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名古屋大学 2018年 文系 第1問 解説

数学2/図形と式数学C/平面ベクトルテーマ/軌跡・領域テーマ/面積・体積テーマ/不等式の証明
名古屋大学 2018年 文系 第1問 解説

方針・初手

問題の連立不等式が表す領域が三角形になる条件を考える問題である。固定された2直線が作る角の内部を、第3の直線 $ax+by=0$ が切り取って閉じた三角形を作る状況を数式化する。 まずは固定された2直線の交点を求め、第3の直線との交点が境界線のどの部分に存在すべきかを不等式で立式する。後半は、求めた交点座標からベクトルを用いて面積を計算し、不等式の証明へとつなげる。

解法1

(1)

与えられた3直線を以下のように定める。

$$ L_1: 3x + 2y + 4 = 0 $$

$$ L_2: x - 2y + 4 = 0 $$

$$ L_3: ax + by = 0 $$

$L_1$ と $L_2$ の交点を $P$ とすると、連立方程式を解いて $P(-2, 1)$ となる。 連立不等式 $3x + 2y + 4 \geqq 0$ かつ $x - 2y + 4 \geqq 0$ の表す領域を $D$ とする。 領域 $D$ の境界線のうち、$L_1$ 上の部分が満たすべき条件は、

$$ x - 2y + 4 \geqq 0 $$

$L_1$ の方程式より $y = -\frac{3}{2}x - 2$ であるから、これを代入して

$$ x - 2\left(-\frac{3}{2}x - 2\right) + 4 \geqq 0 \iff 4x + 8 \geqq 0 \iff x \geqq -2 $$

同様に、領域 $D$ の境界線のうち $L_2$ 上の部分が満たすべき条件は、

$$ 3x + 2y + 4 \geqq 0 $$

$L_2$ の方程式より $y = \frac{1}{2}x + 2$ であるから、これを代入して

$$ 3x + 2\left(\frac{1}{2}x + 2\right) + 4 \geqq 0 \iff 4x + 8 \geqq 0 \iff x \geqq -2 $$

以上より、領域 $D$ は頂点 $P(-2, 1)$ を持ち、$x \geqq -2$ の方向に広がる領域であることがわかる。

この領域 $D$ に $ax+by \geqq 0$ または $ax+by \leqq 0$ を加えた領域が三角形になるためには、直線 $L_3$ が $L_1, L_2$ とそれぞれ点 $P$ 以外の点で交わり、かつそれらの交点が $x > -2$ の範囲になければならない。

$L_1$ と $L_3$ の交点を $Q$ とする。 連立方程式 $3x+2y = -4$、$ax+by = 0$ を解くと、$3b-2a \neq 0$ のもとで

$$ Q\left( \frac{-4b}{3b-2a}, \frac{4a}{3b-2a} \right) $$

交点 $Q$ が $x > -2$ の範囲にある条件は

$$ \frac{-4b}{3b-2a} > -2 $$

$$ \frac{-4b + 2(3b-2a)}{3b-2a} > 0 $$

$$ \frac{2b - 4a}{3b-2a} > 0 \iff \frac{b - 2a}{3b - 2a} > 0 \iff \frac{2a - b}{2a - 3b} > 0 \quad \cdots \text{(i)} $$

次に、$L_2$ と $L_3$ の交点を $R$ とする。 連立方程式 $x-2y = -4$、$ax+by = 0$ を解くと、$b+2a \neq 0$ のもとで

$$ R\left( \frac{-4b}{2a+b}, \frac{4a}{2a+b} \right) $$

交点 $R$ が $x > -2$ の範囲にある条件は

$$ \frac{-4b}{2a+b} > -2 $$

$$ \frac{-4b + 2(2a+b)}{2a+b} > 0 $$

$$ \frac{4a - 2b}{2a+b} > 0 \iff \frac{2a - b}{2a + b} > 0 \quad \cdots \text{(ii)} $$

条件 (i) と (ii) が同時に成り立つことが求める条件である。

(ア) $2a - b > 0$ のとき (i), (ii) より $2a - 3b > 0$ かつ $2a + b > 0$ である。 これを $b$ について解くと $b < \frac{2}{3}a$ かつ $b > -2a$ となる。 これを満たす $b$ が存在するためには $-2a < \frac{2}{3}a \iff a > 0$ が必要である。

(イ) $2a - b < 0$ のとき (i), (ii) より $2a - 3b < 0$ かつ $2a + b < 0$ である。 これを $b$ について解くと $b > \frac{2}{3}a$ かつ $b < -2a$ となる。 これを満たす $b$ が存在するためには $\frac{2}{3}a < -2a \iff a < 0$ が必要である。

(ア), (イ) をまとめると、求める条件は

$$ (2a + b)(2a - 3b) > 0 $$

となる。(これは $(2a+b)(3b-2a) < 0$ と同値である。) この不等式が表す領域は、$ab$ 座標平面上において、2直線 $b = -2a$ と $b = \frac{2}{3}a$ によって分けられる4つの領域のうち、点 $(1, 0)$ および点 $(-1, 0)$ を含む領域である。境界線は含まない。

(2)

三角形の頂点は $P, Q, R$ である。頂点 $P$ を始点とするベクトル $\vec{PQ}$ と $\vec{PR}$ を求める。

$$ \begin{aligned} \vec{PQ} &= \left( \frac{-4b}{3b-2a} + 2, \frac{4a}{3b-2a} - 1 \right) = \left( \frac{2b-4a}{3b-2a}, \frac{6a-3b}{3b-2a} \right) \end{aligned} $$

$$ \begin{aligned} \vec{PR} &= \left( \frac{-4b}{2a+b} + 2, \frac{4a}{2a+b} - 1 \right) = \left( \frac{4a-2b}{2a+b}, \frac{2a-b}{2a+b} \right) \end{aligned} $$

三角形の面積 $S$ は、$\vec{PQ} = (x_1, y_1)$、$\vec{PR} = (x_2, y_2)$ とすると $S = \frac{1}{2}|x_1 y_2 - x_2 y_1|$ で求められる。

$$ \begin{aligned} x_1 y_2 - x_2 y_1 &= \frac{2b-4a}{3b-2a} \cdot \frac{2a-b}{2a+b} - \frac{6a-3b}{3b-2a} \cdot \frac{4a-2b}{2a+b} \\ &= \frac{-2(2a-b)(2a-b) - 3(2a-b) \cdot 2(2a-b)}{(3b-2a)(2a+b)} \\ &= \frac{-2(2a-b)^2 - 6(2a-b)^2}{(3b-2a)(2a+b)} \\ &= \frac{-8(2a-b)^2}{(3b-2a)(2a+b)} \end{aligned} $$

したがって、面積 $S$ は

$$ \begin{aligned} S &= \frac{1}{2} \left| \frac{-8(2a-b)^2}{(3b-2a)(2a+b)} \right| \\ &= \frac{4(2a-b)^2}{|(3b-2a)(2a+b)|} \end{aligned} $$

ここで (1) の条件 $(2a+b)(2a-3b) > 0$ より、分母の中身は $(3b-2a)(2a+b) < 0$ であるから、絶対値記号はマイナスをつけて外すことができる。

$$ S = \frac{4(2a-b)^2}{-(3b-2a)(2a+b)} = \frac{4(2a-b)^2}{(2a-3b)(2a+b)} $$

(3)

(2) で求めた $S$ を用いて、$S - 4 \geqq 0$ を示す。

$$ \begin{aligned} S - 4 &= \frac{4(2a-b)^2}{(2a-3b)(2a+b)} - 4 \\ &= \frac{4 \left\{ (2a-b)^2 - (2a-3b)(2a+b) \right\} }{(2a-3b)(2a+b)} \\ &= \frac{4 \left\{ (4a^2 - 4ab + b^2) - (4a^2 - 4ab - 3b^2) \right\} }{(2a-3b)(2a+b)} \\ &= \frac{4 \cdot 4b^2}{(2a-3b)(2a+b)} \\ &= \frac{16b^2}{(2a-3b)(2a+b)} \end{aligned} $$

(1) の条件より分母 $(2a-3b)(2a+b) > 0$ であり、$b$ は実数であるから分子 $16b^2 \geqq 0$ である。 したがって、$S - 4 \geqq 0$ すなわち $S \geqq 4$ が成り立つ。

等号が成立するのは $b = 0$ のときである。このとき少なくとも一方は $0$ でないという条件から $a \neq 0$ であり、(1) の条件 $(2a)(2a) > 0$ を満たすため、等号を満たす $a, b$ は確かに存在する。

解説

不等式が表す領域が三角形になるための条件を数式に翻訳する力が問われる問題である。 直線の交点が「領域を構成する半直線上にある」という条件を、$x$ 座標の大小関係に帰着させるアプローチが最も確実である。面積の計算においては、成分をそのまま用いて公式 $S = \frac{1}{2}|x_1 y_2 - x_2 y_1|$ に代入することで、対称性の高い式変形ができ、計算ミスを防ぎやすくなる。最後の不等式の証明は、(1) で求めた条件式が分母の符号判定に直接活きるという美しい構成になっている。

答え

(1) 条件:$(2a+b)(2a-3b) > 0$ 図示:$ab$ 平面上において、2直線 $b = -2a$ と $b = \frac{2}{3}a$ によって分割される領域のうち、点 $(1, 0)$ および点 $(-1, 0)$ を含む領域。(境界線を含まない)

(2) $S = \frac{4(2a-b)^2}{(2a-3b)(2a+b)}$

(3) $S - 4 = \frac{16b^2}{(2a-3b)(2a+b)} \geqq 0$ より示された。

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