北海道大学 1973年 理系 第4問 解説

方針・初手
与えられた不等式 $\log x < 2\sqrt{x}$ と、その結果である極限公式を誘導として順に証明していく微分積分の総合問題である。 (1) と (2) は極限の基本操作とはさみうちの原理を用いる。 (3) と (4) は $x^{\frac{1}{x}}$ を自然対数の底 $e$ を用いて表し、対数微分法(または合成関数の微分)により極値を求める典型的な処理である。 (5) は $x \to +0$ の極限であり、不定形となるため、$x = e^{-t}$ のように置換して $t \to +\infty$ の極限に帰着させ、誘導で示された極限の性質を用いてはさみうちの原理を適用する。
解法1
(1) $x > 1$ のとき、$\log x > 0$ である。 与えられた不等式 $\log x < 2\sqrt{x}$ の両辺を正の数 $x$ で割ると、次が成り立つ。
$$ 0 < \frac{\log x}{x} < \frac{2\sqrt{x}}{x} = \frac{2}{\sqrt{x}} $$
ここで $x \to +\infty$ とすると $\frac{2}{\sqrt{x}} \to 0$ となる。 したがって、はさみうちの原理より次が成り立つ。
$$ \lim_{x\to+\infty} \frac{\log x}{x} = 0 $$
(2) $\lim_{x\to+0} x \log x$ について、$x = \frac{1}{t}$ とおく。 $x \to +0$ のとき $t \to +\infty$ であり、式は次のように変形できる。
$$ x \log x = \frac{1}{t} \log \left(\frac{1}{t}\right) = -\frac{\log t}{t} $$
(1) の結果より $\lim_{t\to+\infty} \frac{\log t}{t} = 0$ であるから、次が成り立つ。
$$ \lim_{x\to+0} x \log x = -\lim_{t\to+\infty} \frac{\log t}{t} = 0 $$
(3) 対数の性質から $x = e^{\log x}$ であることを用いて式を変形する。
$$ x^{\frac{1}{x}} = \left(e^{\log x}\right)^{\frac{1}{x}} = e^{\frac{1}{x} \log x} = e^{\frac{\log x}{x}} $$
したがって、(ハ) に入る式は $\frac{\log x}{x}$ である。
(4) $f(x) = x^{\frac{1}{x}}$ $(x > 0)$ とおく。 (3) の結果より $f(x) = e^{\frac{\log x}{x}}$ であるから、これを $x$ で微分する。
$$ f'(x) = e^{\frac{\log x}{x}} \cdot \left( \frac{\log x}{x} \right)' $$
商の微分法を用いて右辺の微分を計算する。
$$ \left( \frac{\log x}{x} \right)' = \frac{\frac{1}{x} \cdot x - \log x \cdot 1}{x^2} = \frac{1 - \log x}{x^2} $$
したがって、導関数は次のようになる。
$$ f'(x) = x^{\frac{1}{x}} \frac{1 - \log x}{x^2} $$
$x > 0$ において $x^{\frac{1}{x}} > 0$ かつ $x^2 > 0$ であるため、$f'(x)$ の符号は $1 - \log x$ の符号と一致する。 $f'(x) = 0$ となるのは $1 - \log x = 0$ すなわち $x = e$ のときである。 $x > 0$ における増減表は次のようになる。
| $x$ | $(0)$ | $\cdots$ | $e$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | |
| $f(x)$ | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ |
$x = e$ のとき $f(e) = e^{\frac{1}{e}}$ である。 よって、極値は極大値 $e^{\frac{1}{e}}$ ( $x = e$ のとき)である。
(5) (4) で求めた導関数について $\lim_{x\to+0} f'(x)$ を考える。
$$ f'(x) = x^{\frac{1}{x}} \frac{1 - \log x}{x^2} $$
$x = e^{-t}$ とおくと、$x \to +0$ のとき $t \to +\infty$ となる。 $\log x = -t$ であり、導関数は $t$ を用いて次のように表される。
$$ f'(x) = (e^{-t})^{e^t} \frac{1 - (-t)}{(e^{-t})^2} = e^{-t e^t} \frac{1 + t}{e^{-2t}} = (1 + t) e^{2t - t e^t} $$
$t \to +\infty$ の極限を考えるため、$t > \log 3$ (すなわち $e^t > 3$)としてよい。 このとき、指数の部分は次のように評価できる。
$$ 2t - t e^t = t (2 - e^t) < t (2 - 3) = -t $$
したがって、$e^{2t - t e^t} < e^{-t}$ が成り立つ。 $t > 0$ より $1 + t > 0$ および $f'(x) > 0$ であるから、次の不等式が得られる。
$$ 0 < f'(x) < (1 + t) e^{-t} = \frac{1}{e^t} + \frac{t}{e^t} $$
ここで、$\lim_{t\to+\infty} \frac{1}{e^t} = 0$ である。 また、問題文の (イ) の不等式 $\log x < 2\sqrt{x}$ において $x = e^t$ とおくと、$t < 2\sqrt{e^t} = 2e^{\frac{t}{2}}$ となる。 両辺を $e^t$ で割ると次のようになる。
$$ 0 < \frac{t}{e^t} < \frac{2 e^{\frac{t}{2}}}{e^t} = \frac{2}{e^{\frac{t}{2}}} $$
$t \to +\infty$ のとき $\frac{2}{e^{\frac{t}{2}}} \to 0$ であるから、はさみうちの原理より $\lim_{t\to+\infty} \frac{t}{e^t} = 0$ となる。 ゆえに、右辺の極限は次のように求まる。
$$ \lim_{t\to+\infty} \left( \frac{1}{e^t} + \frac{t}{e^t} \right) = 0 + 0 = 0 $$
したがって、はさみうちの原理より次が示される。
$$ \lim_{x\to+0} f'(x) = 0 $$
解説
極限や導関数の基本的な計算から始まり、誘導に乗りながら適切な変数変換や不等式評価を行う総合問題である。 関数 $y = x^{\frac{1}{x}}$ の微分は、自然対数をとる「対数微分法」か、(3) のように $e$ の指数に直してから合成関数の微分法を用いるのが定石である。 (5) は不定形 $\infty \times 0$ になるため、そのままでは極限が求まらない。$x \to +0$ を $t \to +\infty$ に変換し、指数関数の増大度が多項式の増大度より圧倒的に速いこと($t / e^t \to 0$ など)を、(1) で証明した事実に帰着させて厳密に示す力が問われている。
答え
(1) $x > 1$ において $0 < \frac{\log x}{x} < \frac{2}{\sqrt{x}}$ であり、$x \to +\infty$ のとき右辺が $0$ に収束するため、はさみうちの原理から $\lim_{x\to+\infty} \frac{\log x}{x} = 0$ となるから。
(2) $x = \frac{1}{t}$ とおくと、$x \to +0$ のとき $t \to +\infty$ であり、$x \log x = -\frac{\log t}{t}$ となる。(1) より $t \to +\infty$ のとき $-\frac{\log t}{t} \to 0$ となるから。
(3) $\frac{\log x}{x}$
(4) 極大値 $e^{\frac{1}{e}}$ ( $x=e$ のとき )
(5) $0$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











