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九州大学 1986年 文系 第2問 解説

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九州大学 1986年 文系 第2問 解説

方針・初手

「任意の単位ベクトル $\vec{d}$ に対して一定の値をとる」という条件が強力です。任意である以上、都合の良い具体的な単位ベクトルを代入して式を立てる方針が有効です。

(1) では、空間の互いに直交する3つの基本ベクトル(正規直交基底)を順番に $\vec{d}$ に代入し、それらを足し合わせることで、ベクトルの成分や大きさの性質を利用します。 (2) では、(1) で求めた一定の値を用います。$\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ 自身も単位ベクトルであることに着目し、これらを $\vec{d}$ に代入することで内積の条件を引き出します。

解法1

(1)

空間の正規直交基底を $\vec{e}_1, \vec{e}_2, \vec{e}_3$ とおく。 これらはすべて大きさが $1$ の単位ベクトルであるから、問題の条件式において $\vec{d} = \vec{e}_1, \vec{e}_2, \vec{e}_3$ とすると、それぞれ以下の式が成り立つ。

$$(\vec{a}\cdot\vec{e}_1)^2 + (\vec{b}\cdot\vec{e}_1)^2 + (\vec{c}\cdot\vec{e}_1)^2 = k$$

$$(\vec{a}\cdot\vec{e}_2)^2 + (\vec{b}\cdot\vec{e}_2)^2 + (\vec{c}\cdot\vec{e}_2)^2 = k$$

$$(\vec{a}\cdot\vec{e}_3)^2 + (\vec{b}\cdot\vec{e}_3)^2 + (\vec{c}\cdot\vec{e}_3)^2 = k$$

これら3つの式の辺々を加えると、次式を得る。

$$\sum_{i=1}^3 (\vec{a}\cdot\vec{e}_i)^2 + \sum_{i=1}^3 (\vec{b}\cdot\vec{e}_i)^2 + \sum_{i=1}^3 (\vec{c}\cdot\vec{e}_i)^2 = 3k$$

ここで、空間内の任意のベクトル $\vec{v}$ は、正規直交基底を用いて $\vec{v} = (\vec{v}\cdot\vec{e}_1)\vec{e}_1 + (\vec{v}\cdot\vec{e}_2)\vec{e}_2 + (\vec{v}\cdot\vec{e}_3)\vec{e}_3$ と成分表示できる。 したがって、その大きさの2乗は各成分の2乗の和となるため、

$$|\vec{v}|^2 = (\vec{v}\cdot\vec{e}_1)^2 + (\vec{v}\cdot\vec{e}_2)^2 + (\vec{v}\cdot\vec{e}_3)^2$$

が成り立つ。 $\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ は単位ベクトルであるため、$|\vec{a}|^2 = 1, |\vec{b}|^2 = 1, |\vec{c}|^2 = 1$ である。 これを先ほどの和の式に適用すると、

$$|\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 + |\vec{c}|^2 = 3k$$

$$1 + 1 + 1 = 3k$$

よって、$k = 1$ である。

(2)

(1) の結果より、任意の単位ベクトル $\vec{d}$ に対して、

$$(\vec{a}\cdot\vec{d})^2 + (\vec{b}\cdot\vec{d})^2 + (\vec{c}\cdot\vec{d})^2 = 1$$

が成り立つ。 $\vec{a}$ は単位ベクトルであるから、$\vec{d} = \vec{a}$ を代入してもこの等式は成立する。

$$(\vec{a}\cdot\vec{a})^2 + (\vec{b}\cdot\vec{a})^2 + (\vec{c}\cdot\vec{a})^2 = 1$$

ここで、$\vec{a}\cdot\vec{a} = |\vec{a}|^2 = 1$ であるから、

$$1^2 + (\vec{a}\cdot\vec{b})^2 + (\vec{c}\cdot\vec{a})^2 = 1$$

$$(\vec{a}\cdot\vec{b})^2 + (\vec{c}\cdot\vec{a})^2 = 0$$

実数の2乗は $0$ 以上であるため、和が $0$ になるのはそれぞれの項が $0$ のときに限られる。 したがって、

$$\vec{a}\cdot\vec{b} = 0 \quad \text{かつ} \quad \vec{c}\cdot\vec{a} = 0$$

である。 同様に、$\vec{b}$ も単位ベクトルであるから、$\vec{d} = \vec{b}$ を代入すると、$\vec{b}\cdot\vec{b} = |\vec{b}|^2 = 1$ より、

$$(\vec{a}\cdot\vec{b})^2 + 1^2 + (\vec{c}\cdot\vec{b})^2 = 1$$

$$(\vec{a}\cdot\vec{b})^2 + (\vec{b}\cdot\vec{c})^2 = 0$$

したがって、

$$\vec{a}\cdot\vec{b} = 0 \quad \text{かつ} \quad \vec{b}\cdot\vec{c} = 0$$

である。 以上より、$\vec{a}\cdot\vec{b} = 0$、$\vec{b}\cdot\vec{c} = 0$、$\vec{c}\cdot\vec{a} = 0$ がすべて成り立つため、$\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ は互いに直交することが示された。

解説

「任意の $\vec{d}$ について成立する」という条件から、必要条件として都合の良い $\vec{d}$ を代入して情報を引き出すのが定石です。 (1) では成分計算(基本ベクトルの代入)によってベクトルの大きさとの関係を導く発想が問われています。成分を直接 $(x, y, z)$ と置いて恒等式として係数比較をすることでも解けますが、正規直交基底を用いると非常に簡潔に記述できます。 (2) では「$\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ 自身が単位ベクトルである」という問題文の前提を最大限に利用し、それらを $\vec{d}$ に代入することで、内積に関する条件(直交条件)を鮮やかに導出できます。実数の2乗の和が $0$ になるという性質の利用は頻出の論理展開です。

答え

(1) $k = 1$

(2) 解法に記載の通り、$\vec{a}\cdot\vec{b} = \vec{b}\cdot\vec{c} = \vec{c}\cdot\vec{a} = 0$ を導き、互いに直交することを示した。

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