東京大学 2019年 文系 第4問 解説

方針・初手
領域 $D$ が表す不等式 $|x| + |y| \leqq 1$ を、和 $x+y$ と差 $x-y$ の連立不等式として捉え直すことで、各変数が独立に動く範囲を求める。領域 $F$ については、領域 $D$ を平行移動したものであることに着目し、ベクトルの差を計算することで、平行移動の影響が相殺されることを示す。
解法1
(1)
点 $P, Q$ の座標をそれぞれ $(x_1, y_1), (x_2, y_2)$ とすると、これらは領域 $D$ 上にあるため、以下の不等式を満たす。
$$ |x_1| + |y_1| \leqq 1 $$
$$ |x_2| + |y_2| \leqq 1 $$
点 $R(x, y)$ とすると、$\overrightarrow{OR} = \overrightarrow{OP} - \overrightarrow{OQ}$ より、各成分について以下が成り立つ。
$$ x = x_1 - x_2, \quad y = y_1 - y_2 $$
ここで、任意の $x, y$ に対して $\max(|x+y|, |x-y|) = |x| + |y|$ が成り立つため、不等式 $|x_1| + |y_1| \leqq 1$ は以下の2つの不等式と同値である。
$$ -1 \leqq x_1 + y_1 \leqq 1 \quad \text{かつ} \quad -1 \leqq x_1 - y_1 \leqq 1 $$
同様に、点 $Q$ についても以下が成り立つ。
$$ -1 \leqq x_2 + y_2 \leqq 1 \quad \text{かつ} \quad -1 \leqq x_2 - y_2 \leqq 1 $$
点 $R$ の座標 $(x, y)$ の和 $x+y$ と差 $x-y$ について考える。
$$ x + y = (x_1 + y_1) - (x_2 + y_2) $$
$x_1 + y_1$ と $x_2 + y_2$ はそれぞれ独立に $-1$ 以上 $1$ 以下の範囲を動く。したがって、これらの差である $x + y$ のとりうる値の範囲は、最小値が $-1 - 1 = -2$、最大値が $1 - (-1) = 2$ となる。
$$ -2 \leqq x + y \leqq 2 $$
同様に、$x - y = (x_1 - y_1) - (x_2 - y_2)$ についても、各項が独立に $-1$ 以上 $1$ 以下の範囲を動くため、以下が成り立つ。
$$ -2 \leqq x - y \leqq 2 $$
これらの範囲を同時に満たす領域が $E$ であり、先ほどと同様の絶対値の性質を用いると、1つの不等式にまとめることができる。
$$ |x| + |y| \leqq 2 $$
以上より、領域 $D$ は4点 $(1,0), (0,1), (-1,0), (0,-1)$ を頂点とする正方形の周および内部であり、領域 $E$ は4点 $(2,0), (0,2), (-2,0), (0,-2)$ を頂点とする正方形の周および内部である。図示するとこれらが描かれる。
(2)
領域 $F$ を表す不等式 $|x - a| + |y - b| \leqq 1$ は、点 $(x, y)$ が領域 $D$ を $x$ 軸方向に $a$、$y$ 軸方向に $b$ だけ平行移動した領域にあることを示している。
ベクトル $\vec{c} = (a, b)$ とおく。領域 $F$ 上の点 $S, T$ に対して、
$$ \overrightarrow{OS'} = \overrightarrow{OS} - \vec{c}, \quad \overrightarrow{OT'} = \overrightarrow{OT} - \vec{c} $$
によって点 $S', T'$ を定めると、点 $S, T$ が領域 $F$ を動くとき、点 $S', T'$ は領域 $D$ 全体を動く。
このとき、点 $U$ の位置ベクトル $\overrightarrow{OU}$ は以下のように変形できる。
$$ \overrightarrow{OU} = \overrightarrow{OS} - \overrightarrow{OT} $$
$$ \overrightarrow{OU} = \left( \overrightarrow{OS'} + \vec{c} \right) - \left( \overrightarrow{OT'} + \vec{c} \right) $$
$$ \overrightarrow{OU} = \overrightarrow{OS'} - \overrightarrow{OT'} $$
点 $S', T'$ は領域 $D$ 全体を動くため、この式の形は (1) における $\overrightarrow{OR} = \overrightarrow{OP} - \overrightarrow{OQ}$ (ただし $P, Q$ は領域 $D$ を動く)と全く同じである。
したがって、$\overrightarrow{OS'} - \overrightarrow{OT'}$ が表す点の動く範囲は (1) で求めた $E$ と一致し、点 $U$ が動く範囲 $G$ も $E$ と一致することが示された。
解法2
(1)の別解
領域 $D$ は、原点を中心とする4点 $(1,0), (0,1), (-1,0), (0,-1)$ を頂点とする正方形の周および内部である。
関係式 $\overrightarrow{OR} = \overrightarrow{OP} - \overrightarrow{OQ}$ について、まず点 $Q$ を領域 $D$ 内の定点として固定して考える。
このとき、$\overrightarrow{OR} = \overrightarrow{OP} + (-\overrightarrow{OQ})$ と表せるため、点 $P$ が領域 $D$ 全体を動くとき、点 $R$ の描く領域は「領域 $D$ 全体をベクトル $-\overrightarrow{OQ}$ だけ平行移動した図形」となる。
次に、固定していた点 $Q$ を領域 $D$ 全体で動かす。領域 $D$ は原点対称な図形であるため、点 $Q$ が $D$ 全体を動くとき、原点対称な点 $-Q$ (ベクトル $-\overrightarrow{OQ}$ で表される点)も $D$ 全体を隈なく動く。
したがって、点 $R$ の動く範囲 $E$ は、「領域 $D$ を、その中心が領域 $D$ 内を動くように平行移動させたときの通過領域全体」となる。
領域 $D$ を、その中心が $D$ の頂点 $(\pm 1, 0), (0, \pm 1)$ に来るように平行移動させたときの図形を考え、それらを全て包含する輪郭を求めると、原点を中心とし、各頂点が $(2, 0), (0, 2), (-2, 0), (0, -2)$ となる正方形が得られる。
よって、領域 $E$ を表す不等式は $|x| + |y| \leqq 2$ である。
解説
(1) では、絶対値の不等式 $|x|+|y| \leqq 1$ を $-1 \leqq x+y \leqq 1$ かつ $-1 \leqq x-y \leqq 1$ と同値変形し、独立な変数 $x+y$ と $x-y$ の領域として扱うと整理しやすい。これにより、和や差の最大値・最小値から領域を論理の飛躍なく厳密に導出できる。解法2のように、ベクトルの和と平行移動(ミンコフスキー和)として図形的に捉える視点も、直感的な理解を助ける重要な考え方である。
(2) は、「図形の平行移動」をベクトルの加法として定式化することで、平行移動分が相殺されることを示す問題である。計算量は少ないが、式の意味を正確に把握し、論理的に記述する力が問われている。
答え
(1)
領域 $D$ は、4点 $(1,0), (0,1), (-1,0), (0,-1)$ を頂点とする正方形の周および内部である。
領域 $E$ は、4点 $(2,0), (0,2), (-2,0), (0,-2)$ を頂点とする正方形の周および内部である。
(以上の形状を $xy$ 平面上に図示する)
(2)
$G$ は $E$ と一致する。
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