北海道大学 1996年 文系 第2問 解説

方針・初手
(1) は、与えられた円の方程式と直線の方程式を連立して解く。
(2) は、領域における式の値の最大・最小を求める典型問題(線形計画法)である。$mx+y=k$ とおき、$y = -mx+k$ と変形することで、傾き $-m$、$y$ 切片 $k$ の直線が与えられた領域と共有点をもつような $k$ の最大値を考える。境界が直線だけでなく円弧を含むため、直線と境界線の傾きの比較、または接点が領域内に存在するかどうかの確認が必要となる。
解法1
(1)
円の方程式と直線の方程式は以下の通りである。
$$ x^2+y^2=25 $$
$$ x+2y=10 $$
第2式より $x = -2y+10$ とし、これを第1式に代入する。
$$ (-2y+10)^2 + y^2 = 25 $$
$$ 4y^2 - 40y + 100 + y^2 = 25 $$
$$ 5y^2 - 40y + 75 = 0 $$
両辺を $5$ で割り、因数分解する。
$$ y^2 - 8y + 15 = 0 $$
$$ (y-3)(y-5) = 0 $$
したがって、$y = 3, 5$ を得る。
$y = 3$ のとき、$x = -6+10 = 4$ $y = 5$ のとき、$x = -10+10 = 0$
以上より、求める交点の座標は $(4, 3), (0, 5)$ である。
(2)
$mx+y=k$ とおくと、直線の方程式は次のように表せる。
$$ y = -mx+k $$
これを直線 $l$ とする。$m>0$ であるから、直線 $l$ の傾き $-m$ は負の値をとる右下がりの直線である。$mx+y$ の最大値を求めることは、直線 $l$ が連立不等式の表す領域 $D$ と共有点をもつ範囲で、$y$ 切片 $k$ が最大となる条件を求めることと同値である。
領域 $D$ は、円 $x^2+y^2 \leqq 25$ の内部および周上と、直線 $x+2y \leqq 10$ の下側(境界を含む)の共通部分である。 (1) で求めた交点を $A(0, 5), B(4, 3)$ とする。領域 $D$ の上側の境界は、点 $A$ から点 $B$ までの線分 $AB$ と、点 $B$ 以降の第1象限および第4象限にある円弧部分からなる。
境界の傾きを調べる。 線分 $AB$ の傾きは、直線 $x+2y=10$ より $-\frac{1}{2}$ である。 円上の点 $(x, y)$ における接線の傾きを $y'$ とすると、$x^2+y^2=25$ の両辺を $x$ で微分して $2x+2yy'=0$ より $y' = -\frac{x}{y}$ である。 したがって、点 $B(4, 3)$ における円の接線の傾きは $-\frac{4}{3}$ である。
直線 $l$ の $y$ 切片 $k$ が最大となるのは、直線 $l$ が領域の頂点 $A, B$ を通るときか、円弧部分に接するときである。直線 $l$ の傾き $-m$ と境界の傾きとの大小関係によって場合分けを行う。
(i) $0 < m < \frac{1}{2}$ のとき
直線 $l$ の傾き $-m$ は、線分 $AB$ の傾き $-\frac{1}{2}$ よりも大きい(傾きが緩やかである)。 このとき、直線 $l$ を上方に平行移動させていくと、最後に領域 $D$ と共有点をもつのは点 $A(0, 5)$ である。 よって、最大値は点 $A$ を通るときの $y$ 切片の値となる。
$$ k = m \cdot 0 + 5 = 5 $$
(ii) $\frac{1}{2} \leqq m < \frac{4}{3}$ のとき
直線 $l$ の傾き $-m$ は、線分 $AB$ の傾き $-\frac{1}{2}$ 以下であり、かつ点 $B$ における円の接線の傾き $-\frac{4}{3}$ よりも大きい。 このとき、直線 $l$ は線分 $AB$ より急であるが、点 $B$ を超えて円弧と接することはない。最後に領域 $D$ と共有点をもつのは点 $B(4, 3)$ である。 よって、最大値は点 $B$ を通るときの $y$ 切片の値となる。
$$ k = m \cdot 4 + 3 = 4m+3 $$
(iii) $m \geqq \frac{4}{3}$ のとき
直線 $l$ の傾き $-m$ は、点 $B$ における円の接線の傾き $-\frac{4}{3}$ 以下である(等しいか、さらに急である)。 このとき、直線 $l$ を上方に平行移動させていくと、点 $B$ を超えた円弧部分で円と接するときに $y$ 切片が最大となる。 円の中心 $(0,0)$ と直線 $mx+y-k=0$ との距離が半径 $5$ に等しいので、点と直線の距離の公式より以下が成り立つ。
$$ \frac{|-k|}{\sqrt{m^2+1}} = 5 $$
$k>0$ であるから、接する場合の $y$ 切片は次のように求まる。
$$ k = 5\sqrt{m^2+1} $$
以上 (i), (ii), (iii) より、求める最大値が $m$ の値に応じて定まる。
解法2
(2) の別解として、円の接点が領域 $D$ に含まれるかどうかの条件から場合分けを導く方法を示す。
直線 $l: mx+y=k$ が円 $x^2+y^2=25$ の第1象限で接するときの接点を $T(x_0, y_0)$ とする。 原点と接点 $T$ を結ぶ直線は直線 $l$ と垂直であるから、その方程式は $x-my=0$ すなわち $x=my$ となる。 これを円の方程式に代入する。
$$ (my)^2 + y^2 = 25 $$
$$ y^2(m^2+1) = 25 $$
第1象限の接点であるから $y_0 > 0$ として解く。
$$ y_0 = \frac{5}{\sqrt{m^2+1}} $$
このとき $x_0 = my_0$ より、$x_0$ は以下のようになる。
$$ x_0 = \frac{5m}{\sqrt{m^2+1}} $$
したがって、接点 $T$ の座標は $\left( \frac{5m}{\sqrt{m^2+1}}, \frac{5}{\sqrt{m^2+1}} \right)$ であり、このとき $y$ 切片 $k$ の値は $k = 5\sqrt{m^2+1}$ である。
この接点 $T$ が領域 $D$ に含まれるための条件は、直線 $x+2y \leqq 10$ の領域内にあることであるから、以下の不等式を満たすことである。
$$ \frac{5m}{\sqrt{m^2+1}} + 2 \cdot \frac{5}{\sqrt{m^2+1}} \leqq 10 $$
$$ \frac{5m+10}{\sqrt{m^2+1}} \leqq 10 $$
両辺を $5$ で割り、分母を払う。
$$ m+2 \leqq 2\sqrt{m^2+1} $$
$m>0$ より両辺とも正であるから、両辺を2乗しても同値である。
$$ (m+2)^2 \leqq 4(m^2+1) $$
$$ m^2+4m+4 \leqq 4m^2+4 $$
$$ 3m^2 - 4m \geqq 0 $$
$$ m(3m-4) \geqq 0 $$
$m>0$ であるから、この条件は $m \geqq \frac{4}{3}$ となる。 すなわち、$m \geqq \frac{4}{3}$ のとき接点 $T$ は領域 $D$ 内に存在し、ここで最大値 $5\sqrt{m^2+1}$ をとる。
一方、$0 < m < \frac{4}{3}$ のときは接点 $T$ が領域 $D$ の外側(切り取られた部分)にあるため、領域内で円弧に接することはない。このとき最大値の候補となるのは、境界線の交点である $A(0, 5)$ または $B(4, 3)$ である。 点 $A$ を通るときの値は $k = 5$、点 $B$ を通るときの値は $k = 4m+3$ である。これらの大小を比較する。
$$ (4m+3) - 5 = 4m - 2 = 2(2m - 1) $$
これより、以下のことがわかる。 $0 < m < \frac{1}{2}$ のとき、$4m+3 < 5$ であるから、点 $A$ で最大値 $5$ をとる。 $\frac{1}{2} \leqq m < \frac{4}{3}$ のとき、$4m+3 \geqq 5$ であるから、点 $B$ で最大値 $4m+3$ をとる。
以上により、解法1と同じ結論が得られる。
解説
(1) は円と直線の交点を求める基本的な計算問題である。ここで求めた交点が (2) における領域の頂点として機能する。
(2) は線形計画法の応用問題である。通常の線形計画法では境界がすべて直線であるため、領域の頂点のいずれかで最大・最小をとるが、本問のように境界に曲線(円弧)が含まれる場合、曲線部分で接するときも最大値の候補となることに注意が必要である。 解法1のように「直線の傾き」と「境界の各点での傾き(接線の傾き)」を視覚的に比較して場合分けをするアプローチと、解法2のように「円と接すると仮定して求めた接点が、問題の領域に含まれるか」を不等式で代数的に処理するアプローチがある。どちらも入試数学において非常に重要な考え方である。
答え
(1) $(4, 3), (0, 5)$
(2) $0 < m < \frac{1}{2}$ のとき 最大値 $5$ $\frac{1}{2} \leqq m < \frac{4}{3}$ のとき 最大値 $4m+3$ $m \geqq \frac{4}{3}$ のとき 最大値 $5\sqrt{m^2+1}$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











