京都大学 1980年 文系 第3問 解説

方針・初手
与えられた式 $f(x) + f(x+1) - 2\int_{0}^{1} f(x+t)dt$ がどのような多項式になるかを調べる問題である。 多項式の展開といえば二項定理が定番であるが、関数全体の平行移動 $f(x+t)$ を扱う場合、多項式の**テイラー展開($t$ についての展開)**を利用すると、計算が非常に美しくまとまる。 微分と積分の線形性により、最高次の項(と次に高い項)がどのように打ち消し合うかを、導関数を用いて一目で確認することができる。
解法1(多項式のテイラー展開を利用)
$f(x)$ は $n$ 次の多項式であるから、任意の定数 $t$ に対して、$f(x+t)$ を $t$ の多項式として展開(テイラー展開)すると、次のように表すことができる。
$$ f(x+t) = f(x) + f'(x)t + \frac{f''(x)}{2!}t^2 + \frac{f'''(x)}{3!}t^3 + \cdots + \frac{f^{(n)}(x)}{n!}t^n $$
(※ $f(x)$ は $n$ 次式であるため、$n+1$ 階以上の導関数はすべて $0$ となり、有限の和で表される)
この展開式を用いて、与式の各項を計算する。
① $f(x+1)$ について 上の式で $t=1$ とすると、
$$ f(x+1) = f(x) + f'(x) + \frac{1}{2}f''(x) + \frac{1}{6}f'''(x) + \cdots + \frac{1}{n!}f^{(n)}(x) $$
② $\int_{0}^{1} f(x+t)dt$ について 展開式を $t$ について $0$ から $1$ まで定積分する($x$ の関数は定数として扱う)。
$$ \begin{aligned} \int_{0}^{1} f(x+t)dt &= \int_{0}^{1} \left( f(x) + f'(x)t + \frac{f''(x)}{2}t^2 + \cdots + \frac{f^{(n)}(x)}{n!}t^n \right) dt \\ &= \left[ f(x)t + \frac{f'(x)}{2}t^2 + \frac{f''(x)}{6}t^3 + \cdots + \frac{f^{(n)}(x)}{(n+1)!}t^{n+1} \right]_{0}^{1} \\ &= f(x) + \frac{1}{2}f'(x) + \frac{1}{6}f''(x) + \cdots + \frac{1}{(n+1)!}f^{(n)}(x) \end{aligned} $$
③ 全体の式を計算する 与えられた式を $P(x) = f(x) + f(x+1) - 2\int_{0}^{1} f(x+t)dt$ とおく。 ①、②の結果を代入し、各導関数 $f^{(k)}(x)$ ごとに係数を整理する。
- $f(x)$ の係数: $1 + 1 - 2(1) = 0$
- $f'(x)$ の係数: $0 + 1 - 2\left(\frac{1}{2}\right) = 0$
- $f''(x)$ の係数: $0 + \frac{1}{2} - 2\left(\frac{1}{6}\right) = \frac{1}{2} - \frac{1}{3} = \frac{1}{6}$
これ以降の高階導関数についても何らかの係数がつくため、$P(x)$ は次のようにまとまる。
$$ P(x) = \frac{1}{6}f''(x) + \sum_{k=3}^{n} c_k f^{(k)}(x) \quad (c_k \text{ は定数}) $$
ここで、$f(x)$ は $n$ 次の多項式($n \geqq 2$)であるため、$f(x) = a_n x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \cdots$ ($a_n \neq 0$)とおける。 このとき、第2次導関数 $f''(x)$ の最高次の項は
$$ n(n-1)a_n x^{n-2} $$
である。$n \geqq 2$ かつ $a_n \neq 0$ であるから、$f''(x)$ はちょうど $n-2$ 次の多項式となる。 一方、$k \geqq 3$ における $f^{(k)}(x)$ の次数は $n-3$ 次以下である。
したがって、$P(x)$ の最高次の項は $\frac{1}{6}f''(x)$ の最高次の項と一致し、その係数 $\frac{1}{6}n(n-1)a_n$ は $0$ ではない。 ゆえに、与えられた式は $n-2$ 次の多項式であることが示された。(証明終)
解説
多項式の恒等式や次数を問う問題において、「多項式のテイラー展開」は非常に強力な武器になる。 もちろん、$f(x) = a_n x^n + \cdots$ とおいて、最高次($x^n$)と次の次数($x^{n-1}$)の項だけを二項定理で展開し、「$n$ 次と $n-1$ 次の係数がごっそり $0$ になる」ことを力技で示すアプローチでも正解にたどり着ける。しかし、微積分を用いた本解法の方が、「なぜ都合よく $n$ 次と $n-1$ 次の項だけが消えるのか」という構造的な理由(係数の足し引きが見事に $0$ になるから)を明確に記述でき、記述量も少なくミスも防げる。
答え
略(解法1の証明を参照)
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