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東京大学 1982年 理系 第1問 解説

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東京大学 1982年 理系 第1問 解説

方針・初手

原点以外の点 $P$ が $f$ によって不変($f(P)=P$)であるという条件から、連立方程式が自明でない解をもつための条件(行列式が $0$)を導き出す。 次に、原点を通らない直線 $l$ の方程式を $px+qy+r=0$ ($r \neq 0$)とおき、この直線上の任意の点が $f$ によって再び同じ直線上へうつるための条件を求める。その条件が、先ほど求めた関係式を利用して満たされることを示せばよい。

解法1

点 $P$ の座標を $(s, t)$ とおく。$P$ は原点ではないので $(s, t) \neq (0, 0)$ である。 $f$ によって $P$ は $P$ 自身にうつるので、

$$ \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} s \\ t \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} s \\ t \end{pmatrix} $$

が成り立つ。整理すると、

$$ \begin{pmatrix} a-1 & b \\ c & d-1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} s \\ t \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix} $$

$(s, t) \neq (0, 0)$ であるから、この連立方程式が $(0, 0)$ 以外の解をもつための条件は、係数行列の行列式が $0$ になることである。すなわち、

$$ (a-1)(d-1) - bc = 0 $$

が成り立つ。

次に、原点を通らない直線 $l$ の方程式を

$$ px + qy + r = 0 \quad ((p, q) \neq (0, 0),\ r \neq 0) $$

とおく。直線 $l$ 上の任意の点 $(x, y)$ が $f$ によって点 $(X, Y)$ にうつるとすると、

$$ \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} ax+by \\ cx+dy \end{pmatrix} $$

$(X, Y)$ も直線 $l$ 上にあるとすると、

$$ pX + qY + r = 0 $$

すなわち、

$$ p(ax+by) + q(cx+dy) + r = 0 $$

$$ (ap+cq)x + (bp+dq)y + r = 0 $$

これが元の直線の方程式 $px+qy+r=0$ を満たすすべての $(x, y)$ に対して成り立つような、$(p, q)$ および $r$ の組を見つければよい。 両式の定数項が共に $r$ であることに着目すると、各変数の係数が等しくなる条件として、

$$ \begin{cases} ap+cq = p \\ bp+dq = q \end{cases} $$

が成り立てば、上の式は $px+qy+r=0$ と完全に一致するため、条件を満たす。これを整理すると、

$$ \begin{pmatrix} a-1 & c \\ b & d-1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix} $$

となる。この方程式が $(p, q) \neq (0, 0)$ なる解をもつための条件は、係数行列の行列式が $0$ になることである。すなわち、

$$ (a-1)(d-1) - cb = 0 $$

となることであるが、これは先に導いた点 $P$ が存在するための条件と全く同じであるため、既に満たされていることが保証される。 したがって、上の連立方程式を満たす $(p, q) \neq (0, 0)$ は必ず存在する。 そのようにして定まる $(p, q)$ に対して、$r \neq 0$ となる任意の定数(例えば $r=1$)を定めれば、直線 $l: px+qy+r=0$ は原点を通らず、かつ $l$ 上のすべての点が $f$ によって $l$ 上の点にうつる直線となる。 以上より、条件を満たす直線 $l$ が存在することが証明された。

解法2

行列 $A$ と単位行列 $E$ を用いる。 点 $P$ の位置ベクトルを $\vec{p}$ とすると、$\vec{p} \neq \vec{0}$ であり、$A\vec{p} = \vec{p}$ を満たす。 これにより $(A-E)\vec{p} = \vec{0}$ となるので、連立方程式が自明でない解をもつ条件より、行列式の値は $0$ になる。

$$ \det(A-E) = 0 $$

原点を通らない直線 $l$ は、法線ベクトルを $\vec{n} \neq \vec{0}$、定数を $k \neq 0$ として、内積を用いて

$$ \vec{n} \cdot \vec{x} = k $$

と表すことができる($\vec{x}$ は直線上の点の位置ベクトル)。 直線 $l$ 上の任意の点 $\vec{x}$ に対し、その像 $A\vec{x}$ も $l$ 上にあるための十分条件は、任意の $\vec{x}$ に対して常に

$$ \vec{n} \cdot (A\vec{x}) = \vec{n} \cdot \vec{x} $$

が成り立つことである。これが成り立てば、$\vec{n} \cdot \vec{x} = k$ のとき $\vec{n} \cdot (A\vec{x}) = k$ となるからである。 ここで、$\vec{n} = \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix}$、$\vec{x} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ と成分で計算すると、

$$ \vec{n} \cdot (A\vec{x}) = p(ax+by) + q(cx+dy) = (ap+cq)x + (bp+dq)y = \begin{pmatrix} ap+cq \\ bp+dq \end{pmatrix} \cdot \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} $$

となる。これが任意の $\vec{x}$ に対して $\vec{n} \cdot \vec{x}$ に等しくなるためには、

$$ \begin{pmatrix} ap+cq \\ bp+dq \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix} $$

すなわち、

$$ \begin{pmatrix} a & c \\ b & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix} $$

が成り立てばよい。左辺の行列は $A$ の転置行列を $A^T$ とすると方程式は $(A^T - E)\vec{n} = \vec{0}$ と書ける。 この方程式が $\vec{n} \neq \vec{0}$ なる解をもつ条件は $\det(A^T - E) = 0$ であるが、

$$ \det(A^T - E) = (a-1)(d-1) - cb = (a-1)(d-1) - bc = \det(A-E) = 0 $$

であるから、点 $P$ が存在するという仮定からこの条件は満たされている。 したがって、条件を満たす $\vec{n} \neq \vec{0}$ が存在し、任意の $k \neq 0$ に対して直線 $\vec{n} \cdot \vec{x} = k$ は題意を満たす直線 $l$ となる。

解説

「ある点が自身にうつる(不動点が存在する)」という条件から行列の成分に関する関係式(固有値 $1$ をもつ条件)を導き、それを「直線が自身にうつる(不変直線が存在する)」という条件に当てはめる論証問題である。 直線の変換を考える際、直線を $y=mx+n$ や $x=c$ と場合分けして処理することも可能だが、$px+qy+r=0$ や法線ベクトル $\vec{n} \cdot \vec{x} = k$ とおくことで、行列の計算と相性の良い見通しの立った解答を作成することができる。一般に、ある行列 $A$ の固有値とその転置行列 $A^T$ の固有値が一致することを背景とした出題である。

答え

略(解法1の証明を参照)

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