京都大学 1981年 理系 第6問 解説

方針・初手
(1) 定積分で表された関数を含む不等式の証明である。このタイプの問題は、両辺の差を一つの関数 $f(x)$ として置き、$x$ で微分して増減を調べるアプローチ(関数としての評価)が最も確実である。積分区間の上端に変数 $x$ があるため、微積分学の基本定理 $\frac{d}{dx}\int_a^x g(t)dt = g(x)$ が利用できる。
(2) (1) の結果を利用することが強く示唆されている。被積分関数 $e^{-\frac{t^2}{2}+2t}$ の指数部分を平方完成して、(1) と同じ $e^{-\frac{u^2}{2}}$ の形を作り出すために置換積分を行う。
解法1
(1) $0 < a \leqq x$ において、関数 $F(x)$ を次のように定義する。
$$ F(x) = \frac{1}{a} e^{-\frac{a^2}{2}} - \frac{1}{x} e^{-\frac{x^2}{2}} - \int_a^x e^{-\frac{t^2}{2}} dt $$
$F(x)$ を $x$ について微分すると、商の微分法および微積分学の基本定理より
$$ \begin{aligned} F'(x) &= 0 - \left\{ \left(-\frac{1}{x^2}\right) e^{-\frac{x^2}{2}} + \frac{1}{x} \cdot (-x) e^{-\frac{x^2}{2}} \right\} - e^{-\frac{x^2}{2}} \\ &= \frac{1}{x^2} e^{-\frac{x^2}{2}} + e^{-\frac{x^2}{2}} - e^{-\frac{x^2}{2}} \\ &= \frac{1}{x^2} e^{-\frac{x^2}{2}} \end{aligned} $$
$x > 0$ において常に $x^2 > 0$、$e^{-\frac{x^2}{2}} > 0$ であるから、$F'(x) > 0$ となる。 したがって、$F(x)$ は区間 $x \geqq a$ において単調に増加する。
ここで、$x=a$ のときの値を調べると、
$$ F(a) = \frac{1}{a} e^{-\frac{a^2}{2}} - \frac{1}{a} e^{-\frac{a^2}{2}} - \int_a^a e^{-\frac{t^2}{2}} dt = 0 - 0 = 0 $$
$F(x)$ は単調増加であり $F(a) = 0$ であるため、$x \geqq a$ において常に $F(x) \geqq 0$ が成り立つ。 よって、
$$ \frac{1}{a} e^{-\frac{a^2}{2}} - \frac{1}{x} e^{-\frac{x^2}{2}} - \int_a^x e^{-\frac{t^2}{2}} dt \geqq 0 $$
すなわち、
$$ \int_a^x e^{-\frac{t^2}{2}} dt \leqq \frac{1}{a} e^{-\frac{a^2}{2}} - \frac{1}{x} e^{-\frac{x^2}{2}} $$
が成り立つことが示された。(証明終)
(2) 証明すべき不等式の左辺の定積分について、被積分関数の指数部分を平方完成する。
$$ -\frac{t^2}{2} + 2t = -\frac{1}{2}(t^2 - 4t) = -\frac{1}{2}(t-2)^2 + 2 $$
これにより、定積分は次のように変形できる。
$$ \int_3^b e^{-\frac{t^2}{2} + 2t} dt = \int_3^b e^{-\frac{(t-2)^2}{2} + 2} dt = e^2 \int_3^b e^{-\frac{(t-2)^2}{2}} dt $$
ここで、$u = t-2$ と置換積分を行う。 $du = dt$ であり、積分区間は $t$ が $3 \to b$ のとき、$u$ は $1 \to b-2$ となる。 したがって、
$$ e^2 \int_3^b e^{-\frac{(t-2)^2}{2}} dt = e^2 \int_1^{b-2} e^{-\frac{u^2}{2}} du $$
となる。 条件 $3 < b$ より $1 < b-2$ であるから、(1) で示した不等式において $a=1, x=b-2$ としたものが適用できる。
$$ \int_1^{b-2} e^{-\frac{u^2}{2}} du \leqq \frac{1}{1} e^{-\frac{1^2}{2}} - \frac{1}{b-2} e^{-\frac{(b-2)^2}{2}} = e^{-\frac{1}{2}} - \frac{1}{b-2} e^{-\frac{(b-2)^2}{2}} $$
ここで、$b > 3$ より $b-2 > 1 > 0$ であり、$e^{-\frac{(b-2)^2}{2}} > 0$ であるから、
$$ \frac{1}{b-2} e^{-\frac{(b-2)^2}{2}} > 0 $$
である。よって、
$$ e^{-\frac{1}{2}} - \frac{1}{b-2} e^{-\frac{(b-2)^2}{2}} < e^{-\frac{1}{2}} $$
が成り立つ。これらをまとめると、
$$ \int_1^{b-2} e^{-\frac{u^2}{2}} du < e^{-\frac{1}{2}} $$
となる。両辺に正の数 $e^2$ を掛けて、
$$ e^2 \int_1^{b-2} e^{-\frac{u^2}{2}} du < e^2 \cdot e^{-\frac{1}{2}} = e^{\frac{3}{2}} $$
ゆえに、
$$ \int_3^b e^{-\frac{t^2}{2} + 2t} dt < e^{\frac{3}{2}} $$
が成り立つことが示された。(証明終)
解説
(1) のような「定積分を含んだ関数」の不等式の証明では、右辺から左辺を引いた式を $F(x)$ とおいて微分し、増減表から $F(x)$ の最小値が $0$ 以上であることを示すのが王道パターンである。本問は微分した結果が非常にシンプルに $\frac{1}{x^2}e^{-\frac{x^2}{2}}$ となるよう、右辺の形があらかじめ巧妙に調整されている。 (2) は典型的な「前問の結果の利用」である。平方完成と平行移動(置換積分)によって (1) と同じ形を作り出すことに気づけば、あとは代入するだけでスムーズに証明できる。最後に正の項($\frac{1}{b-2}e^{-\frac{(b-2)^2}{2}}$)を切り捨てて不等号を厳密な $<$ に変える論理展開も、難関大ではよく見られる手筋である。
答え
(1)
略(解法1の証明を参照)
(2)
略(解法1の証明を参照)
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