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名古屋大学 1970年 文系 第4問 解説

数学2/三角関数数学3/微分法数学3/極限テーマ/整式の証明
名古屋大学 1970年 文系 第4問 解説

方針・初手

(1) $\sin x$ が $x$ の整式(多項式)で表されると仮定し、背理法を用いて証明する。整式の持つ性質(高階導関数が $0$ になること、方程式の解が有限個であること、極限での発散など)と、$\sin x$ の持つ性質が相容れないことを示す。

(2) 関数 $g(x)$ がすべての実数において連続であることを示す。$x \neq 1$ においては連続関数の商であるため連続である。したがって、境界となる $x=1$ における連続性、すなわち $\lim_{x \to 1} g(x) = g(1)$ を示すことがメインの目標となる。ここでは微分係数の定義を直接用いる。

解法1

(1)

$\sin x$ が $x$ の整式で表せると仮定し、その整式を $P(x)$ とおく。 すなわち、すべての実数 $x$ に対して、 $$\sin x = P(x)$$ が成り立つとする。

$P(x)$ の次数を $n$ ($n$ は $0$ 以上の整数)とする。

両辺を $x$ について $n+1$ 回微分する。 右辺の $P(x)$ は $n$ 次以下の整式であるから、$n+1$ 回微分すると恒等的に $0$ となる。

一方、左辺の $\sin x$ を $n+1$ 回微分した導関数は、$\pm \sin x$ または $\pm \cos x$ のいずれかである。 これらは恒等的に $0$ にはならない(例えば $\sin x$ は $x = \frac{\pi}{2}$ で $1$、$\cos x$ は $x = 0$ で $1$ をとる)。

これは、左辺と右辺の導関数が一致しないことを意味し、矛盾である。 したがって、$\sin x$ は $x$ の整式としては表せない。

(2)

関数 $g(x)$ がすべての実数 $a$ において連続であること、すなわち $$\lim_{x \to a} g(x) = g(a)$$ が成り立つことを示す。

(i) $a \neq 1$ の場合 $x \to a$ の極限を考える際、$x \neq 1$ としてよいので、$g(x) = \frac{f(x)}{x-1}$ である。 $f(x)$ は実数全体で微分可能であるから、連続関数である。 また、分母の $x-1$ も連続関数であり、$a \neq 1$ より $a-1 \neq 0$ であるから、 $$\lim_{x \to a} g(x) = \lim_{x \to a} \frac{f(x)}{x-1} = \frac{f(a)}{a-1} = g(a)$$ が成り立ち、$g(x)$ は $x = a$ において連続である。

(ii) $a = 1$ の場合 $g(1) = f'(1)$ であるから、$\lim_{x \to 1} g(x) = f'(1)$ となることを示せばよい。 $x \to 1$ のとき $x \neq 1$ であるから、 $$\lim_{x \to 1} g(x) = \lim_{x \to 1} \frac{f(x)}{x-1}$$ となる。 ここで、条件より $f(1) = 0$ であるから、分子に $-f(1)$ を補うことができ、 $$\lim_{x \to 1} \frac{f(x)}{x-1} = \lim_{x \to 1} \frac{f(x) - f(1)}{x-1}$$ と変形できる。

$f(x)$ は実数全体で微分可能であるから、$x=1$ においても微分可能であり、微分の定義より $$\lim_{x \to 1} \frac{f(x) - f(1)}{x-1} = f'(1)$$ が成り立つ。 したがって、 $$\lim_{x \to 1} g(x) = f'(1) = g(1)$$ となり、$g(x)$ は $x=1$ においても連続である。

以上 (i), (ii) より、$g(x)$ はすべての実数で連続関数である。

解法2

(1)の別解(方程式の解の個数に注目する解法)

$\sin x$ が $x$ の整式で表せると仮定し、それを $P(x)$ とおく。 すなわち、すべての実数 $x$ に対して $\sin x = P(x)$ が成り立つとする。

方程式 $\sin x = 0$ を考えると、その実数解は $x = k\pi$ ($k$ は整数)であり、無限個存在する。 したがって、等式 $P(x) = 0$ を満たす実数 $x$ も無限個存在しなければならない。

しかし、$0$ でない $n$ 次の整式($n \ge 0$)について、方程式 $P(x) = 0$ の実数解は高々 $n$ 個であり、有限個である。 よって、$P(x) = 0$ が無限個の解を持つためには、$P(x)$ は恒等的に $0$(すべての係数が $0$ の多項式)でなければならない。

もし $P(x) = 0$ が恒等的に成り立つとすると、すべての実数 $x$ について $\sin x = 0$ となるが、例えば $x = \frac{\pi}{2}$ のとき $\sin \frac{\pi}{2} = 1 \neq 0$ であり、矛盾する。

したがって、$\sin x$ は $x$ の整式としては表せない。

解法3

(1)の別解(極限のふるまいに注目する解法)

$\sin x$ が $n$ 次の整式 $P(x)$ で表せると仮定する。

$$P(x) = a_n x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \dots + a_1 x + a_0$$

(i) $n \ge 1$ かつ $a_n \neq 0$ の場合 $x \to \infty$ の極限を考えると、$P(x)$ は $a_n > 0$ ならば $\infty$ に、$a_n < 0$ ならば $-\infty$ に発散する。 しかし、すべての実数 $x$ について $-1 \le \sin x \le 1$ であるから、$x \to \infty$ としても $\sin x$ は有界であり、発散しない。 したがって、すべての実数で $\sin x = P(x)$ が成り立つことはなく、矛盾である。

(ii) $n=0$ の場合 $P(x)$ は定数 $c$ となるが、$\sin x$ は定数関数ではない(例えば $x=0$ で $0$、$x=\frac{\pi}{2}$ で $1$ をとる値が変わる)ので、矛盾する。

以上 (i), (ii) より、いずれの場合も矛盾が生じるため、$\sin x$ は $x$ の整式としては表せない。

解説

(1)は多項式(整式)と三角関数の決定的な性質の違いを利用して証明する問題である。 微分を用いる解法、解の個数(因数定理)を用いる解法、極限(有界性)を用いる解法のいずれも、大学入試における証明問題の定石として極めて重要である。

(2)は「微分可能ならば連続である」ことや、微分係数の定義式 $$f'(a) = \lim_{x \to a} \frac{f(x) - f(a)}{x-a}$$ を正しく運用できるかを問うている。$g(x)$ の連続性を議論する際、分母が $0$ にならない $x \neq 1$ の場合を自明として省略せず、きちんと場合分けをして記述することが答案の質を高めるポイントである。

答え

(1) 背理法を用い、$\sin x$ が整式であると仮定して矛盾を導いた(証明終)。 (2) 関数の連続性の定義に従い、$x \neq 1$ および $x=1$ のそれぞれにおいて $\lim_{x \to a} g(x) = g(a)$ が成り立つことを示した(証明終)。

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