東京大学 1988年 理系 第4問 解説

方針・初手
点 $P$ の $y$ 座標が区間ごとに $1$ ずつ増加する間の、$x$ 座標の増分をそれぞれ計算する。 $x$ 座標は単調に増加し続けるため、点 $P$ の軌跡が直線 $x=b$ を横切る条件は、$y \to \infty$ としたときの $x$ 座標の極限値(あるいは取り得る値の上限)が $b$ より大きくなることである。 $x$ 座標の極限値は無限等比級数で表されるため、その公比の値によって場合分けをして条件を求める。
解法1
点 $P$ の $y$ 座標が $n-1$ から $n$ まで増加する区間($n$ は自然数)において、点 $P$ は線分上を動く。 初期の傾きが $a$ であり、$y$ 座標が整数になるごとに傾きが $s$ 倍になることから、この区間における線分の傾きは $a s^{n-1}$ である。 この区間での $y$ の増分は $n - (n-1) = 1$ であるから、対応する $x$ の増分を $\Delta x_n$ とすると、傾きの定義より以下の式が成り立つ。
$$ \Delta x_n = \frac{1}{a s^{n-1}} $$
点 $P$ は原点 $(0,0)$ から出発し、傾きが常に正であるため、$x$ 座標は単調に増加する。 $y \to \infty$ としたときの点 $P$ の $x$ 座標の極限値を $X$ とすると、$X$ は各区間の $x$ の増分の総和として、次の無限級数で表される。
$$ X = \sum_{n=1}^{\infty} \Delta x_n = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{a s^{n-1}} $$
点 $P$ の描く折れ線が直線 $x=b$ を横切るための条件は、点 $P$ の $x$ 座標がいずれ $b$ を超えること、すなわち $X > b$ が成り立つことである。($X$ が正の無限大に発散する場合も含む)
上記の無限級数は、初項 $\frac{1}{a}$、公比 $\frac{1}{s}$ の無限等比級数である。 公比 $\frac{1}{s}$ の値によって、以下のように場合分けをする。
(i)
$0 < s \le 1$ のとき
公比について $\frac{1}{s} \ge 1$ となるため、この無限等比級数は正の無限大に発散する。 すなわち $X = \infty$ であり、任意の $b > 0$ に対して必ず $X > b$ を満たす。 したがって、このときは常に直線 $x=b$ を横切る。
(ii)
$s > 1$ のとき
公比について $0 < \frac{1}{s} < 1$ となるため、無限等比級数は収束し、その和は次のように計算できる。
$$ X = \frac{\frac{1}{a}}{1 - \frac{1}{s}} = \frac{s}{a(s-1)} $$
求める条件は $X > b$ であるから、
$$ \frac{s}{a(s-1)} > b $$
$a > 0$ かつ $s - 1 > 0$ であるため、両辺に $a(s-1)$ を掛けて整理すると、以下の不等式を得る。
$$ ab(s-1) < s $$
解説
無限等比級数の収束・発散を幾何学的なモデルに応用する典型的な問題である。 直線の「傾き」は $\frac{yの増分}{xの増分}$ であることに着目し、$y$ の増分が $1$ のときの $x$ の増分が「傾きの逆数」として表されることを正しく立式できるかが第一のポイントである。 軌跡が直線 $x=b$ を「横切る」という条件を、「$x$ 座標の極限値が $b$ より大きい」という数式上の条件に翻訳する部分が第二のポイントとなる。 $s$ の値によって無限等比級数が発散する場合と収束する場合に分かれるため、見落としなく場合分けを行う必要がある。
答え
$0 < s \le 1$ のときは常に横切り、$s > 1$ のときは $ab(s-1) < s$
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