東京大学 1964年 理系 第1問 解説

方針・初手
与えられた3つの等式が同じ構造をしていることに着目する。各等式の $a, b, c$ を変数 $t$ に置き換えた方程式を作ると、$a, b, c$ はその方程式の解であるとみなすことができる。この性質から3次方程式を構成し、「解と係数の関係」を利用して式の値を求める方針をとる。
解法1
与えられた連立方程式の各項を移項して整理すると、以下のようになる。
$$ a^3 - za^2 - ya - x = 0 $$
$$ b^3 - zb^2 - yb - x = 0 $$
$$ c^3 - zc^2 - yc - x = 0 $$
これは、$a, b, c$ が $t$ についての3次方程式
$$ t^3 - zt^2 - yt - x = 0 $$
を満たすことを示している。$a, b, c$ は相異なる数であるから、この3次方程式の3つの解は $t = a, b, c$ である。
3次方程式の解と係数の関係より、以下の基本対称式の値が定まる。
$$ a+b+c = z $$
$$ ab+bc+ca = -y $$
$$ abc = x $$
求める式 $a^3+b^3+c^3$ を、対称式の因数分解の公式を用いて変形する。
$$ a^3+b^3+c^3 - 3abc = (a+b+c)(a^2+b^2+c^2 - ab - bc - ca) $$
右辺の $a^2+b^2+c^2$ を基本対称式で表すようにさらに変形する。
$$ a^3+b^3+c^3 = 3abc + (a+b+c)\{(a+b+c)^2 - 3(ab+bc+ca)\} $$
これに先ほど求めた解と係数の関係の値を代入する。
$$ a^3+b^3+c^3 = 3x + z \{ z^2 - 3(-y) \} $$
$$ a^3+b^3+c^3 = 3x + z(z^2 + 3y) $$
$$ a^3+b^3+c^3 = z^3 + 3yz + 3x $$
解法2
解法1と同様に、$a, b, c$ は3次方程式
$$ t^3 - zt^2 - yt - x = 0 $$
の異なる3つの解であり、解と係数の関係から以下の式が成り立つ。
$$ a+b+c = z $$
$$ ab+bc+ca = -y $$
$$ abc = x $$
また、$a, b, c$ はそれぞれ方程式 $t^3 = zt^2 + yt + x$ を満たすので、以下の3式が成り立つ。
$$ a^3 = za^2 + ya + x $$
$$ b^3 = zb^2 + yb + x $$
$$ c^3 = zc^2 + yc + x $$
これら3つの式の辺々を加えると、次のようにまとめることができる。
$$ a^3+b^3+c^3 = z(a^2+b^2+c^2) + y(a+b+c) + 3x $$
ここで、$a^2+b^2+c^2$ の値を基本対称式を用いて計算する。
$$ a^2+b^2+c^2 = (a+b+c)^2 - 2(ab+bc+ca) = z^2 - 2(-y) = z^2 + 2y $$
これらの結果を先ほどの式に代入して整理する。
$$ a^3+b^3+c^3 = z(z^2 + 2y) + yz + 3x $$
$$ a^3+b^3+c^3 = z^3 + 2yz + yz + 3x $$
$$ a^3+b^3+c^3 = z^3 + 3yz + 3x $$
解説
与えられた連立方程式の規則性から、$a, b, c$ がある共通の3次方程式の解であることを見抜くのが最大のポイントである。このように「方程式を自ら構成する」という発想は、代数の問題において非常に強力な武器となる。
解法1は対称式の公式を直接用いる標準的なアプローチである。一方、解法2は「次数下げ」の考え方を用いたものであり、3次以上のより高次な式の値を求める際にも応用が利く重要なテクニックである。
答え
$$ z^3 + 3yz + 3x $$
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