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九州大学 1984年 理系 第1問 解説

旧課程/行列・一次変換数学2/式と証明テーマ/整式の証明テーマ/場合分け
九州大学 1984年 理系 第1問 解説

方針・初手

ケーリー・ハミルトンの定理を用いて次数を下げ、与えられた条件式を行列 $A$ と単位行列 $E$ の1次結合の形に整理する。その後、$A$ の係数に着目して場合分けを行い、求まった値に対して、条件を満たす行列 $A$ が実際に存在するかどうか(十分性)を確認する。

解法1

(1) 行列 $A$ について、ケーリー・ハミルトンの定理より以下の等式が成り立つ。

$$A^2 - (a+d)A + (ad-bc)E = O$$

条件より $A^2 = E$ であるから、これを代入して整理する。

$$E - (a+d)A + (ad-bc)E = O$$

$$(a+d)A = (1 + ad - bc)E$$

ここで、$a+d$ の値によって場合分けを行う。

(i) $a+d \neq 0$ のとき

$$A = \frac{1 + ad - bc}{a+d} E$$

となり、行列 $A$ は実数 $k$ を用いて $A = kE$ の形に表せる。 これを条件式 $A^2 = E$ に代入すると、$k^2 E = E$ より $k^2 = 1$、すなわち $k = \pm 1$ となる。 $k = 1$ のとき $A = E$ であり、このとき $a=1, d=1$ より $a+d = 2$ である。 $k = -1$ のとき $A = -E$ であり、このとき $a=-1, d=-1$ より $a+d = -2$ である。 これらは $a+d \neq 0$ を満たす。

(ii) $a+d = 0$ のとき

このとき、条件 $A^2 = E$ かつ $a+d = 0$ を満たす行列 $A$ が少なくとも1つ存在すれば、$0$ はとりうる値となる。 例えば、$A = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}$ とすると、

$$A^2 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} = E$$

を満たし、$a+d = 1 + (-1) = 0$ となるため条件を満たす。 よって、$a+d = 0$ もとりうる値である。

以上より、(1)で $a+d$ がとりうる値は $0, 2, -2$ である。

(2) 計算を簡略化するため、$p = a+d$、$q = ad-bc$ とおく。 ケーリー・ハミルトンの定理より、

$$A^2 - pA + qE = O$$

$$A^2 = pA - qE$$

が成り立つ。両辺に $A$ を掛けて次数を下げる。

$$A^3 = A(pA - qE) = pA^2 - qA$$

再び $A^2 = pA - qE$ を代入する。

$$A^3 = p(pA - qE) - qA = (p^2 - q)A - pqE$$

条件より $A^3 = A$ であるから、次が成り立つ。

$$(p^2 - q)A - pqE = A$$

$$(p^2 - q - 1)A = pqE$$

ここで、$A$ の係数 $p^2 - q - 1$ によって場合分けを行う。

(i) $p^2 - q - 1 \neq 0$ のとき

$$A = \frac{pq}{p^2 - q - 1}E$$

となり、行列 $A$ は実数 $k$ を用いて $A = kE$ の形に表せる。 これを条件式 $A^3 = A$ に代入すると、$k^3 E = kE$ より $k^3 - k = 0$、すなわち $k(k-1)(k+1) = 0$ となる。 したがって、$k = 0, 1, -1$ である。 $k = 0$ のとき、$A = O$ であり $p = 0$ となる。 $k = 1$ のとき、$A = E$ であり $p = 2$ となる。 $k = -1$ のとき、$A = -E$ であり $p = -2$ となる。

(ii) $p^2 - q - 1 = 0$ のとき

$q = p^2 - 1$ である。このとき、先の関係式の左辺は零行列となるため、右辺も零行列でなければならない。

$$pqE = O$$

$$pq = 0$$

$q = p^2 - 1$ を代入する。

$$p(p^2 - 1) = 0$$

これより、$p = 0, 1, -1$ を得る。これらの値をとる行列 $A$ が存在するか確認する。 $p = 0$ のとき、$q = -1$。ケーリー・ハミルトンの定理より $A^2 - E = O$ すなわち $A^2 = E$ となる。このとき $A^3 = A^2 A = EA = A$ を満たす。(1)の (ii) で示した通り、これを満たす行列 $A$ は存在する。 $p = 1$ のとき、$q = 0$。ケーリー・ハミルトンの定理より $A^2 - A = O$ すなわち $A^2 = A$ となる。このとき $A^3 = A^2 A = AA = A^2 = A$ を満たす。$A = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}$ は $A^2 = A$ かつ $p = 1+0 = 1$ を満たす。 $p = -1$ のとき、$q = 0$。ケーリー・ハミルトンの定理より $A^2 + A = O$ すなわち $A^2 = -A$ となる。このとき $A^3 = A^2 A = -AA = -A^2 = -(-A) = A$ を満たす。$A = \begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}$ は $A^2 = -A$ かつ $p = -1+0 = -1$ を満たす。

以上より、どの場合も条件を満たす行列が存在するため、(2)で $p = a+d$ がとりうる値は $0, 1, -1, 2, -2$ である。

解説

行列の累乗が関係する方程式の問題では、ケーリー・ハミルトンの定理を利用して次数を下げ、$A$ と $E$ の1次結合で表す手法が基本となる。 その際、「$A$ が $E$ の実数倍で表せる場合」と「そうでない場合」で直ちに係数比較ができるかどうかが異なるため、必ず $A$ の係数が $0$ になるかどうかで場合分けを行う必要がある。 また、必要条件として求めた値について、実際にそのトレース($a+d$)をもつ行列 $A$ が存在するかどうか(十分性の確認)を忘れずに行うことが重要である。

答え

(1) $0, 2, -2$ (2) $0, 1, -1, 2, -2$

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