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九州大学 2003年 理系 第7問 解説

旧課程/行列・一次変換数学2/図形と式テーマ/最大・最小テーマ/軌跡・領域
九州大学 2003年 理系 第7問 解説

方針・初手

行列の逆行列を用いて連立方程式を解き、点 $Q$ の座標をパラメータ $a, b$ で表すことが第一歩である。(1) は分数の形の式の最大値を求める問題に、(2) は2変数の2次関数の最小値を求める問題に帰着される。(2) では和と差を用いた変数変換により、2次式を平方完成しやすい形に変形することが有効である。

解法1

(1) 与えられた行列 $A = \frac{1}{3} \begin{pmatrix} 2 & -1 \\ -1 & 2 \end{pmatrix}$ の行列式は、

$$ |A| = \left(\frac{1}{3}\right)^2 \{ 2 \cdot 2 - (-1) \cdot (-1) \} = \frac{1}{9} \cdot 3 = \frac{1}{3} \neq 0 $$

であるから、逆行列 $A^{-1}$ が存在し、

$$ A^{-1} = \frac{1}{1/3} \cdot \frac{1}{3} \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} $$

となる。$AX=B$ より $X = A^{-1}B$ であるから、

$$ \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1+a \\ -1+b \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2(1+a)+(-1+b) \\ (1+a)+2(-1+b) \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1+2a+b \\ -1+a+2b \end{pmatrix} $$

よって、点 $Q$ の座標は $Q(1+2a+b, -1+a+2b)$ である。

点 $P$ が原点 $O(0,0)$ にあるとき、$a=0, b=0$ となり、点 $Q$ は点 $R$ に一致する。よって、$R(1, -1)$ である。

これより、ベクトル $\vec{RQ}$ は次のように表される。

$$ \vec{RQ} = \vec{OQ} - \vec{OR} = \begin{pmatrix} 1+2a+b \\ -1+a+2b \end{pmatrix} - \begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2a+b \\ a+2b \end{pmatrix} $$

したがって、線分 $RQ$ の長さの2乗は、

$$ RQ^2 = (2a+b)^2 + (a+2b)^2 = 5a^2 + 8ab + 5b^2 $$

となる。また、$P \neq O$ より $OP^2 = a^2 + b^2 > 0$ であるから、

$$ \frac{RQ^2}{OP^2} = \frac{5a^2 + 8ab + 5b^2}{a^2 + b^2} = \frac{5(a^2+b^2) + 8ab}{a^2 + b^2} = 5 + \frac{8ab}{a^2 + b^2} $$

ここで、実数 $a,b$ について $(a-b)^2 \geqq 0$ より $2ab \leqq a^2+b^2$ が成り立つ。$a^2+b^2 > 0$ であるから、両辺を $a^2+b^2$ で割って

$$ \frac{2ab}{a^2+b^2} \leqq 1 $$

を得る。よって、

$$ \frac{RQ^2}{OP^2} = 5 + 4 \cdot \frac{2ab}{a^2+b^2} \leqq 5 + 4 \cdot 1 = 9 $$

$\frac{RQ}{OP} > 0$ であるから、$\frac{RQ}{OP} \leqq 3$ となり、最大値は $3$ である。

等号成立条件は $a=b$ かつ $P \neq O$(すなわち $a \neq 0$)である。 点 $P$ の動く範囲は $|a| \leqq \frac{1}{2}$ かつ $|b| \leqq \frac{1}{2}$ であるため、最大値を与える点 $P(a,b)$ の全体は $y=x$ 上の $-\frac{1}{2} \leqq x \leqq \frac{1}{2}$ の範囲から原点を除いた線分である。

(2) $OQ^2$ を $a, b$ で表すと、

$$ OQ^2 = (1+2a+b)^2 + (-1+a+2b)^2 = (1+2a+b)^2 + (1-a-2b)^2 $$

これを展開して整理すると、

$$ OQ^2 = 5a^2 + 8ab + 5b^2 + 2a - 2b + 2 $$

ここで、$u = a+b, v = a-b$ と変数変換する。$a = \frac{u+v}{2}, b = \frac{u-v}{2}$ であり、

$$ a^2+b^2 = \frac{u^2+v^2}{2}, \quad ab = \frac{u^2-v^2}{4} $$

これらを $OQ^2$ の式に代入すると、

$$ OQ^2 = 5 \cdot \frac{u^2+v^2}{2} + 8 \cdot \frac{u^2-v^2}{4} + 2 \cdot \frac{u+v}{2} - 2 \cdot \frac{u-v}{2} + 2 $$

$$ = \frac{5u^2+5v^2+4u^2-4v^2}{2} + 2v + 2 = \frac{9}{2}u^2 + \frac{1}{2}v^2 + 2v + 2 $$

$$ = \frac{9}{2}u^2 + \frac{1}{2}(v+2)^2 $$

点 $P(a,b)$ は $|a| \leqq \frac{1}{2}$ かつ $|b| \leqq \frac{1}{2}$ を満たす。これを $u, v$ の条件に書き換える。

$-\frac{1}{2} \leqq \frac{u+v}{2} \leqq \frac{1}{2}$ より $-1 \leqq u+v \leqq 1$。 $-\frac{1}{2} \leqq \frac{u-v}{2} \leqq \frac{1}{2}$ より $-1 \leqq u-v \leqq 1$。

これらを同時に満たす $(u,v)$ の領域は、点 $(1,0), (0,1), (-1,0), (0,-1)$ を頂点とする正方形の内部および周であり、不等式 $|u| + |v| \leqq 1$ で表される。

$u,v$ がこの領域を動くときの $f(u,v) = \frac{9}{2}u^2 + \frac{1}{2}(v+2)^2$ の最小値を考える。

$u^2 \geqq 0$ であるから、任意の $v$ に対し $u=0$ のとき小さくなる。領域内には $u=0$ のとき $-1 \leqq v \leqq 1$ となる点が存在する。 このとき、

$$ f(0, v) = \frac{1}{2}(v+2)^2 $$

となり、$-1 \leqq v \leqq 1$ の範囲において、これは $v=-1$ のとき最小値 $\frac{1}{2}$ をとる。 さらに、領域全体において $v \geqq -1$ であるから $v+2 \geqq 1$ となり、$\frac{1}{2}(v+2)^2 \geqq \frac{1}{2}$ が常に成り立つ。これと $\frac{9}{2}u^2 \geqq 0$ を合わせると、領域全体で $f(u,v) \geqq \frac{1}{2}$ が保証される。

したがって、$OQ^2$ の最小値は $\frac{1}{2}$ であり、$OQ$ の最小値は $\frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{2}$ である。 このとき $u=0, v=-1$ であるから、

$$ a = \frac{0-1}{2} = -\frac{1}{2}, \quad b = \frac{0-(-1)}{2} = \frac{1}{2} $$

よって、最小値を与える点 $P$ の座標は $\left(-\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)$ である。

解法2

(1) の別解 (1) において、

$$ \vec{RQ} = \begin{pmatrix} 2a+b \\ a+2b \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix} $$

ここで、行列 $C = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix}$ とおくと、$\vec{RQ} = C \vec{OP}$ と表せる。 求める値は $\frac{|\vec{RQ}|}{|\vec{OP}|} = \frac{|C \vec{OP}|}{|\vec{OP}|}$ の最大値である。

行列 $C$ の固有値 $\lambda$ は、特性方程式

$$ |C - \lambda E| = \begin{vmatrix} 2-\lambda & 1 \\ 1 & 2-\lambda \end{vmatrix} = (2-\lambda)^2 - 1 = 0 $$

より、$\lambda = 1, 3$ である。

実対称行列 $C$ の相異なる固有値に対応する固有ベクトルは直交する。 $\lambda = 3$ の固有ベクトルの一つは $\vec{u}_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix}$ $\lambda = 1$ の固有ベクトルの一つは $\vec{u}_2 = \begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix}$

$\vec{u}_1, \vec{u}_2$ を正規化したものをそれぞれ $\vec{e}_1, \vec{e}_2$ とすると、これらは正規直交基底をなす。 任意のベクトル $\vec{OP}$ を $\vec{OP} = s \vec{e}_1 + t \vec{e}_2$ と表すと、$C \vec{OP} = 3s \vec{e}_1 + t \vec{e}_2$ となる。 よって、

$$ \frac{|C \vec{OP}|^2}{|\vec{OP}|^2} = \frac{9s^2 + t^2}{s^2 + t^2} = \frac{9(s^2+t^2) - 8t^2}{s^2 + t^2} = 9 - \frac{8t^2}{s^2 + t^2} \leqq 9 $$

等号は $t=0$ のときに成り立つ。このとき、$\vec{OP}$ は $\vec{e}_1$ に平行、すなわち $b=a$ である。

点 $P(a, a)$ が与えられた領域 $|a| \leqq \frac{1}{2}, |b| \leqq \frac{1}{2}$ かつ $P \neq O$ に存在するか確認すると、$-\frac{1}{2} \leqq a \leqq \frac{1}{2}$ かつ $a \neq 0$ を満たすすべての $a$ について存在する。

したがって、$\frac{RQ}{OP}$ の最大値は $\sqrt{9} = 3$ であり、最大値を与える点 $P$ の全体は、線分 $y=x$ ($-\frac{1}{2} \leqq x \leqq \frac{1}{2}$) のうち原点 $(0,0)$ を除いた部分である。

解説

(1) はベクトルの大きさの比を求める問題であるが、成分計算を行うと「2次の同次式の比」となり、相加・相乗平均の関係や $(a-b)^2 \geqq 0$ などの基本的な絶対不等式で処理できる。また、解法2で示したように行列の線形変換と固有値の知識(レイリー商)を用いると、幾何学的により本質的な理解が可能になる。

(2) は2変数の2次式の最小化である。対称な式ではないが、和と差を変数($u = a+b, v = a-b$)として変換することで、クロスターム($ab$ の項)を消去し、各変数が独立した平方完成の形に持ち込める。元の変数の定義域を変換後の変数の定義域へ正しく写像することが最大のポイントである。

答え

(1) 最大値は $3$ 最大値を与える点 $P$ の全体は、線分 $y=x$ の $-\frac{1}{2} \leqq x \leqq \frac{1}{2}$ の部分(ただし、原点 $(0,0)$ を除く)。

(2) $OQ$ の最小値は $\frac{\sqrt{2}}{2}$ 最小値を与える点 $P$ の座標は $\left(-\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)$

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