トップ 九州大学 2008年 理系 第1問

九州大学 2008年 理系 第1問 解説

数学2/指数対数数学3/微分法数学3/極限テーマ/最大・最小
九州大学 2008年 理系 第1問 解説

方針・初手

(1) は、関数の微分を用いて増減および凹凸を調べ、極限を計算して漸近線を求める標準的なグラフ描画の問題である。 (2) は、$y = f(x)$ を $x$ について解き、元の関数の値域が逆関数の定義域になることに注意して $f^{-1}(x)$ を求める。 (3) は、(2) で求めた逆関数に値を代入し、対数の性質を用いて式を整理したのち、自然対数の底 $e$ の定義に帰着させて極限を計算するか、平均値の定理を利用する。

解法1

(1)

与えられた関数 $f(x) = \frac{e^x}{e^x+1}$ を微分する。

$$ f'(x) = \frac{(e^x)'(e^x+1) - e^x(e^x+1)'}{(e^x+1)^2} = \frac{e^x(e^x+1) - e^x \cdot e^x}{(e^x+1)^2} = \frac{e^x}{(e^x+1)^2} $$

さらに第2次導関数を求める。

$$ f''(x) = \frac{(e^x)'(e^x+1)^2 - e^x \{(e^x+1)^2\}'}{(e^x+1)^4} = \frac{e^x(e^x+1)^2 - e^x \cdot 2(e^x+1)e^x}{(e^x+1)^4} $$

$$ = \frac{e^x(e^x+1) - 2e^{2x}}{(e^x+1)^3} = \frac{e^x - e^{2x}}{(e^x+1)^3} = \frac{e^x(1-e^x)}{(e^x+1)^3} $$

全ての実数 $x$ において $e^x > 0$、$e^x+1 > 0$ であるから、$f'(x) > 0$ となり、$f(x)$ は単調に増加する。 また、$f''(x) = 0$ とすると $1 - e^x = 0$ より $x = 0$ である。 $f''(x)$ の符号は $1 - e^x$ の符号と一致するため、$x < 0$ のとき $f''(x) > 0$(下に凸)、$x > 0$ のとき $f''(x) < 0$(上に凸)となる。

次に、極限を調べて漸近線を求める。

$$ \lim_{x \to \infty} f(x) = \lim_{x \to \infty} \frac{1}{1 + e^{-x}} = 1 $$

$$ \lim_{x \to -\infty} f(x) = \lim_{x \to -\infty} \frac{e^x}{e^x+1} = \frac{0}{0+1} = 0 $$

よって、漸近線は直線 $y = 1$ および $y = 0$ である。 以上より、増減表は次のようになる。

$x$ $\cdots$ $0$ $\cdots$
$f'(x)$ $+$ $+$ $+$
$f''(x)$ $+$ $0$ $-$
$f(x)$ $\nearrow$ $\frac{1}{2}$ $\nearrow$

(注:$x < 0$ で下に凸、$x > 0$ で上に凸である。点 $(0, \frac{1}{2})$ は変曲点である。)

グラフは、点 $(0, \frac{1}{2})$ について点対称な、なめらかな曲線となる。

(2)

$y = f(x)$ とおく。

$$ y = \frac{e^x}{e^x+1} $$

全ての実数 $x$ において $e^x > 0$ より $e^x+1 > 1$ であるから、この関数の値域は $0 < y < 1$ である。 上の式を $x$ について解く。

$$ y(e^x+1) = e^x $$

$$ e^x(1-y) = y $$

$0 < y < 1$ であるから $1-y \neq 0$ であり、両辺を $1-y$ で割ることができる。

$$ e^x = \frac{y}{1-y} $$

両辺の自然対数をとる。

$$ x = \log \frac{y}{1-y} $$

$x$ と $y$ を入れ替えて、求める逆関数 $f^{-1}(x)$ は以下のようになる。

$$ f^{-1}(x) = \log \frac{x}{1-x} \quad (0 < x < 1) $$

(3)

(2) の結果を用いて、極限の式内の各項を計算する。

$$ f^{-1} \left( \frac{1}{n+2} \right) = \log \frac{\frac{1}{n+2}}{1 - \frac{1}{n+2}} = \log \frac{\frac{1}{n+2}}{\frac{n+1}{n+2}} = \log \frac{1}{n+1} = -\log(n+1) $$

$$ f^{-1} \left( \frac{1}{n+1} \right) = \log \frac{\frac{1}{n+1}}{1 - \frac{1}{n+1}} = \log \frac{\frac{1}{n+1}}{\frac{n}{n+1}} = \log \frac{1}{n} = -\log n $$

これらを極限の式に代入する。

$$ \lim_{n \to \infty} n \left\{ f^{-1} \left( \frac{1}{n+2} \right) - f^{-1} \left( \frac{1}{n+1} \right) \right\} = \lim_{n \to \infty} n \left\{ -\log(n+1) + \log n \right\} $$

$$ = \lim_{n \to \infty} n \log \frac{n}{n+1} = \lim_{n \to \infty} \log \left( 1 - \frac{1}{n+1} \right)^n $$

ここで、対数の真数部分を自然対数の底 $e$ の定義 $\lim_{t \to 0} (1+t)^{\frac{1}{t}} = e$ に帰着させるように変形する。

$$ \lim_{n \to \infty} \log \left[ \left\{ 1 + \left(-\frac{1}{n+1}\right) \right\}^{-(n+1)} \right]^{-\frac{n}{n+1}} $$

$n \to \infty$ のとき、$-\frac{1}{n+1} \to 0$ であるから、

$$ \lim_{n \to \infty} \left\{ 1 + \left(-\frac{1}{n+1}\right) \right\}^{-(n+1)} = e $$

また、指数の極限は

$$ \lim_{n \to \infty} \left( -\frac{n}{n+1} \right) = \lim_{n \to \infty} \left( -\frac{1}{1 + \frac{1}{n}} \right) = -1 $$

となる。したがって、対数の連続性より求める極限は以下のようになる。

$$ \log e^{-1} = -1 $$

解法2

(3) の別解(平均値の定理の利用)

解法1と同様に逆関数に値を代入し、極限の式を整理するところまでは同じである。

$$ (\text{与式}) = \lim_{n \to \infty} n \left\{ -\log(n+1) + \log n \right\} = \lim_{n \to \infty} -n \{ \log(n+1) - \log n \} $$

関数 $h(x) = \log x$ は $x > 0$ において連続かつ微分可能であり、$h'(x) = \frac{1}{x}$ である。 区間 $[n, n+1]$ において平均値の定理を適用すると、

$$ \frac{\log(n+1) - \log n}{(n+1) - n} = \frac{1}{c_n} \quad (n < c_n < n+1) $$

を満たす実数 $c_n$ が存在する。 分母は $1$ であるから、$\log(n+1) - \log n = \frac{1}{c_n}$ となる。 これを極限の式に代入する。

$$ \lim_{n \to \infty} -n \cdot \frac{1}{c_n} = \lim_{n \to \infty} \left( -\frac{n}{c_n} \right) $$

ここで、$n < c_n < n+1$ より各辺の逆数をとると、

$$ \frac{1}{n+1} < \frac{1}{c_n} < \frac{1}{n} $$

各辺に正の数 $n$ を掛ける。

$$ \frac{n}{n+1} < \frac{n}{c_n} < 1 $$

$n \to \infty$ のとき、左辺は $\lim_{n \to \infty} \frac{1}{1+\frac{1}{n}} = 1$ となる。 したがって、はさみうちの原理より

$$ \lim_{n \to \infty} \frac{n}{c_n} = 1 $$

よって、求める極限は以下のようになる。

$$ \lim_{n \to \infty} \left( -\frac{n}{c_n} \right) = -1 $$

解説

(1) では、グラフを描くために $f'(x)$ と $f''(x)$ を正確に計算し、増減と凹凸を調べる基礎的な力が問われている。$\lim_{x \to \pm \infty} f(x)$ を計算し、漸近線を明記することもグラフ描画問題の必須事項である。 (2) において逆関数を求める際は、単に $x$ について解くだけでなく、元の関数 $y = f(x)$ の値域を求めておき、それを逆関数の定義域として明記することを忘れないようにしたい。 (3) は、一見複雑に見えるが、(2) の結果を代入すると綺麗に約分されシンプルな対数の差の形になる。そこから極限を求める手法としては、解法1のように $e$ の定義式を用いる方法が王道だが、解法2で示した「対数の差を平均値の定理で処理する」という発想も、国公立大学の極限問題で頻出する非常に強力なテクニックであるため、ぜひ身につけておきたい。

答え

(1) 増減・凹凸:$x < 0$ で下に凸に単調増加、$x > 0$ で上に凸に単調増加。変曲点は $(0, \frac{1}{2})$。 漸近線:直線 $y = 1, y = 0$ (グラフは解答解説本文の増減表および漸近線の情報に基づく概形となる)

(2) $f^{-1}(x) = \log \frac{x}{1-x} \quad (0 < x < 1)$

(3) $-1$

自分の記録

ログインすると保存できます。

誤りを報告

解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。