九州大学 1979年 理系 第5問 解説

方針・初手
(1) については、まず関数 $f(x)$ の式を展開して整理し、導関数を求めて増減を調べます。関数が偶関数であることと、区間による単調性を利用して不等式を示します。
(2) については、(1) の結果から2つの曲線の上下関係が確定します。各曲線が $x$ 軸と交わる点を求め、グラフの概形を把握して積分区間を設定します。そのまま積分すると計算が煩雑になるため、置換積分を用いて定積分の形を工夫することがポイントです。
解法1
(1)
$f(x)$ を展開して整理する。
$$f(x) = (e^x - e)(e^{-x} - e) = e^x e^{-x} - e(e^x + e^{-x}) + e^2 = -e(e^x + e^{-x}) + e^2 + 1$$
$f(x)$ を微分する。
$$f'(x) = -e(e^x - e^{-x})$$
$f'(x) = 0$ となるのは $e^x = e^{-x}$、すなわち $x = 0$ のときである。 $x > 0$ のとき、$e^x > 1 > e^{-x}$ より $e^x - e^{-x} > 0$ となり、$f'(x) < 0$ である。 $x < 0$ のとき、$e^x < 1 < e^{-x}$ より $e^x - e^{-x} < 0$ となり、$f'(x) > 0$ である。 したがって、$f(x)$ は $x \leqq 0$ において単調に増加し、$x \geqq 0$ において単調に減少する。
また、任意の $x$ に対して以下の式が成り立つ。
$$f(-x) = -e(e^{-x} + e^x) + e^2 + 1 = f(x)$$
よって、$f(x)$ は偶関数である。
ここで、任意の実数 $x$ と正の数 $a$ について考える。$a > 0$ より $a+1 > a > 0$ であるから、$x \neq 0$ のとき、絶対値をとったものは以下の大小関係を満たす。
$$0 < \frac{|x|}{a+1} < \frac{|x|}{a}$$
$f(x)$ は $x \geqq 0$ において単調減少であるため、以下の不等式が成り立つ。
$$f\left( \frac{|x|}{a+1} \right) > f\left( \frac{|x|}{a} \right)$$
$f(x)$ は偶関数であり、$f(x) = f(|x|)$ が成り立つので、
$$f\left( \frac{x}{a+1} \right) > f\left( \frac{x}{a} \right)$$
一方、$x = 0$ のときは $\frac{0}{a+1} = \frac{0}{a} = 0$ であり、$f(0) \geqq f(0)$ が成り立つ(等号成立)。 以上より、任意の実数 $x$ に対して $f\left(\frac{x}{a+1}\right) \geqq f\left(\frac{x}{a}\right)$ が成り立つことが示された。
(2)
まず、$f(x) = 0$ となる $x$ を求める。 $(e^x - e)(e^{-x} - e) = 0$ より、$e^x = e$ または $e^{-x} = e$ となるため、$x = \pm 1$ である。 したがって、曲線 $y = f\left(\frac{x}{a+1}\right)$ が $x$ 軸と交わるのは $\frac{x}{a+1} = \pm 1$ より $x = \pm (a+1)$ のときである。 同様に、曲線 $y = f\left(\frac{x}{a}\right)$ が $x$ 軸と交わるのは $\frac{x}{a} = \pm 1$ より $x = \pm a$ のときである。
(1) の結果より、全ての実数 $x$ において $f\left(\frac{x}{a+1}\right) \geqq f\left(\frac{x}{a}\right)$ が成り立つ。 2つの関数はともに偶関数であるため、それらのグラフおよび $x$ 軸で囲まれた図形は $y$ 軸に関して対称である。 したがって、$x \geqq 0$ の部分の面積を $S_1$ とおくと、求める面積 $S$ は $S = 2S_1$ と表される。
$x \geqq 0$ における図形の領域は、$0 \leqq x \leqq a$ の範囲では2曲線に囲まれた部分、$a \leqq x \leqq a+1$ の範囲では曲線 $y = f\left(\frac{x}{a+1}\right)$ と $x$ 軸に囲まれた部分となる。 よって、面積 $S_1$ は以下のように立式できる。
$$S_1 = \int_{0}^{a} \left\{ f\left(\frac{x}{a+1}\right) - f\left(\frac{x}{a}\right) \right\} dx + \int_{a}^{a+1} f\left(\frac{x}{a+1}\right) dx$$
積分区間をまとめて整理する。
$$S_1 = \int_{0}^{a} f\left(\frac{x}{a+1}\right) dx + \int_{a}^{a+1} f\left(\frac{x}{a+1}\right) dx - \int_{0}^{a} f\left(\frac{x}{a}\right) dx$$
$$S_1 = \int_{0}^{a+1} f\left(\frac{x}{a+1}\right) dx - \int_{0}^{a} f\left(\frac{x}{a}\right) dx$$
ここで、正の定数 $k$ に対して定積分 $\int_{0}^{k} f\left(\frac{x}{k}\right) dx$ を計算する。 $t = \frac{x}{k}$ と置換すると、$dx = k dt$ であり、積分区間は $x$ が $0 \to k$ のとき $t$ は $0 \to 1$ となる。
$$\int_{0}^{k} f\left(\frac{x}{k}\right) dx = \int_{0}^{1} f(t) \cdot k dt = k \int_{0}^{1} f(t) dt$$
定積分 $\int_{0}^{1} f(t) dt$ の値を計算する。
$$\int_{0}^{1} f(t) dt = \int_{0}^{1} \left\{ -e(e^t + e^{-t}) + e^2 + 1 \right\} dt$$
$$= \left[ -e(e^t - e^{-t}) + (e^2 + 1)t \right]_{0}^{1}$$
$$= \left\{ -e(e - e^{-1}) + (e^2 + 1) \right\} - 0$$
$$= -e^2 + 1 + e^2 + 1 = 2$$
これにより、任意の $k > 0$ に対して $\int_{0}^{k} f\left(\frac{x}{k}\right) dx = 2k$ となることがわかる。 これを用いて $S_1$ を計算する。
$$S_1 = 2(a+1) - 2a = 2$$
求める面積 $S$ はこの2倍である。
$$S = 2S_1 = 2 \times 2 = 4$$
解説
(1) は偶関数の性質と単調性をうまく利用することで、計算量を減らしつつ簡潔に証明することができます。$x$ の正負で場合分けを行うか、絶対値を用いて議論をまとめるのが定石です。
(2) では2つの曲線の位置関係を正確に把握することが重要です。(1) の結果がそのまま上下関係を示していることに気づけば、面積の立式は容易です。立式後の計算において、2つの項をそれぞれ別個に積分するのではなく、$t = \frac{x}{k}$ のように置換積分を行って定積分 $\int_{0}^{1} f(t) dt$ をくくり出す工夫をすると、計算ミスを防ぐことができます。
答え
(1) 証明略 (2) $4$
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