$ の下側にあり共有点を持たないが、$u$ を大きくしていくと、ある時刻 $t=s$ ($s > 2$) で曲線 $C$ に接し、それ以上であれば共有点を持つ。
曲線 $C$ 上の点 $(s, x_B(s))$ における接線の方程式は、
$$ x - \left(\frac{1}{4}s^3 - \frac{3}{2}s^2 + 25\right) = \left(\frac{3}{4}s^2 - 3s\right)(t - s) $$
この接線が原点 $(0, 0)$ を通るため、代入して整理する。
$$ -\left(\frac{1}{4}s^3 - \frac{3}{2}s^2 + 25\right) = -s\left(\frac{3}{4}s^2 - 3s\right) $$
$$ \frac{1}{4}s^3 - \frac{3}{2}s^2 + 25 = \frac{3}{4}s^3 - 3s^2 $$
$$ \frac{1}{2}s^3 - \frac{3}{2}s^2 - 25 = 0 $$
$$ s^3 - 3s^2 - 50 = 0 $$
因数定理より $(s - 5)(s^2 + 2s + 10) = 0$ となり、$s$ は実数であるから $s = 5$ を得る。 この接点は区間 $0 < t \leqq 6$ に存在する。
$s=5$ のときの接線の傾きは、
$$ x_B'(5) = \frac{3}{4} \cdot 25 - 3 \cdot 5 = \frac{75 - 60}{4} = \frac{15}{4} $$
曲線 $C$ は $t > 2$ で下に凸であるため、直線 $L$ が曲線 $C$ と $0 < t \leqq 6$ の範囲で共有点を持つための条件は、直線 $L$ の傾き $u$ が接線の傾き以上になることである。
よって、$u \geqq \frac{15}{4}$ である。
解説
物体の運動を微積分を用いて数式化する、数学と物理の融合問題の典型例である。 「速度を積分すると位置の変位になる」という基本に立ち返り、初期位置を足し合わせて正しい位置の関数を作る手順が不可欠である。
「出会う・追いつく」という事象を $x_A(t) \geqq x_B(t)$ という不等式で捉え直すことが最大の山場となる。定数 $u$ を含む不等式の成立条件を調べる際は、解法1のように定数分離($u \geqq g(t)$ の形に変形)を行うのが見通しの良い定石である。$g(t)$ の微分の過程でさらに3次方程式の解を求める必要があるが、落ち着いて微分と因数定理を活用すれば無理なく突破できる。解法2のようなグラフの接線を用いた視覚的解釈も、定数分離の計算結果を裏付ける有用な視点である。
答え
$$ \frac{15}{4} \text{ 以上} $$
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