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東京大学 1996年 理系 第1問 解説

旧課程/行列・一次変換数学2/図形と式テーマ/接線・法線テーマ/軌跡・領域
東京大学 1996年 理系 第1問 解説

方針・初手

与えられた行列が表す1次変換が「相似変換(回転と拡大・縮小の合成)」であることに着目する。これにより、円の像がどのような図形になるか(中心の位置と半径の大きさ)を容易に把握できる。その後、変換後の円が直線に接する条件と、指定された領域に含まれる条件をそれぞれ立式し、$a$ と $b$ の関係式および不等式を導く。

解法1

行列 $\begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix}$ は、原点中心の回転と、原点を中心とする相似比 $\sqrt{a^2+b^2}$ の拡大・縮小の合成変換(相似変換)を表す。

点 $(1, 0)$ を中心とする半径 $\frac{1}{3}$ の円を $C$ とし、1次変換 $f$ による $C$ の像を $C'$ とする。

$f$ によって点 $(1, 0)$ は点 $(a, b)$ に移るため、$C'$ は点 $(a, b)$ を中心とする円である。また、$f$ は相似比 $\sqrt{a^2+b^2}$ の相似変換であるから、$C'$ の半径 $r'$ は

$$ r' = \frac{1}{3}\sqrt{a^2+b^2} $$

となる。

$C'$ が直線 $x = \frac{2}{3}$ に接する条件は、$C'$ の中心 $(a, b)$ と直線 $x = \frac{2}{3}$ の距離が $C'$ の半径 $r'$ に等しいことである。すなわち、

$$ \left| a - \frac{2}{3} \right| = \frac{1}{3}\sqrt{a^2+b^2} $$

両辺はともに0以上であるから、2乗して整理する。

$$ \left( a - \frac{2}{3} \right)^2 = \frac{1}{9}(a^2+b^2) $$

$$ a^2 - \frac{4}{3}a + \frac{4}{9} = \frac{1}{9}a^2 + \frac{1}{9}b^2 $$

$$ 9a^2 - 12a + 4 = a^2 + b^2 $$

$$ 8a^2 - 12a - b^2 + 4 = 0 $$

$$ 8\left( a - \frac{3}{4} \right)^2 - 8 \cdot \frac{9}{16} - b^2 + 4 = 0 $$

$$ 8\left( a - \frac{3}{4} \right)^2 - b^2 = \frac{1}{2} $$

よって、

$$ \frac{\left( a - \frac{3}{4} \right)^2}{\left(\frac{1}{4}\right)^2} - \frac{b^2}{\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^2} = 1 $$

となり、これは $ab$ 平面上の双曲線を表す。

次に、$C'$ が領域 $D = \{(x, y) \mid x > 0\}$ に含まれる条件を考える。これは、$C'$ 上の点の $x$ 座標の最小値が正であることと同値である。

$C'$ の中心の $x$ 座標は $a$、半径は $\frac{1}{3}\sqrt{a^2+b^2}$ であるから、$x$ 座標の最小値は $a - \frac{1}{3}\sqrt{a^2+b^2}$ である。したがって、条件は

$$ a - \frac{1}{3}\sqrt{a^2+b^2} > 0 $$

ここで、先ほど得た関係式 $\frac{1}{3}\sqrt{a^2+b^2} = \left| a - \frac{2}{3} \right|$ を代入すると、

$$ a - \left| a - \frac{2}{3} \right| > 0 $$

すなわち、

$$ a > \left| a - \frac{2}{3} \right| $$

これを解く。

(i)

$a \geqq \frac{2}{3}$ のとき

不等式は $a > a - \frac{2}{3}$ となり、$0 > -\frac{2}{3}$ は常に成り立つ。よって $a \geqq \frac{2}{3}$。

(ii)

$a < \frac{2}{3}$ のとき

不等式は $a > -\left( a - \frac{2}{3} \right)$ となり、$2a > \frac{2}{3}$、すなわち $a > \frac{1}{3}$。場合分けの条件と合わせて、$\frac{1}{3} < a < \frac{2}{3}$。

(i), (ii) より、領域 $D$ に含まれるための条件は $a > \frac{1}{3}$ である。

以上より、求める図形は双曲線 $8\left( a - \frac{3}{4} \right)^2 - b^2 = \frac{1}{2}$ の $a > \frac{1}{3}$ の部分である。

$a = \frac{1}{3}$ のとき、$8\left( \frac{1}{3} - \frac{3}{4} \right)^2 - b^2 = \frac{1}{2}$ より

$$ 8 \cdot \frac{25}{144} - b^2 = \frac{1}{2} $$

$$ \frac{25}{18} - b^2 = \frac{9}{18} $$

$$ b^2 = \frac{16}{18} = \frac{8}{9} $$

よって、$b = \pm\frac{2\sqrt{2}}{3}$ である。また、双曲線の頂点は $\left( \frac{1}{2}, 0 \right), (1, 0)$ であり、漸近線は $b = \pm 2\sqrt{2}\left( a - \frac{3}{4} \right)$ である。

解説

行列 $\begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix}$ が相似変換を表すという基本性質を知っていれば、変換後の図形がすぐに円であると分かり、計算量と見通しが格段に良くなる。

図形的な条件を数式に翻訳する際、「円が領域 $x > 0$ に含まれる」という条件を「円の中心の $x$ 座標から半径を引いたものが正」と言い換えるのがポイントである。

さらに、絶対値を含んだ不等式を解く場面で、接する条件で求めた等式を活用することで、複雑な無理不等式を解く手間を省略できる。

答え

求める図形は、双曲線 $8\left( a - \frac{3}{4} \right)^2 - b^2 = \frac{1}{2}$ のうち、$a > \frac{1}{3}$ を満たす部分である。

図示の際の特徴は以下の通り。

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