名古屋大学 1974年 文系 第3問 解説

方針・初手
(1) 三角形の面積を「底辺と高さを用いる方法」と「内接円の半径と周の長さを用いる方法」の2通りで表し、それらを等しいとおいて $r$ について解きます。図形問題で内接円の半径を求める際の定石です。
(2) (1)で求めた式から $\frac{r}{a}$ を作り、条件式 $ah^n = 1$ を用いて $a$ のみの式で表します。極限を考える際、分母分子を $a$ で割って $\frac{h}{a}$ のかたまりを作り、$a \to \infty$ のときの $\frac{h}{a}$ の振る舞いを $n$ の値によって場合分けして調べます。
解法1
(1)
底辺 $a$、高さ $h$ の二等辺三角形の等しい2辺の長さを $l$ とすると、三平方の定理より、
$$ l = \sqrt{\left(\frac{a}{2}\right)^2 + h^2} = \frac{1}{2}\sqrt{a^2 + 4h^2} $$
この三角形の面積を $S$ とおくと、底辺と高さから計算して、
$$ S = \frac{1}{2}ah $$
一方で、内接円の半径 $r$ と三角形の周の長さを用いると、面積 $S$ は次のように表せる。
$$ \begin{aligned} S &= \frac{1}{2}r(a + l + l) \\ &= \frac{1}{2}r(a + 2l) \\ &= \frac{1}{2}r(a + \sqrt{a^2 + 4h^2}) \end{aligned} $$
これら2つの $S$ の式を等しいとおくと、
$$ \frac{1}{2}ah = \frac{1}{2}r(a + \sqrt{a^2 + 4h^2}) $$
$a > 0, h > 0$ より $a + \sqrt{a^2 + 4h^2} \neq 0$ であるから、これを $r$ について解いて、
$$ r = \frac{ah}{a + \sqrt{a^2 + 4h^2}} $$
(2)
(1)の式から $\frac{r}{a}$ を作る。分母分子を $a$ で割ると、
$$ \frac{r}{a} = \frac{h}{a + \sqrt{a^2 + 4h^2}} = \frac{\frac{h}{a}}{1 + \sqrt{1 + 4\left(\frac{h}{a}\right)^2}} $$
条件 $ah^n = 1$ より、
$$ h^n = a^{-1} \iff h = a^{-\frac{1}{n}} $$
したがって、$\frac{h}{a}$ は次のように表せる。
$$ \frac{h}{a} = \frac{a^{-\frac{1}{n}}}{a} = a^{-\frac{1}{n} - 1} = a^{-\frac{n+1}{n}} $$
ここで、$n$ は0でない整数であり、$a \to \infty$ としたときの $\frac{h}{a}$ の極限は $n$ の値によって異なるため、場合分けを行う。
(i) $n = -1$ のとき
$-\frac{n+1}{n} = 0$ となるため、常に $\frac{h}{a} = a^0 = 1$ である。 したがって、極限をとるまでもなく、
$$ \lim_{a \to \infty} \frac{r}{a} = \frac{1}{1 + \sqrt{1 + 4 \cdot 1^2}} = \frac{1}{1 + \sqrt{5}} = \frac{\sqrt{5} - 1}{4} $$
(ii) $n \neq -1$ ($n$ は $-1, 0$ 以外の整数)のとき
$n$ が正の整数のとき($n \ge 1$)、$-\frac{n+1}{n} < 0$ である。 $n$ が $-2$ 以下の負の整数のとき($n \le -2$)、$n+1 \le -1 < 0$ であり、$n < 0$ であるから、$\frac{n+1}{n} > 0$ すなわち $-\frac{n+1}{n} < 0$ である。 いずれにせよ、$-\frac{n+1}{n} < 0$ となる。 したがって、$a \to \infty$ のとき $\frac{h}{a} = a^{-\frac{n+1}{n}} \to 0$ となる。 よって、
$$ \lim_{a \to \infty} \frac{r}{a} = \frac{0}{1 + \sqrt{1 + 4 \cdot 0^2}} = \frac{0}{2} = 0 $$
以上より、求める極限値は $n=-1$ のとき $\frac{\sqrt{5} - 1}{4}$、$n \neq -1$ のとき $0$ となる。
解説
(1)は、内接円の半径を求める基本手順である「面積を2通りに表して方程式を立てる」アプローチです。幾何的に相似を利用して解くことも可能ですが、面積を用いるのが最も簡明です。
(2)は、極限の計算において「不定形にならない形」をいかに作るかが問われています。そのまま $a$ を消去しようとすると式が複雑になりますが、$\frac{r}{a}$ の式において $\frac{h}{a}$ というかたまりを作り、その極限に帰着させることで見通しが良くなります。極限の収束・発散は $a$ の指数の符号によって決まるため、指数 $-\frac{n+1}{n}$ が正、ゼロ、負のいずれになるかで丁寧に場合分けを行う論理的思考力が試されます。
答え
(1) $$ r = \frac{ah}{a + \sqrt{a^2 + 4h^2}} $$
(2) $n = -1$ のとき $\frac{\sqrt{5} - 1}{4}$ $n \neq -1$ のとき $0$
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