京都大学 2019年 文系 第1問 解説

方針・初手
- 問1:多項式の割り算を筆算などで実行し、商 $Q(x)$ と余り $R(x)$ を $a$ を用いて表します。その後、条件「$R(x)$ の $x$ の1次の項の係数が1」を用いて $a$ の値を定めます。
- 問2:常用対数の値が与えられていないことに着目します。$8.94$ を2乗すると $79.9236$ となり、$80$ に非常に近い値になることを利用し、$8.94^{18} = (8.94^2)^9 \approx 80^9$ と変形して、二項定理を用いて真の値との誤差を評価します。
解法1
問1
$x^5+2x^4+ax^3+3x^2+3x+2$ を $x^3+x^2+x+1$ で割る。
筆算(または係数比較)により計算する。
商に $x^2$ を立てて引く: $(x^5+2x^4+ax^3+3x^2+3x+2) - x^2(x^3+x^2+x+1) = x^4+(a-1)x^3+2x^2+3x+2$
商に $x$ を立てて引く: $\{x^4+(a-1)x^3+2x^2+3x+2\} - x(x^3+x^2+x+1) = (a-2)x^3+x^2+2x+2$
商に $a-2$ を立てて引く: $\{(a-2)x^3+x^2+2x+2\} - (a-2)(x^3+x^2+x+1) = (3-a)x^2+(4-a)x+(4-a)$
したがって、商 $Q(x)$ と余り $R(x)$ は以下のようになる。
$$ Q(x) = x^2 + x + (a-2), \qquad R(x) = (3-a)x^2 + (4-a)x + (4-a) $$
問題の条件より、$R(x)$ の $x$ の1次の項の係数が $1$ であるから、
$$ 4 - a = 1 \implies a = 3 $$
このとき、
$$ Q(x) = x^2 + x + 1, \qquad R(x) = x + 1 $$
問2
$8.94$ の2乗を計算すると、
$$ 8.94^2 = (9 - 0.06)^2 = 81 - 1.08 + 0.0036 = 79.9236 $$
したがって、求める値は
$$ 8.94^{18} = (8.94^2)^9 = 79.9236^9 = 80^9 \times \left(\frac{79.9236}{80}\right)^9 = 80^9 \times (1 - 0.000955)^9 $$
となる。
まず、$80^9$ の値を計算する。
$$ 80^9 = (8 \times 10)^9 = 8^9 \times 10^9 = 2^{27} \times 10^9 $$
$2^{10} = 1024$ であるから、
$$ 2^{27} = 2^{20} \times 2^7 = (2^{10})^2 \times 128 = 1024^2 \times 128 = 1{,}048{,}576 \times 128 = 134{,}217{,}728 $$
よって、
$$ 80^9 = 134{,}217{,}728 \times 10^9 = 1.34217728 \times 10^{17} $$
次に、$(1 - 0.000955)^9$ の値を評価する。$\alpha = 0.000955$ とおくと、二項定理より
$$\begin{aligned} (1-\alpha)^9 &= 1 - 9\alpha + 36\alpha^2 - 84\alpha^3 + \cdots \\ &= 1 - 9 \times 0.000955 + 36 \times (0.000955)^2 - \cdots \\ &= 1 - 0.008595 + 0.0000328 - \cdots \end{aligned}$$
部分和が交互に真値を挟むことから、
$$ 1 - 0.008595 < (1 - \alpha)^9 < 1 - 0.008595 + 0.0000328 $$
すなわち $0.9914 < (1-\alpha)^9 < 0.9915$ が成り立つ。
これらを用いると、
$$ 8.94^{18} = 1.34217728 \times 10^{17} \times (1 - 0.000955)^9 $$
したがって、$8.94^{18}$ の取り得る範囲は
$$ 1.3421 \times 0.9914 \times 10^{17} < 8.94^{18} < 1.3422 \times 0.9915 \times 10^{17} $$
ここで、それぞれの辺の上位の桁を計算すると、
- 下限:$1.3421 \times 0.9914 \approx 1.3305$
- 上限:$1.3422 \times 0.9915 \approx 1.3307$
より、
$$ 1.3305 \times 10^{17} < 8.94^{18} < 1.3307 \times 10^{17} $$
であることが分かる。
ゆえに、$8.94^{18}$ の値は $1.33\cdots \times 10^{17}$ と表されるので、整数部分は18桁($10^{17}$ の位が最高位)であり、最高位からの2桁の数字は $\mathbf{13}$ である。
解説
問1は数学IIの整式の割り算の基本問題です。文字 $a$ が含まれていても、通常通り $x$ の次数の高い項から順に消去していく計算を行うだけで確実に解くことができます。
問2は対数表を用いない近似計算の良問です。常用対数が与えられていないことから、$8.94 \approx 9$ として $9^{18}$ を考えるのでは精度が足りない($9^{18} \approx 1.50 \times 10^{17}$)と気づき、$8.94^2 \approx 80$ となる事実を見抜く必要があります。二項定理を用いた近似によって、手計算できる $2^{27}$ の値からの誤差を評価する手法は、難関大の整数・極限問題で時折出題される高度な計算力の見せどころです。
答え
問1: $a = 3,\quad Q(x) = x^2 + x + 1,\quad R(x) = x + 1$
問2: 整数部分は 18桁、最高位からの2桁の数字は 13
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