名古屋大学 1993年 文系 第1問 解説

方針・初手
空間において、2つの直線が垂直であるとは、交わるかどうかにかかわらず、それらの方向ベクトルが垂直(内積が $0$)であることを意味する。 したがって、3つの直線すべてに垂直な直線が存在するためには、求める直線の方向ベクトルが、与えられた3直線それぞれの方向ベクトルすべてと垂直になることが必要十分条件となる。 まずは各直線の方向ベクトルを読み取り、それらすべてに垂直な非零ベクトルが存在する条件を立式する。
解法1
直線 (i), (ii), (iii) の方向ベクトルをそれぞれ $\vec{d_1}, \vec{d_2}, \vec{d_3}$ とする。 与えられた直線の方程式から、方向ベクトルは以下のようにとることができる。
$$ \vec{d_1} = (1, 1, -1) $$
$$ \vec{d_2} = (3, -3, 1) $$
$$ \vec{d_3} = (a, 1, 1) $$
3直線すべてに垂直な直線の方向ベクトルを $\vec{v} = (p, q, r)$ とおく。(ただし $\vec{v} \neq \vec{0}$) 条件は、$\vec{v}$ が $\vec{d_1}, \vec{d_2}, \vec{d_3}$ のすべてと垂直になることであるから、それぞれの内積が $0$ になる。
$$ \begin{cases} \vec{d_1} \cdot \vec{v} = p + q - r = 0 & \cdots \text{(1)} \\ \vec{d_2} \cdot \vec{v} = 3p - 3q + r = 0 & \cdots \text{(2)} \\ \vec{d_3} \cdot \vec{v} = ap + q + r = 0 & \cdots \text{(3)} \end{cases} $$
(1) と (2) の辺々を加えると
$$ 4p - 2q = 0 \iff q = 2p $$
これを (1) に代入して
$$ p + 2p - r = 0 \iff r = 3p $$
これらより、$\vec{v}$ は実数 $p$ を用いて次のように表せる。
$$ \vec{v} = (p, 2p, 3p) = p(1, 2, 3) $$
$\vec{v} \neq \vec{0}$ より $p \neq 0$ である。したがって、共通の垂線の方向ベクトルとして $\vec{v} = (1, 2, 3)$ をとることができる。 これが $\vec{d_3}$ とも垂直になるためには、(3) を満たせばよい。 $\vec{v} = (1, 2, 3)$ を (3) に代入すると
$$ a \cdot 1 + 1 \cdot 2 + 1 \cdot 3 = 0 $$
$$ a + 5 = 0 $$
$$ a = -5 $$
逆に $a = -5$ のとき、方向ベクトルが $(1, 2, 3)$ であるような任意の直線は、3直線 (i), (ii), (iii) のすべてに垂直となり条件を満たす。 よって、求める $a$ の値は $a = -5$ である。
解法2
3直線 (i), (ii), (iii) の方向ベクトル $\vec{d_1}, \vec{d_2}, \vec{d_3}$ は解法1の通りである。 これら3つのベクトルすべてに垂直な非零ベクトル $\vec{v}$ が存在するための必要十分条件は、$\vec{d_1}, \vec{d_2}, \vec{d_3}$ が同一平面に平行であること、すなわち1次従属になることである。
$\vec{d_1}$ と $\vec{d_2}$ は互いに平行ではないため、3つのベクトルが1次従属になる条件は、実数 $s, t$ を用いて
$$ \vec{d_3} = s\vec{d_1} + t\vec{d_2} $$
と表せることである。成分で表すと
$$ (a, 1, 1) = s(1, 1, -1) + t(3, -3, 1) $$
$$ (a, 1, 1) = (s + 3t, s - 3t, -s + t) $$
各成分を比較して以下の連立方程式を得る。
$$ \begin{cases} a = s + 3t & \cdots \text{(4)} \\ 1 = s - 3t & \cdots \text{(5)} \\ 1 = -s + t & \cdots \text{(6)} \end{cases} $$
(5) と (6) の辺々を加えると
$$ 2 = -2t \iff t = -1 $$
これを (6) に代入すると
$$ 1 = -s - 1 \iff s = -2 $$
これらを (4) に代入して $a$ を求める。
$$ a = -2 + 3(-1) = -5 $$
よって、求める $a$ の値は $a = -5$ である。
解説
空間図形において「2直線が垂直である」という場合、2直線の方向ベクトルが直交(内積が $0$)していれば垂直と定義されるため、交わるかどうか(同一平面上にあるかどうか)は問わない。したがって、本問は「3直線の方向ベクトルすべてに垂直な非零ベクトルが存在する条件」を求めることに帰着できる。
もし「交わって垂直(直交する)」条件まで求められていると解釈すると、問題の難易度は大きく上がる。しかし実は、$a = -5$ のとき、この3直線はすべてと交わる共通垂線を持つように設定されている。具体的には、点 $(1, 2, 3)$ を通り方向ベクトルが $(1, 2, 3)$ の直線が、(i), (ii), (iii) のすべてと交わりつつ垂直となる。作問者はこの美しい状況を背景として想定していたと考えられる。
答え
$a = -5$
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