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九州大学 1994年 文系 第2問 解説

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九州大学 1994年 文系 第2問 解説

方針・初手

(1) は定義に従って変換の式を成分ごとに計算し、行列表現を求めます。

(2) は点 $(1, 1)$ を変換した像の座標 $(X, Y)$ を $k$ の式で表し、媒介変数 $k$ を消去して $X, Y$ の関係式(軌跡の方程式)を導きます。

(3) は本問の核心です。「$k$ を適当に動かすことにより、$D_2$ の少なくとも 1 点が指定の領域に含まれる」という条件を論理式で捉え直します。「ある $D_1$ 上の点 $(x, y)$ とある実数 $k$ が存在して、その像が目標の領域に入る」と同値です。(2) の結果から類推されるように、変換 $f$ が特定の方向に沿った直線上を動く変換であることに着目し、パラメータを置き換えることで図形的な条件に帰着させます。

解法1

(1)

変換 $f$ の式を展開し、行列表記に変形する。

$$\begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} + k(x+y)\begin{pmatrix} 1 \\ m \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x + kx + ky \\ y + kmx + kmy \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} (1+k)x + ky \\ kmx + (1+km)y \end{pmatrix}$$

これを行列を用いて表すと、以下のようになる。

$$\begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1+k & k \\ km & 1+km \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$$

よって、変換 $f$ を表す行列は $\begin{pmatrix} 1+k & k \\ km & 1+km \end{pmatrix}$ である。

(2)

点 $(1, 1)$ の $f$ による像の座標を $(X, Y)$ とおく。(1) の結果を用いると、

$$\begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1+k & k \\ km & 1+km \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1+2k \\ 1+2km \end{pmatrix}$$

すなわち、$X = 1+2k$、$Y = 1+2km$ である。 第1式より $2k = X - 1$ となり、これを第2式に代入すると、

$$Y = 1 + m(X - 1)$$

$k$ がすべての実数値をとって変化するとき、$X$ もすべての実数値をとりうる。 したがって、求める図形は、点 $(1, 1)$ を通り、傾き $m$ の直線である。 方程式で表すと、直線 $y = m(x-1) + 1$ となる。

(3)

円 $(x-4)^2 + (y-3)^2 \leqq 1$ が表す領域を $D_3$ とおく。 条件は、「ある点 $P(x, y) \in D_1$ とある実数 $k$ が存在して、$f(P) \in D_3$ となる」ことである。

点 $P(x, y)$ の像 $P'$ は、ベクトル表記を用いると次のように表せる。

$$\vec{OP'} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} + k(x+y)\begin{pmatrix} 1 \\ m \end{pmatrix}$$

ここで、$D_1$ は中心 $(1, 1)$、半径 $1$ の円およびその内部である。 中心 $(1, 1)$ と直線 $x+y=0$ の距離は $\frac{|1+1|}{\sqrt{1^2+1^2}} = \sqrt{2}$ であり、これは円の半径 $1$ より大きい。したがって、領域 $D_1$ は直線 $x+y=0$ と共有点をもたず、$D_1$ 上の任意の点 $(x, y)$ において $x+y > 0$ が成り立つ。

ゆえに、$P(x, y) \in D_1$ を固定したとき、$k$ がすべての実数値を動けば、$t = k(x+y)$ もすべての実数値を動く。 これにより、求める条件は「ある点 $P(x, y) \in D_1$ とある実数 $t$ が存在して、$P + t\begin{pmatrix} 1 \\ m \end{pmatrix} \in D_3$ となる」ことと言い換えられる。 これは図形的には、「$D_1$ 内の点 $P$ を通り、方向ベクトル $\begin{pmatrix} 1 \\ m \end{pmatrix}$ (傾き $m$)をもつ直線が、$D_3$ と共有点をもつ」ことを意味し、さらに言えば「傾き $m$ の直線で、$D_1$ および $D_3$ の両方と共有点をもつものが存在する」ことと同値である。

傾き $m$ の直線を $mx - y + c = 0$ とおく。 この直線が $D_1$ と共有点をもつ条件は、中心 $(1, 1)$ との距離が半径 $1$ 以下となることである。

$$\frac{|m - 1 + c|}{\sqrt{m^2+1}} \leqq 1$$

$$1 - m - \sqrt{m^2+1} \leqq c \leqq 1 - m + \sqrt{m^2+1} \quad \cdots \text{(A)}$$

同様に、この直線が $D_3$ と共有点をもつ条件は、中心 $(4, 3)$ との距離が半径 $1$ 以下となることである。

$$\frac{|4m - 3 + c|}{\sqrt{m^2+1}} \leqq 1$$

$$3 - 4m - \sqrt{m^2+1} \leqq c \leqq 3 - 4m + \sqrt{m^2+1} \quad \cdots \text{(B)}$$

(A) と (B) を同時に満たす実数 $c$ が存在する条件は、(A) の区間の下端が (B) の区間の上端以下であり、かつ (B) の区間の下端が (A) の区間の上端以下であることである。

$$1 - m - \sqrt{m^2+1} \leqq 3 - 4m + \sqrt{m^2+1}$$

かつ

$$3 - 4m - \sqrt{m^2+1} \leqq 1 - m + \sqrt{m^2+1}$$

不等式を整理すると、それぞれ $3m - 2 \leqq 2\sqrt{m^2+1}$ および $2 - 3m \leqq 2\sqrt{m^2+1}$ となり、これらはまとめて次のように表せる。

$$|3m - 2| \leqq 2\sqrt{m^2+1}$$

両辺はともに負ではないので、両辺を $2$ 乗しても同値である。

$$(3m - 2)^2 \leqq 4(m^2+1)$$

$$9m^2 - 12m + 4 \leqq 4m^2 + 4$$

$$5m^2 - 12m \leqq 0$$

$$m(5m - 12) \leqq 0$$

これを解いて、求める $m$ の範囲は $0 \leqq m \leqq \frac{12}{5}$ となる。

解法2

(3) の図形的な別解

「傾き $m$ の直線で、領域 $D_1$ および $D_3$ の両方と共有点をもつものが存在する」という条件までの言い換えは解法1と同じである。

$D_1$ は中心 $C_1(1, 1)$、半径 $1$ の円であり、$D_3$ は中心 $C_3(4, 3)$、半径 $1$ の円である。 半径が等しい 2 つの円の両方と交わる平行な直線の傾き $m$ の範囲を考える。このような直線が存在するためには、その傾き $m$ が、2 円の共通接線の傾きの間にあればよい。

2 円の共通外接線は、中心同士を結ぶ直線 $C_1C_3$ に平行であり、その傾きは $\frac{3-1}{4-1} = \frac{2}{3}$ である。

一方、2 円の共通内接線は、線分 $C_1C_3$ の中点 $M\left(\frac{5}{2}, 2\right)$ を通る。 点 $M$ を通る傾き $m$ の直線を $y - 2 = m\left(x - \frac{5}{2}\right)$、すなわち $mx - y - \frac{5}{2}m + 2 = 0$ とおく。 この直線が $D_1$ に接する条件は、中心 $C_1(1, 1)$ との距離が半径 $1$ と等しくなることである。

$$\frac{\left|m - 1 - \frac{5}{2}m + 2\right|}{\sqrt{m^2+(-1)^2}} = 1$$

$$\frac{\left|1 - \frac{3}{2}m\right|}{\sqrt{m^2+1}} = 1$$

分母をはらって両辺を $2$ 乗する。

$$\left(1 - \frac{3}{2}m\right)^2 = m^2 + 1$$

$$1 - 3m + \frac{9}{4}m^2 = m^2 + 1$$

$$\frac{5}{4}m^2 - 3m = 0$$

$$m(5m - 12) = 0$$

これより、共通内接線の傾きは $m = 0, \frac{12}{5}$ と求まる。 共通外接線の傾き $\frac{2}{3}$ は $0 < \frac{2}{3} < \frac{12}{5}$ を満たしており、両方の円と交わる直線の傾き $m$ が取りうる範囲は、2 本の共通内接線の傾きの間となる。 したがって、求める $m$ の範囲は $0 \leqq m \leqq \frac{12}{5}$ である。

解説

(3) において、$k$ と $(x+y)$ が積の形になっていることに注目し、パラメータの自由度を適切に評価できるかが最大のポイントです。$D_1$ 上で $x+y > 0$ であることを確認したうえで $t = k(x+y)$ と置き換えることで、問題を「特定の方向をもつ直線の通過領域」または「2 円と交わる直線の存在条件」という見慣れた図形問題に帰着させることができます。

解法1のように式変形で愚直に共通範囲の存在条件を求めることも可能ですが、解法2のように共通接線に着目して幾何学的に処理するほうが、計算量が少なく論理の見通しも良くなります。

答え

(1) $\begin{pmatrix} 1+k & k \\ km & 1+km \end{pmatrix}$

(2) 点 $(1, 1)$ を通り、傾き $m$ の直線(直線 $y = m(x-1) + 1$)

(3) $0 \leqq m \leqq \frac{12}{5}$

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