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九州大学 2010年 理系 第5問 解説

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九州大学 2010年 理系 第5問 解説

方針・初手

点 $P$ が放物線 $y = x^2$ 上を動くことから、$P$ の座標をパラメータ $t$ を用いて $(t, t^2)$ とおく。$t$ がすべての実数値を動くときの点 $Q(X, Y)$ の座標を $t$ で表し、各小問の図形の条件に代入して $t$ についての恒等式として処理する。

その際、「図形の上にある」ことと「図形の全体を動く」ことの違いに注意する。「全体を動く」場合は、関係式を満たすだけでなく、変数 $X$ や $Y$ のとり得る値の範囲(値域)がその図形全体をカバーしているかどうかの確認が必要になる。

解法1

点 $P$ は放物線 $y = x^2$ 上にあるので、$P(t, t^2)$ とおける($t$ はすべての実数)。

与えられた行列の変換より、

$$ \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} t \\ t^2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} at + bt^2 \\ ct + dt^2 \end{pmatrix} $$

すなわち、$X, Y$ は次のように表される。

$$ X = bt^2 + at, \quad Y = dt^2 + ct $$

(1)

$Q(X, Y)$ が放物線 $9X = 2Y^2$ の上にあるので、すべての実数 $t$ に対して以下の等式が成り立つ。

$$ 9(bt^2 + at) = 2(dt^2 + ct)^2 $$

展開して整理すると、

$$ 9bt^2 + 9at = 2(d^2t^4 + 2cdt^3 + c^2t^2) $$

$$ 2d^2t^4 + 4cdt^3 + (2c^2 - 9b)t^2 - 9at = 0 $$

これが $t$ についての恒等式となるため、各次数の係数はすべて $0$ である。

$$ 2d^2 = 0 \implies d = 0 $$

$$ 4cd = 0 $$

$$ 2c^2 - 9b = 0 \implies b = \frac{2}{9}c^2 $$

$$ -9a = 0 \implies a = 0 $$

これらより、$X = \frac{2}{9}c^2t^2$、$Y = ct$ となる。

次に、$Q$ が放物線 $9X = 2Y^2$ の「全体」を動くための条件を考える。 $Y = ct$ において、$t$ がすべての実数を動くとき、$Y$ がすべての実数値をとらなければ、放物線全体を描くことはできない。したがって、$c \neq 0$ が必要である。

逆に $c \neq 0$ であれば、$t = \frac{Y}{c}$ となり、$X = \frac{2}{9}c^2 \left(\frac{Y}{c}\right)^2 = \frac{2}{9}Y^2$ となる。このとき $Y$ はすべての実数値をとるため、$Q$ は放物線 $9X = 2Y^2$ 全体を過不足なく動く。

よって、求める行列 $A$ は以下のようになる。

$$ A = \begin{pmatrix} 0 & \frac{2}{9}c^2 \\ c & 0 \end{pmatrix} \quad (c \text{ は } 0 \text{ でない任意の実数}) $$

(2)

$Q(X, Y)$ が常に円 $X^2 + (Y-1)^2 = 1$ の上にあるので、すべての実数 $t$ に対して以下の等式が成り立つ。

$$ (bt^2 + at)^2 + (dt^2 + ct - 1)^2 = 1 $$

展開して整理する。

$$ (bt^2 + at)^2 + (dt^2 + ct)^2 - 2(dt^2 + ct) = 0 $$

$$ b^2t^4 + 2abt^3 + a^2t^2 + d^2t^4 + 2cdt^3 + c^2t^2 - 2dt^2 - 2ct = 0 $$

$$ (b^2 + d^2)t^4 + 2(ab + cd)t^3 + (a^2 + c^2 - 2d)t^2 - 2ct = 0 $$

これが $t$ についての恒等式となるため、各次数の係数はすべて $0$ である。

$$ b^2 + d^2 = 0 \implies b = 0, \quad d = 0 $$

$$ -2c = 0 \implies c = 0 $$

$$ a^2 + c^2 - 2d = 0 \implies a^2 + 0 - 0 = 0 \implies a = 0 $$

よって、$a=0, b=0, c=0, d=0$ となる。(このとき $t^3$ の係数 $2(ab+cd)=0$ も満たされる)

このとき、$X=0, Y=0$ となり、$Q$ は常に原点 $(0,0)$ にある。 原点 $(0,0)$ は円 $X^2 + (Y-1)^2 = 1$ 上の点であるため、問題の「常に円の上にある」という条件を満たす。(「全体を動く」とは要求されていないことに注意する)

よって、求める行列 $A$ は以下のようになる。

$$ A = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} $$

(3)

$Q(X,Y)$ がある直線 $L$ 全体の上を動くとする。 直線 $L$ の方程式を $pX + qY + r = 0$ ($p, q$ は同時には $0$ にならない)とおく。

$Q$ はこの直線上にあるので、すべての実数 $t$ に対して以下の等式が成り立つ。

$$ p(bt^2 + at) + q(dt^2 + ct) + r = 0 $$

$$ (pb + qd)t^2 + (pa + qc)t + r = 0 $$

これが $t$ についての恒等式であるから、各係数は $0$ である。

$$ r = 0 $$

$$ pb + qd = 0 $$

$$ pa + qc = 0 $$

$r=0$ より、直線 $L$ は原点を通り、その方程式は $pX + qY = 0$ となる。

次に、$Q$ がこの直線 $L$ 「全体」を動く条件を考える。 $p \neq 0$ と仮定すると、直線 $pX + qY = 0$ 上の点において、$Y$ 座標はすべての実数値をとり得る。 $Y = dt^2 + ct$ がすべての実数値をとるためには、この $t$ についての2次関数の値域が実数全体でなければならない。2次関数の値域が実数全体となるのは、2次の係数が $0$ の場合(すなわち1次関数以下の形になる場合)のみであるから、$d = 0$ が必要である。

$d = 0$ のとき、$pb + qd = 0$ より $pb = 0$ となる。$p \neq 0$ であるから $b = 0$ である。 $q \neq 0$ と仮定した場合も同様に、$X = bt^2 + at$ がすべての実数値をとることから $b = 0$ を得て、$d = 0$ が導かれる。 したがって、いずれの場合も直線全体を動くためには $b = 0$ かつ $d = 0$ が必要である。

$b = 0, d = 0$ のとき、$X = at$, $Y = ct$ となる。 $t$ がすべての実数を動くとき、$Q(at, ct)$ が直線全体を動くためには、$(a, c) \neq (0,0)$ が必要である($(a, c) = (0,0)$ の場合は原点のみにとどまり不適)。

条件を満たすとき、$Q$ は原点を通り方向ベクトルが $(a, c)$ の直線を描く。 その方程式は $cX - aY = 0$ であり、$t$ がすべての実数値をとるとき、この直線を過不足なく動く。

以上より、求める条件および直線 $L$ の方程式が得られる。

解説

本問は、パラメータ表示された点の軌跡について、恒等式の処理と値域の確認を行う問題である。

(1)と(3)では軌跡が図形「全体を動く」ことが要求されているため、単に図形の方程式を満たすだけでなく、パラメータの変化によって図形上のすべての点が網羅されるか(値域のチェック)が重要になる。特に(3)において、「2次関数は実数全体を値域にとらない」という事実から2次の係数が $0$ になることを論証する部分が最大の山場である。

一方、(2)では「常に円の上にある」とだけ記述されており、「全体を動く」とは指定されていない。この些細な表現の違いを見落とさず、恒等式の計算結果を信じて零行列を導けるかが問われている。

答え

(1)

$$ A = \begin{pmatrix} 0 & \frac{2}{9}c^2 \\ c & 0 \end{pmatrix} \quad (c \text{ は } 0 \text{ でない任意の実数}) $$

(2)

$$ A = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} $$

(3)

条件:$b=0$ かつ $d=0$ かつ $(a, c) \neq (0,0)$

直線 $L$ の方程式:$cX - aY = 0$

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