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九州大学 1985年 文系 第4問 解説

旧課程/行列・一次変換数学C/平面ベクトル数学2/式と証明テーマ/図形総合
九州大学 1985年 文系 第4問 解説

方針・初手

点 $P$ の座標から変換後の点 $P'$ の座標を求め、ベクトルや複素数を用いて $\angle POP'$ を数式で表現する。 (1) では成分条件を代入し、内積の定義式や複素数の偏角から角度が一定となることを示す。 (2) では「任意の点 $P$ について角度が一定」という条件を、円周上の動点に関する恒等式の問題に帰着させて係数比較を行う。

解法1

位置ベクトルを $\vec{p} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$、$\vec{p'} = \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix}$ とする。

(1)

$a=d, b=-c$ のとき、変換は以下のように表される。

$$ \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} ax - cy \\ cx + ay \end{pmatrix} $$

$\vec{p}$ と $\vec{p'}$ の内積は、

$$ \vec{p} \cdot \vec{p'} = x(ax-cy) + y(cx+ay) = a(x^2+y^2) = a|\vec{p}|^2 $$

また、$\vec{p'}$ の大きさの2乗は、

$$ |\vec{p'}|^2 = (ax-cy)^2 + (cx+ay)^2 = (a^2+c^2)(x^2+y^2) = (a^2+c^2)|\vec{p}|^2 $$

$ad-bc \neq 0$ に $a=d, b=-c$ を代入すると $a^2+c^2 \neq 0$ となる。 $\angle POP' = \theta \ (0 \le \theta \le \pi)$ とすると、

$$ \cos \theta = \frac{\vec{p} \cdot \vec{p'}}{|\vec{p}||\vec{p'}|} = \frac{a|\vec{p}|^2}{\sqrt{a^2+c^2}|\vec{p}|^2} = \frac{a}{\sqrt{a^2+c^2}} $$

$\cos \theta$ の値は点 $P$ の座標 $(x,y)$ に依存しない定数となる。 $0 \le \theta \le \pi$ の範囲で $\cos \theta$ の値が一つに定まれば $\theta$ は一意に定まるため、$\angle POP'$ は一定となることが示された。

(2)

$\angle POP' = \theta \ (0 \le \theta \le \pi)$ が一定であるとする。 $P$ を原点中心の単位円上の点とし、$P(\cos\phi, \sin\phi)$ とおく。

$$ \vec{p} = \begin{pmatrix} \cos\phi \\ \sin\phi \end{pmatrix}, \quad \vec{p'} = \begin{pmatrix} a\cos\phi+b\sin\phi \\ c\cos\phi+d\sin\phi \end{pmatrix} $$

内積を $N(\phi) = \vec{p} \cdot \vec{p'}$、外積に相当する成分(平行四辺形の符号付き面積)を $S(\phi) = x y' - y x'$ とすると、加法定理などの三角関数の公式を用いて次のように整理できる。

$$ \begin{aligned} N(\phi) &= a\cos^2\phi + (b+c)\sin\phi\cos\phi + d\sin^2\phi \\ &= \frac{a+d}{2} + \frac{a-d}{2}\cos 2\phi + \frac{b+c}{2}\sin 2\phi \end{aligned} $$

$$ \begin{aligned} S(\phi) &= \cos\phi(c\cos\phi+d\sin\phi) - \sin\phi(a\cos\phi+b\sin\phi) \\ &= c\cos^2\phi + (d-a)\sin\phi\cos\phi - b\sin^2\phi \\ &= \frac{c-b}{2} + \frac{c+b}{2}\cos 2\phi + \frac{d-a}{2}\sin 2\phi \end{aligned} $$

なす角 $\theta$ の定義より $\vec{p} \cdot \vec{p'} = |\vec{p}||\vec{p'}|\cos\theta$ であるから、$N(\phi) = |\vec{p'}|\cos\theta$。 また、図形的な面積の関係から $|S(\phi)| = |\vec{p}||\vec{p'}|\sin\theta = |\vec{p'}|\sin\theta$ となる。 $ad-bc \neq 0$ より $\vec{p'} \neq \vec{0}$ であり、$S(\phi)$ は連続関数であるから、常に $S(\phi) = |\vec{p'}|\sin\theta$ であるか、常に $S(\phi) = -|\vec{p'}|\sin\theta$ であるかのいずれかである。

(i) $\sin\theta = 0$ のとき すべての $\phi$ について $S(\phi) = 0$ となるため、

$$ \frac{c-b}{2} + \frac{c+b}{2}\cos 2\phi + \frac{d-a}{2}\sin 2\phi = 0 $$

これが $\phi$ についての恒等式となる。各係数が $0$ となるため、

$$ c-b = 0, \quad c+b = 0, \quad d-a = 0 $$

これを解くと $b=c=0, a=d$ を得るので、$a=d, b=-c$ が成り立つ。

(ii) $\sin\theta \neq 0$ のとき $S(\phi) \neq 0$ であり、$N(\phi) / S(\phi) = \pm \frac{\cos\theta}{\sin\theta}$ となり、これは $\phi$ に依存しない定数である。 この定数を $k$ とおくと、すべての $\phi$ について $N(\phi) = k S(\phi)$ が成り立つ。

$$ \frac{a+d}{2} + \frac{a-d}{2}\cos 2\phi + \frac{b+c}{2}\sin 2\phi = k \left( \frac{c-b}{2} + \frac{c+b}{2}\cos 2\phi + \frac{d-a}{2}\sin 2\phi \right) $$

これが恒等式であるから、係数を比較して以下の連立方程式を得る。

$$ \begin{cases} a+d = k(c-b) \\ a-d = k(c+b) \\ b+c = k(d-a) \end{cases} $$

第2式と第3式から、

$$ a-d = k(c+b) = k \{ k(d-a) \} = -k^2(a-d) $$

$$ (1+k^2)(a-d) = 0 $$

$k$ は実数であるから $1+k^2 \neq 0$。よって $a-d = 0$ すなわち $a=d$ を得る。 これを第2式に代入すると $k(c+b) = 0$ となる。 $k=0$ の場合、第1式より $a+d=0$ となり $a=d=0$。第3式より $b+c=0$ すなわち $b=-c$ となる。 $c+b=0$ の場合、直接 $b=-c$ を得る。 いずれの場合も $a=d, b=-c$ が成り立つことが示された。

解法2

座標平面上の点 $P(x,y)$ を複素数 $z = x+iy$ で表す。 $P'(x',y')$ に対応する複素数を $z' = x'+iy'$ とする。 与えられた1次変換の式より、

$$ z' = ax+by + i(cx+dy) $$

ここで、$x = \frac{z+\bar{z}}{2}, y = \frac{z-\bar{z}}{2i} = -\frac{i}{2}(z-\bar{z})$ を代入して整理する。

$$ \begin{aligned} z' &= a \frac{z+\bar{z}}{2} - ib \frac{z-\bar{z}}{2} + ic \frac{z+\bar{z}}{2} + d \frac{z-\bar{z}}{2} \\ &= \frac{(a+d) + i(c-b)}{2} z + \frac{(a-d) + i(c+b)}{2} \bar{z} \end{aligned} $$

$\alpha = \frac{(a+d) + i(c-b)}{2}, \beta = \frac{(a-d) + i(c+b)}{2}$ とおくと、$z' = \alpha z + \beta \bar{z}$ と表せる。

(1)

$a=d, b=-c$ のとき、$\beta = 0$ となる。 したがって $z' = \alpha z$ である。 また、$ad-bc \neq 0$ かつ $a=d, b=-c$ より $a^2+c^2 \neq 0$ であるから、$\alpha = a+ic \neq 0$ である。 点 $P$ は原点以外の任意の点であるから $z \neq 0$ であり、

$$ \frac{z'}{z} = \alpha $$

両辺の偏角をとると $\arg\left(\frac{z'}{z}\right) = \arg \alpha$。 これは複素数 $z$ の取り方によらず一定の角度を持つことを意味するため、原点周りの回転角は一定であり、$\angle POP'$ も一定となることが示された。

(2)

$z \neq 0$ なる任意の $z$ に対して $\angle POP' = \theta$ が一定であるとする。

$$ \frac{z'}{z} = \alpha + \beta \frac{\bar{z}}{z} $$

点 $P$ が原点を中心とする単位円周上を動くとき、$z = e^{it} \ (0 \le t < 2\pi)$ とおける。 このとき $\frac{\bar{z}}{z} = \frac{e^{-it}}{e^{it}} = e^{-2it}$ であるから、

$$ w = \frac{z'}{z} = \alpha + \beta e^{-2it} $$

$t$ が $0$ から $2\pi$ まで動くとき、複素数 $w$ は複素数平面上で、中心 $\alpha$、半径 $|\beta|$ の円($|\beta|=0$ のときは点)を描く。 一方で、$\angle POP' = \theta$ であることは、ベクトル $z$ と $z'$ のなす角が一定であることを意味し、複素数平面においては $w$ の偏角(主値を $-\pi < \arg w \le \pi$ としたときの絶対値)が一定であることを意味する。 すなわち、$w$ の軌跡は原点を端点とする特定の半直線(または2本の半直線)上にのみ存在しなければならない。 円軌道がこれらの半直線上に完全に含まれるための条件は、円の半径 $|\beta|$ が $0$ になることである。 よって $\beta = 0$ である。

$$ \frac{(a-d) + i(c+b)}{2} = 0 $$

これより実部と虚部を比較して、$a-d = 0$ かつ $c+b = 0$。 すなわち $a=d$ かつ $b=-c$ であることが示された。

解説

1次変換によって原点周りのなす角が一定になる条件を求める問題である。 行列 $\begin{pmatrix} a & -c \\ c & a \end{pmatrix}$ が「回転と相似拡大」の合成変換を表すことを背景としている。 解法1のようにベクトルの成分で愚直に恒等式を立てる方法が確実だが、解法2のように複素数平面における1次変換 $z' = \alpha z + \beta \bar{z}$ を利用すると、軌跡の幾何的な性質から見通しよく解くことができる。

答え

(1) 題意の通り示された。(成分の計算、または複素数の偏角が一定となることから証明) (2) 題意の通り示された。(なす角が一定であることによる恒等式、または複素数平面上の軌跡の条件から導出)

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