東京大学 1973年 文系 第1問 解説

方針・初手
正方形 $S$ を座標平面上に適切に配置し、点 $P$ の座標を変数として設定することで、共通部分の面積を数式で表す。計算を簡単にするため、正方形 $S$ の中心を原点 $(0, 0)$ に設定するのがよい。これにより、図形の対称性を最大限に活かすことができ、第1象限についてのみ考えて後から全体へ拡張するというアプローチが取れる。
解法1
座標平面において、正方形 $S$ の中心が原点 $(0,0)$ に一致し、各辺が座標軸に平行となるように配置する。 このとき、正方形 $S$ は以下の領域として表される。
$$ S = \left\{ (X, Y) \ \middle| \ -\frac{1}{2} \leqq X \leqq \frac{1}{2}, \ -\frac{1}{2} \leqq Y \leqq \frac{1}{2} \right\} $$
点 $P$ の座標を $(x, y)$ とおく。 正方形 $T(P)$ は $S$ を $X$ 軸方向に $x$、$Y$ 軸方向に $y$ だけ平行移動したものであり、その中心は $P(x,y)$ となる。したがって、$T(P)$ は以下の領域となる。
$$ T(P) = \left\{ (X, Y) \ \middle| \ x-\frac{1}{2} \leqq X \leqq x+\frac{1}{2}, \ y-\frac{1}{2} \leqq Y \leqq y+\frac{1}{2} \right\} $$
共通部分 $S \cap T(P)$ の面積を $U$ とする。 正方形 $S$ と $T(P)$ の配置の対称性から、$x \geqq 0$ かつ $y \geqq 0$ (第1象限および境界上)の場合について考えれば十分である。
$x \geqq 0, \ y \geqq 0$ のとき、$S$ と $T(P)$ が共通部分をもつ(面積が正になる)ための条件は、それぞれの区間の重なりを考えて、
$$ x - \frac{1}{2} < \frac{1}{2} \quad \text{かつ} \quad y - \frac{1}{2} < \frac{1}{2} $$
すなわち $0 \leqq x < 1$ かつ $0 \leqq y < 1$ である。 このとき、共通部分 $S \cap T(P)$ もまた長方形となり、その $X$ 方向の辺の長さと $Y$ 方向の辺の長さはそれぞれ次のようになる。
$$ \begin{aligned} (X\text{方向の長さ}) &= \frac{1}{2} - \left(x - \frac{1}{2}\right) = 1 - x \\ (Y\text{方向の長さ}) &= \frac{1}{2} - \left(y - \frac{1}{2}\right) = 1 - y \end{aligned} $$
よって、共通部分の面積 $U$ は次のように表される。
$$ U = (1 - x)(1 - y) $$
条件より $U \geqq \frac{1}{2}$ であるから、
$$ (1 - x)(1 - y) \geqq \frac{1}{2} $$
ここで $0 \leqq x < 1$ であるから $1 - x > 0$ であり、両辺を $1 - x$ で割って整理すると、
$$ 1 - y \geqq \frac{1}{2(1 - x)} $$
$$ y \leqq 1 - \frac{1}{2(1 - x)} $$
また、$y \geqq 0$ であるためには、
$$ 1 - \frac{1}{2(1 - x)} \geqq 0 $$
$$ 1 \geqq \frac{1}{2(1 - x)} $$
$$ 2(1 - x) \geqq 1 $$
$$ x \leqq \frac{1}{2} $$
を満たす必要がある。 したがって、第1象限における点 $P(x,y)$ の存在範囲は、
$$ 0 \leqq x \leqq \frac{1}{2} \quad \text{かつ} \quad 0 \leqq y \leqq 1 - \frac{1}{2(1 - x)} $$
となる。境界線の曲線 $y = 1 - \frac{1}{2(1 - x)}$ は、双曲線 $y = \frac{1}{2x}$ を $x$ 軸方向に $1$、$y$ 軸方向に $1$ だけ平行移動したものであり、2点 $\left(\frac{1}{2}, 0\right), \left(0, \frac{1}{2}\right)$ を通る。
一般の点 $P(x,y)$ については、上の条件の $x$ を $|x|$ に、$y$ を $|y|$ に置き換えた不等式 $(1 - |x|)(1 - |y|) \geqq \frac{1}{2}$ を満たす領域となる。これは第1象限で求めた領域を、$x$ 軸、$y$ 軸、原点に関してそれぞれ対称移動した図形である。
解説
図形の移動に関する問題では、自ら適切な座標軸を設定し、条件を数式に翻訳して処理することが定石である。本問では正方形の中心を原点に置くことで、共通部分の縦横の長さを絶対値(あるいは対称性を利用して第1象限に限定)を用いて簡潔に表すことができる。
対称性から第1象限のみを調べるアプローチは、場合分けの煩雑さを大きく軽減するため非常に有効である。最後に図示する際は、境界線が双曲線の一部であること、および領域の頂点となる座標を明確に示すことが求められる。
答え
点 $P$ を座標平面上の点 $(x,y)$ としたとき、点 $P$ の存在範囲は不等式
$$ (1 - |x|)(1 - |y|) \geqq \frac{1}{2} \quad (\text{ただし } |x| < 1, |y| < 1) $$
を満たす領域である。 図示すると、4点 $\left(\frac{1}{2}, 0\right), \left(0, \frac{1}{2}\right), \left(-\frac{1}{2}, 0\right), \left(0, -\frac{1}{2}\right)$ を頂点としてもつ手裏剣のような形をした閉領域となる。 境界線は、第1象限においては双曲線 $y = 1 - \frac{1}{2(1 - x)}$ の一部であり、他の象限についてはそれを $x$ 軸、$y$ 軸、原点に関して対称移動した曲線である。領域は境界線をすべて含む。
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