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東京大学 1983年 文系 第2問 解説

数学C/空間ベクトル数学1/立体図形テーマ/空間図形テーマ/最大・最小
東京大学 1983年 文系 第2問 解説

方針・初手

空間座標を導入し、平面の方程式を立てて代数的に処理する方法と、地形図のように等高線を考えて幾何的に処理する方法がある。 東西方向と南北方向が直交していることを利用し、勾配をベクトルの成分や直角三角形の辺の比として捉えるのが定石である。

解法1

空間座標を設定する。東西方向を $x$ 軸、南北方向を $y$ 軸、鉛直方向を $z$ 軸とする。 傾いた平面の方程式を

$$ z = ax + by + c $$

とおく。 この平面上において、$x$ 方向(東西方向)の勾配の大きさは $|a|$、$y$ 方向(南北方向)の勾配の大きさは $|b|$ である。 また、任意の方向ベクトル $\vec{v} = (\cos\theta, \sin\theta)$ を考えたとき、その方向への勾配(方向微分係数)は $a\cos\theta + b\sin\theta$ となる。 この勾配が最大となるのは、コーシー・シュワルツの不等式または三角関数の合成より

$$ \sqrt{a^2 + b^2} $$

である。これが「もっとも急な方向の勾配」である。 問題の条件より、もっとも急な方向の勾配が $\frac{1}{3}$ であるから、

$$ \sqrt{a^2 + b^2} = \frac{1}{3} $$

$$ a^2 + b^2 = \frac{1}{9} $$

が成り立つ。 次に、南北方向の勾配が $\frac{1}{5}$ であるから、

$$ |b| = \frac{1}{5} $$

$$ b^2 = \frac{1}{25} $$

である。 求めるものは東西方向の勾配 $|a|$ である。上の2式から $b^2$ を消去すると、

$$ a^2 = \frac{1}{9} - \frac{1}{25} $$

$$ a^2 = \frac{25 - 9}{225} = \frac{16}{225} $$

したがって、東西方向の勾配は

$$ |a| = \frac{4}{15} $$

となる。

解法2

空間内に水平面 $\alpha$ を考え、傾いた平面 $\beta$ との交線(高さ0の等高線)を $l$ とする。 平面 $\beta$ 上に点 $\mathrm{P}$ をとり、$\mathrm{P}$ から水平面 $\alpha$ に下ろした垂線の足を $\mathrm{H}$ とし、$\mathrm{PH} = h$ $(h > 0)$ とする。 点 $\mathrm{H}$ から交線 $l$ に下ろした垂線の足を $\mathrm{K}$ とすると、三垂線の定理より $\mathrm{PK} \perp l$ となる。 平面 $\beta$ 上で最も急な方向は、等高線 $l$ と直交する直線 $\mathrm{PK}$ の方向であるから、最も急な方向の勾配は $\frac{\mathrm{PH}}{\mathrm{HK}}$ で与えられる。 条件よりこれが $\frac{1}{3}$ であるから、

$$ \frac{h}{\mathrm{HK}} = \frac{1}{3} $$

$$ \mathrm{HK} = 3h $$

となる。 次に、点 $\mathrm{H}$ を通り南北方向に平行な直線と、東西方向に平行な直線をそれぞれ引き、交線 $l$ との交点を $\mathrm{N}$、$\mathrm{E}$ とする。 南北方向の勾配が $\frac{1}{5}$ であることは、線分 $\mathrm{PN}$ の勾配が $\frac{1}{5}$ であることに対応するから、

$$ \frac{\mathrm{PH}}{\mathrm{HN}} = \frac{1}{5} $$

$$ \mathrm{HN} = 5h $$

となる。 東西方向と南北方向は直交するため、$\triangle \mathrm{HNE}$ は $\angle \mathrm{NHE} = 90^\circ$ の直角三角形である。 点 $\mathrm{H}$ から斜辺 $\mathrm{NE}$(交線 $l$)に下ろした垂線が $\mathrm{HK}$ であるため、直角三角形の面積を2通りに表すことにより

$$ \frac{1}{2} \cdot \mathrm{HN} \cdot \mathrm{HE} = \frac{1}{2} \cdot \mathrm{NE} \cdot \mathrm{HK} $$

が成り立つ。両辺を2乗して三平方の定理 $\mathrm{NE}^2 = \mathrm{HN}^2 + \mathrm{HE}^2$ を用いると、

$$ \mathrm{HN}^2 \cdot \mathrm{HE}^2 = (\mathrm{HN}^2 + \mathrm{HE}^2) \cdot \mathrm{HK}^2 $$

両辺を $\mathrm{HN}^2 \cdot \mathrm{HE}^2 \cdot \mathrm{HK}^2$ で割ると、次の関係式が得られる。

$$ \frac{1}{\mathrm{HK}^2} = \frac{1}{\mathrm{HN}^2} + \frac{1}{\mathrm{HE}^2} $$

これに $\mathrm{HK} = 3h$、$\mathrm{HN} = 5h$ を代入すると、

$$ \frac{1}{9h^2} = \frac{1}{25h^2} + \frac{1}{\mathrm{HE}^2} $$

$$ \frac{1}{\mathrm{HE}^2} = \frac{1}{9h^2} - \frac{1}{25h^2} = \frac{16}{225h^2} $$

ゆえに、$\mathrm{HE} > 0$ より $\mathrm{HE} = \frac{15}{4}h$ となる。 求める東西方向の勾配は、

$$ \frac{\mathrm{PH}}{\mathrm{HE}} = \frac{h}{\frac{15}{4}h} = \frac{4}{15} $$

となる。

解説

勾配(傾き)をどのように数学的モデルに落とし込むかが問われる問題である。 解法1のように空間座標を導入し、平面の方程式の $x, y$ の係数がそれぞれ東西・南北方向の勾配を表すこと、そして「最も急な勾配」が法線ベクトルの水平成分の大きさ(あるいは方向微分の最大値)に一致することを知っていれば、瞬時に立式できる。 解法2のような幾何的考察は、地形図の等高線をイメージすると分かりやすい。「もっとも急な方向」が「等高線と直交する方向」であることを三垂線の定理から確認できる。$\frac{1}{\mathrm{HK}^2} = \frac{1}{\mathrm{HN}^2} + \frac{1}{\mathrm{HE}^2}$ という直角三角形の垂線の長さに関する関係式は、図形問題において見通しを良くする有用な性質である。

答え

$$ \frac{4}{15} $$

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