九州大学 2001年 理系 第4問 解説

方針・初手
(1) は複素数平面における円の方程式の標準的な変形である。$z\bar{z}$ の係数である $a$ で両辺を割り、複素数の絶対値の平方 $|z - \alpha|^2 = r^2$ の形を作ることを目指す。
(2) は与えられた等式を整理し、(1) の形に帰着させるか、あるいは「ある複素数とその共役複素数が等しいならば、その複素数は実数である」という性質を利用して図形的な意味を読み取る。定数 $d$ が実数か虚数かによって描く図形が変わるため、場合分けが必要である。
解法1
(1)
与えられた方程式は、
$$a z \bar{z} + \bar{b} z + b \bar{z} + c = 0$$
$a \neq 0$ であるから、両辺を $a$ で割ると、
$$z \bar{z} + \frac{\bar{b}}{a} z + \frac{b}{a} \bar{z} + \frac{c}{a} = 0$$
左辺を変形して因数分解の形(平方完成のような形)を作ると、
$$\left( z + \frac{b}{a} \right) \left( \bar{z} + \frac{\bar{b}}{a} \right) - \frac{b\bar{b}}{a^2} + \frac{c}{a} = 0$$
$$\left( z + \frac{b}{a} \right) \overline{\left( z + \frac{b}{a} \right)} = \frac{|b|^2 - ac}{a^2}$$
$$\left| z + \frac{b}{a} \right|^2 = \frac{|b|^2 - ac}{a^2}$$
条件より $|b|^2 - ac > 0$ であり、$a$ は実数($a \neq 0$)であるから $a^2 > 0$ である。よって右辺は正の実数となる。両辺の正の平方根をとると、
$$\left| z - \left( -\frac{b}{a} \right) \right| = \frac{\sqrt{|b|^2 - ac}}{|a|}$$
したがって、点 $z$ は中心 $-\frac{b}{a}$、半径 $\frac{\sqrt{|b|^2 - ac}}{|a|}$ の円を描く。
(2)
与えられた方程式を展開して整理する。
$$d(z\bar{z} - \bar{q}z - p\bar{z} + p\bar{q}) = \bar{d}(z\bar{z} - \bar{p}z - q\bar{z} + q\bar{p})$$
$$(d - \bar{d})|z|^2 - (d\bar{q} - \bar{d}\bar{p})z - (dp - \bar{d}q)\bar{z} + dp\bar{q} - \bar{d}q\bar{p} = 0$$
ここで、$d$ が実数であるか否かで場合分けをする。
(i) $d$ が実数、すなわち $d = \bar{d}$ のとき
$d \neq 0$ より $d = \bar{d} \neq 0$ である。上の式に代入すると $|z|^2$ の項が消え、
$$-d(\bar{q} - \bar{p})z - d(p - q)\bar{z} + d(p\bar{q} - q\bar{p}) = 0$$
両辺を $-d$ で割ると、
$$(\bar{p} - \bar{q})z - (p - q)\bar{z} - (p\bar{q} - q\bar{p}) = 0$$
この方程式は直線をしめす。また、元の等式に $z = p$ および $z = q$ を代入すると、どちらも両辺が $0$ となり成立する。したがって、この図形は $2$ 点 $p, q$ を通る直線である。
(ii) $d$ が虚数、すなわち $d \neq \bar{d}$ のとき
方程式の両辺を $d - \bar{d} \neq 0$ で割ると、
$$|z|^2 - \frac{d\bar{q} - \bar{d}\bar{p}}{d - \bar{d}}z - \frac{dp - \bar{d}q}{d - \bar{d}}\bar{z} + \frac{dp\bar{q} - \bar{d}q\bar{p}}{d - \bar{d}} = 0$$
ここで、$-\frac{dp - \bar{d}q}{d - \bar{d}} = B$ とおくと、
$$\bar{B} = -\overline{\left( \frac{dp - \bar{d}q}{d - \bar{d}} \right)} = -\frac{\bar{d}\bar{p} - d\bar{q}}{\bar{d} - d} = -\frac{d\bar{q} - \bar{d}\bar{p}}{d - \bar{d}}$$
であるから、一次の項は $\bar{B}z + B\bar{z}$ となる。また、定数項 $C = \frac{dp\bar{q} - \bar{d}q\bar{p}}{d - \bar{d}}$ について、
$$\bar{C} = \overline{\left( \frac{dp\bar{q} - \bar{d}q\bar{p}}{d - \bar{d}} \right)} = \frac{\bar{d}\bar{p}q - dp\bar{q}}{\bar{d} - d} = \frac{dp\bar{q} - \bar{d}q\bar{p}}{d - \bar{d}} = C$$
より、$C$ は実数である。よって、方程式は
$$|z|^2 + \bar{B}z + B\bar{z} + C = 0$$
となり、(1) と同様に変形して
$$|z + B|^2 = |B|^2 - C$$
右辺を計算する。
$$\begin{aligned} |B|^2 - C &= \frac{(dp - \bar{d}q)(\bar{d}\bar{p} - d\bar{q})}{-(d - \bar{d})^2} - \frac{dp\bar{q} - \bar{d}q\bar{p}}{d - \bar{d}} \\ &= \frac{d\bar{d}p\bar{p} - d^2p\bar{q} - \bar{d}^2q\bar{p} + d\bar{d}q\bar{q} + (d - \bar{d})(dp\bar{q} - \bar{d}q\bar{p})}{-(d - \bar{d})^2} \\ &= \frac{d\bar{d}p\bar{p} + d\bar{d}q\bar{q} - d\bar{d}q\bar{p} - d\bar{d}p\bar{q}}{-(d - \bar{d})^2} \\ &= \frac{d\bar{d}(p - q)(\bar{p} - \bar{q})}{-(d - \bar{d})^2} \end{aligned}$$
分母について、$d - \bar{d}$ は純虚数であるから、その平方 $(d - \bar{d})^2$ は負の実数であり、$-(d - \bar{d})^2 = |d - \bar{d}|^2$ が成り立つ。したがって、
$$|z + B|^2 = \frac{|d|^2 |p - q|^2}{|d - \bar{d}|^2}$$
$d \neq 0, p \neq q$ より右辺は正であるから、この図形は円を表す。 中心は $-B = \frac{dp - \bar{d}q}{d - \bar{d}}$、半径は $\frac{|d||p - q|}{|d - \bar{d}|}$ である。 (i) と同様に元の式に $z = p, z = q$ を代入すると成立するため、この円も $2$ 点 $p, q$ を通る。
解法2
((2) の図形的性質を用いた別解)
与えられた方程式
$$d(z - p)(\bar{z} - \bar{q}) = \bar{d}(z - q)(\bar{z} - \bar{p})$$
について、$z = q$ を代入すると両辺が $0$ となり等式を満たすので、点 $q$ は求める図形上にある。 $z \neq q$ のとき、両辺を $(z - q)(\bar{z} - \bar{q}) = |z - q|^2 \neq 0$ で割ると、
$$d \frac{z - p}{z - q} = \bar{d} \frac{\bar{z} - \bar{p}}{\bar{z} - \bar{q}}$$
$$d \frac{z - p}{z - q} = \overline{\left( d \frac{z - p}{z - q} \right)}$$
ある複素数とその共役複素数が等しいとき、その複素数は実数であるから、$d \frac{z - p}{z - q} = k$ ($k$ は実数)とおける。よって、
$$\frac{z - p}{z - q} = \frac{k}{d} = \frac{k\bar{d}}{|d|^2}$$
ここで、$d$ が実数であるか否かで場合分けをする。
(i) $d$ が実数、すなわち $d = \bar{d}$ のとき
$\frac{z - p}{z - q}$ は実数となる。これは、点 $z$ が点 $p, q$ を通る直線上にあることを示す($z = q$ のときも元の式を満たすので、直線上のすべての点が条件を満たす)。 よって、点 $z$ は $2$ 点 $p, q$ を通る直線を描く。
(ii) $d$ が虚数、すなわち $d \neq \bar{d}$ のとき
偏角を考えると、
$$\arg \left( \frac{z - p}{z - q} \right) = \arg \left( \frac{k\bar{d}}{|d|^2} \right)$$
$k = 0$ のときは $z = p$ となり、元の等式を満たす(このとき点 $p$ も図形上にある)。 $k \neq 0$ のとき、$\frac{k}{|d|^2}$ は実数であるから、その符号によって偏角は $\arg \bar{d}$ または $\arg \bar{d} + \pi$ となる(それぞれ一般角として)。 これは、線分 $pq$ を弦とする円周角が一定であることを示しており、点 $z$ は $2$ 点 $p, q$ を通る円を描く。
解説
複素数平面における直線と円の方程式に関する典型的な問題である。
- (1) は、複素数係数の方程式を平方完成のように変形して円の中心と半径を特定する基本技術を問うている。この変形は (2) の代数的な解法(解法1)の土台となる。
- (2) では、パラメータ $d$ の性質(実数か虚数か)によって描かれる図形が直線か円かに分岐する。この場合分けを漏らさずに行うことが重要である。
- 解法2のように、式を $\frac{z-p}{z-q}$ の形に整理して偏角(円周角)や実数条件から図形的な意味を読み取るアプローチも、複素数平面の問題では非常に有効かつ強力な武器となる。
答え
(1) 中心 $-\frac{b}{a}$、半径 $\frac{\sqrt{|b|^2 - ac}}{|a|}$ の円
(2) $d$ が実数のとき、$2$ 点 $p, q$ を通る直線。 $d$ が虚数のとき、中心 $\frac{dp - \bar{d}q}{d - \bar{d}}$、半径 $\frac{|d||p - q|}{|d - \bar{d}|}$ の円($2$ 点 $p, q$ を通る円)。
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