九州大学 2013年 文系 第2問 解説

方針・初手
連立不等式が表す領域 $D$ を座標平面上に図示し、境界となる直線の交点(領域の頂点)を求めます。領域 $D$ は閉じた多角形(四角形)になるため、直線 $x+y=k$ および $ax+by=k'$ の最大値・最小値は、この領域の頂点のいずれかでとることに着目します。最大・最小となる点が1点に定まるための条件は、直線の傾きが、その頂点に集まる2つの境界線の傾きの間にあることです。
解法1
領域 $D$ の境界となる4本の直線を以下のように定める。
$$ \begin{aligned} l_1: x + 2y = 5 &\iff y = -\frac{1}{2}x + \frac{5}{2} \\ l_2: 3x + y = 8 &\iff y = -3x + 8 \\ l_3: -2x - y = 4 &\iff y = -2x - 4 \\ l_4: -x - 4y = 7 &\iff y = -\frac{1}{4}x - \frac{7}{4} \end{aligned} $$
領域 $D$ は、連立不等式 $y \leqq -\frac{1}{2}x + \frac{5}{2}$, $y \leqq -3x + 8$, $y \geqq -2x - 4$, $y \geqq -\frac{1}{4}x - \frac{7}{4}$ を満たす領域である。
これら4本の直線の交点のうち、領域 $D$ の頂点となるものを求める。
$l_1$ と $l_2$ の交点: 連立方程式 $x + 2y = 5, 3x + y = 8$ を解いて、点 $A\left(\frac{11}{5}, \frac{7}{5}\right)$。 この点は $l_3, l_4$ が定める不等式も満たす。
$l_2$ と $l_4$ の交点: 連立方程式 $3x + y = 8, -x - 4y = 7$ を解いて、点 $B\left(\frac{39}{11}, -\frac{29}{11}\right)$。 この点は $l_1, l_3$ が定める不等式も満たす。
$l_3$ と $l_4$ の交点: 連立方程式 $-2x - y = 4, -x - 4y = 7$ を解いて、点 $C\left(-\frac{9}{7}, -\frac{10}{7}\right)$。 この点は $l_1, l_2$ が定める不等式も満たす。
$l_1$ と $l_3$ の交点: 連立方程式 $x + 2y = 5, -2x - y = 4$ を解いて、点 $D'\left(-\frac{13}{3}, \frac{14}{3}\right)$。 この点は $l_2, l_4$ が定める不等式も満たす。
以上より、領域 $D$ はこれら4点 $A, B, C, D'$ を頂点とする四角形の周および内部である。
(1)
$x+y=k$ とおくと、
$$ y = -x + k $$
これは傾き $-1$、$y$ 切片 $k$ の直線を表す。領域 $D$ の各頂点における $k = x+y$ の値を計算する。
点 $A$ のとき: $k = \frac{11}{5} + \frac{7}{5} = \frac{18}{5} = 3.6$
点 $B$ のとき: $k = \frac{39}{11} - \frac{29}{11} = \frac{10}{11} \approx 0.909$
点 $C$ のとき: $k = -\frac{9}{7} - \frac{10}{7} = -\frac{19}{7} \approx -2.714$
点 $D'$ のとき: $k = -\frac{13}{3} + \frac{14}{3} = \frac{1}{3} \approx 0.333$
計算結果から、$k$ が最大となるのは点 $A$、最小となるのは点 $C$ である。 したがって、$x+y$ の値が最大となる点 $Q$ は点 $A$、最小となる点 $R$ は点 $C$ に一致する。
(2)
$ax+by = k'$ とおくと、$b > 0$ であるから、
$$ y = -\frac{a}{b}x + \frac{k'}{b} $$
これは傾き $-\frac{a}{b}$、$y$ 切片 $\frac{k'}{b}$ の直線を表す。$b > 0$ より、$y$ 切片が最大(最小)となるとき、同時に $k'$ も最大(最小)となる。
直線が点 $Q$ でのみ最大値をとるための条件: 点 $Q$(点 $A$)は、上側の境界線である $l_1$(傾き $-\frac{1}{2}$)と $l_2$(傾き $-3$)の交点である。直線の $y$ 切片が点 $Q$ でのみ最大となるための条件は、直線の傾き $-\frac{a}{b}$ が $l_1$ の傾きと $l_2$ の傾きの間にあることである。すなわち、
$$ -3 < -\frac{a}{b} < -\frac{1}{2} $$
辺々に $-1$ を掛けて不等号の向きを反転させると、
$$ \frac{1}{2} < \frac{a}{b} < 3 \quad \cdots \text{(i)} $$
直線が点 $R$ でのみ最小値をとるための条件: 点 $R$(点 $C$)は、下側の境界線である $l_3$(傾き $-2$)と $l_4$(傾き $-\frac{1}{4}$)の交点である。直線の $y$ 切片が点 $R$ でのみ最小となるための条件は、直線の傾き $-\frac{a}{b}$ が $l_3$ の傾きと $l_4$ の傾きの間にあることである。すなわち、
$$ -2 < -\frac{a}{b} < -\frac{1}{4} $$
辺々に $-1$ を掛けて不等号の向きを反転させると、
$$ \frac{1}{4} < \frac{a}{b} < 2 \quad \cdots \text{(ii)} $$
(i) および (ii) を同時に満たす必要があるため、これら共通範囲を求めて、
$$ \frac{1}{2} < \frac{a}{b} < 2 $$
解説
線形計画法において、目的関数を $y = mx + n$ の形に変形し、$y$ 切片の最大・最小を考える典型問題です。 領域が凸多角形である場合、最大値・最小値は必ず頂点のいずれかでとります。(1)では、確実を期すために全ての頂点における値を算出して比較しています。境界線の傾きの大小関係($-3 < -2 < -1 < -\frac{1}{2} < -\frac{1}{4}$)を利用して、視覚的に最大・最小をとる頂点を特定することも有効です。
(2)のように「特定の点でのみ」最大・最小をとる条件は、動かす直線の傾きが、その頂点を形成する2つの境界線の傾きの間にあることです。等号を含むと、他の頂点や辺上でも最大(最小)をとってしまうため、強い不等号($<$)にする必要がある点に注意してください。
答え
(1) $Q\left(\frac{11}{5}, \frac{7}{5}\right), \quad R\left(-\frac{9}{7}, -\frac{10}{7}\right)$
(2) $\frac{1}{2} < \frac{a}{b} < 2$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











