東京大学 1966年 理系 第3問 解説

方針・初手
点列が「定数倍」と「回転」を繰り返しながら進む問題である。平面上のこのような移動は、複素数平面を用いて点 $P_k$ を複素数 $z_k$ とみなし、等比数列の和として処理するのが最も有力な方針となる。あるいは、回転角が $120^\circ$ であることに着目し、3回移動すると向きが元に戻る( $360^\circ$ 回転する)という周期性を利用して、ベクトルで処理することもできる。
解法1
点 $P_k$ の座標を複素数平面上の点 $z_k$ で表す。 与えられた座標より、$z_0 = 0, z_1 = 1$ である。
線分 $P_k P_{k+1}$ は線分 $P_{k-1} P_k$ の長さを2倍にしたものであり、問題の図の矢印の向きから、半直線 $P_{k-1} P_k$ を反時計回りに $120^\circ$ 回転した向きに点 $P_{k+1}$ があることが分かる。 したがって、複素数平面における差の数列 $z_{k+1} - z_k$ は、次のように表せる。
$$ z_{k+1} - z_k = 2 \left( \cos \frac{2}{3}\pi + i \sin \frac{2}{3}\pi \right) (z_k - z_{k-1}) $$
ここで、$\alpha = 2 \left( \cos \frac{2}{3}\pi + i \sin \frac{2}{3}\pi \right) = -1 + \sqrt{3}i$ とおくと、
$$ z_{k+1} - z_k = \alpha (z_k - z_{k-1}) $$
数列 $\{z_{k+1} - z_k\}$ は、初項 $z_1 - z_0 = 1$、公比 $\alpha$ の等比数列であるから、一般項は以下のようになる。
$$ z_{k+1} - z_k = \alpha^k $$
これを利用して、点 $z_n$ ($n \geqq 1$) を求める。
$$ z_n = z_0 + \sum_{k=0}^{n-1} (z_{k+1} - z_k) = \sum_{k=0}^{n-1} \alpha^k $$
等比数列の和の公式を用いると、
$$ z_n = \frac{1 - \alpha^n}{1 - \alpha} $$
求めたいのは点 $P_{3n}$ の座標であるため、$z_{3n}$ を計算する。
$$ z_{3n} = \frac{1 - \alpha^{3n}}{1 - \alpha} = \frac{1 - (\alpha^3)^n}{1 - \alpha} $$
ド・モアブルの定理により、$\alpha^3$ は次のように計算できる。
$$ \alpha^3 = 2^3 \left( \cos \left( 3 \times \frac{2}{3}\pi \right) + i \sin \left( 3 \times \frac{2}{3}\pi \right) \right) = 8(\cos 2\pi + i \sin 2\pi) = 8 $$
これを $z_{3n}$ の式に代入し、さらに $\alpha = -1 + \sqrt{3}i$ を代入して分母を実数化する。
$$ z_{3n} = \frac{1 - 8^n}{1 - (-1 + \sqrt{3}i)} = \frac{1 - 8^n}{2 - \sqrt{3}i} $$
$$ z_{3n} = \frac{(1 - 8^n)(2 + \sqrt{3}i)}{(2 - \sqrt{3}i)(2 + \sqrt{3}i)} = \frac{(1 - 8^n)(2 + \sqrt{3}i)}{4 + 3} $$
$$ z_{3n} = \frac{2(1 - 8^n)}{7} + \frac{\sqrt{3}(1 - 8^n)}{7}i $$
よって、実部と虚部をそれぞれ $x, y$ 座標に戻すことで $P_{3n}$ の座標が求まる。
解法2
1回の移動を表すベクトルを $\vec{v}_k = \vec{P_{k-1} P_k}$ とする。 条件と図より、$\vec{v}_{k+1}$ は $\vec{v}_k$ を反時計回りに $120^\circ$ 回転し、大きさを2倍にしたベクトルである。
これを3回繰り返すと、ベクトルは合計で $120^\circ \times 3 = 360^\circ$ 回転して元の向きに戻り、大きさは $2^3 = 8$ 倍になる。したがって、任意の自然数 $k$ について次が成り立つ。
$$ \vec{v}_{k+3} = 8\vec{v}_k $$
点 $P_{3n}$ の位置ベクトルは、最初の点 $P_0$ (原点) から $3n$ 回分の移動ベクトルを足し合わせたものであるから、3つずつブロックに分けて考えることができる。
$$ \vec{OP_{3n}} = \sum_{j=1}^{3n} \vec{v}_j = \sum_{m=1}^n (\vec{v}_{3m-2} + \vec{v}_{3m-1} + \vec{v}_{3m}) $$
周期性より $\vec{v}_{3m-2} = 8^{m-1} \vec{v}_1$、$\vec{v}_{3m-1} = 8^{m-1} \vec{v}_2$、$\vec{v}_{3m} = 8^{m-1} \vec{v}_3$ と表せるため、各ブロックの和は次のように括り出せる。
$$ \vec{v}_{3m-2} + \vec{v}_{3m-1} + \vec{v}_{3m} = 8^{m-1} (\vec{v}_1 + \vec{v}_2 + \vec{v}_3) $$
$\vec{v}_1 = (1, 0)$ であり、これに「長さ2倍、$120^\circ$ 回転」を順次適用して $\vec{v}_2, \vec{v}_3$ の成分を求める。
$$ \vec{v}_2 = (2\cos 120^\circ, 2\sin 120^\circ) = (-1, \sqrt{3}) $$
$$ \vec{v}_3 = (4\cos 240^\circ, 4\sin 240^\circ) = (-2, -2\sqrt{3}) $$
これら3つのベクトルの和を計算する。
$$ \vec{v}_1 + \vec{v}_2 + \vec{v}_3 = (1 - 1 - 2, 0 + \sqrt{3} - 2\sqrt{3}) = (-2, -\sqrt{3}) $$
したがって、$\vec{OP_{3n}}$ は次のように等比数列の和として計算できる。
$$ \vec{OP_{3n}} = \sum_{m=1}^n 8^{m-1} (-2, -\sqrt{3}) = \left( \sum_{m=1}^n 8^{m-1} \right) (-2, -\sqrt{3}) $$
数列 $\{8^{m-1}\}$ は初項 $1$、公比 $8$ の等比数列であり、項数は $n$ であるからその和は $\frac{8^n - 1}{8 - 1}$ となる。
$$ \vec{OP_{3n}} = \frac{8^n - 1}{7} (-2, -\sqrt{3}) = \left( \frac{2(1 - 8^n)}{7}, \frac{\sqrt{3}(1 - 8^n)}{7} \right) $$
解説
平面上において「長さを定数倍し、一定の角だけ回転する」という反復操作は、複素数平面を用いることで非常に見通しよく解くことができる。複素数のかけ算がもつ「絶対値の積」と「偏角の和」という性質が、この操作と完全に合致するからである。
また、今回は回転角が $120^\circ$ であり、求める点が $P_{3n}$ であることから、「3回の操作で向きが元に戻る」という周期性を生かしたベクトルによる解法も簡潔である。部分和である $\vec{v}_1 + \vec{v}_2 + \vec{v}_3$ を1つの単位として捉える発想は、類似の周期性をもつ問題に広く応用できる。
答え
$$ \left( \frac{2(1 - 8^n)}{7}, \frac{\sqrt{3}(1 - 8^n)}{7} \right) $$
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