名古屋大学 1962年 理系 第1問 解説

方針・初手
各小問について、それぞれ独立した基本的な定理や公式を用いて空欄を埋める。 (1)は三角形の面積と高さの関係、(2)はベクトルの内積や球の性質、(3)は複素数の累乗根、(4)は指数関数の置換と相加相乗平均、(5)は無限等比級数の収束条件、(6)は定積分で表された関数の微分の基本事項を確認して立式する。
解法1
(1) 三角形 $ABC$ の $3$ 辺の長さを $BC = a, CA = b, AB = c$ とする。 点 $P$ から直線 $BC, CA, AB$ に下ろした垂線の長さをそれぞれ $h_a, h_b, h_c$ とする。 それぞれの三角形の面積は、$\triangle PBC = \frac{1}{2} a h_a$、$\triangle PCA = \frac{1}{2} b h_b$、$\triangle PAB = \frac{1}{2} c h_c$ と表せる。
条件より $\triangle PBC : \triangle PCA : \triangle PAB = a : b : c$ であるから、
$$ \frac{1}{2} a h_a : \frac{1}{2} b h_b : \frac{1}{2} c h_c = a : b : c $$
各項を対応する辺の長さ($a, b, c$ はいずれも正)で割ると、
$$ h_a : h_b : h_c = 1 : 1 : 1 $$
したがって、$h_a = h_b = h_c$ であり、点 $P$ は $3$ 辺からの距離が等しい点である。 点 $P$ は三角形 $ABC$ の内部の点であるため、三角形の内心と一致する。
(2) 空間内において、$\angle APB$ が直角になる点 $P$ の軌跡は、線分 $AB$ を直径とする球面である。 $\angle APB$ が鈍角($90^\circ < \angle APB < 180^\circ$)となるのは、点 $P$ がこの球面の内部にあるときである。 ただし、点 $P$ が線分 $AB$ 上にあるとき、$\angle APB = 180^\circ$(点 $P$ が $A, B$ と一致する場合は角が定義されない)となり、鈍角の定義からは外れるため、線分 $AB$ 上の点は除外される。
よって、求める存在範囲は「線分 $AB$ を直径とする球の内部。ただし、線分 $AB$ 上の点を除く。」となる。
(3) 求める複素数を $z$ とすると、$z^3 = 8$ である。 これを変形して因数分解する。
$$ z^3 - 8 = 0 $$
$$ (z - 2)(z^2 + 2z + 4) = 0 $$
したがって、$z = 2$ または $z^2 + 2z + 4 = 0$。 二次方程式を解の公式を用いて解くと、
$$ z = \frac{-2 \pm \sqrt{4 - 16}}{2} = -1 \pm \sqrt{3}i $$
よって、求める複素数は $2, -1 \pm \sqrt{3}i$ である。
(4) 方程式 $2^x + 2^{-x} = a$ において、$X = 2^x$ とおく。 $x$ が実数であるから $X > 0$ である。 相加平均と相乗平均の大小関係より、
$$ 2^x + 2^{-x} \geqq 2\sqrt{2^x \cdot 2^{-x}} = 2 $$
等号は $2^x = 2^{-x}$、すなわち $x = 0$ のとき成り立つ。 したがって、実数解をもつための $a$ の条件は $a \geqq 2$ である。
このとき、方程式は $X + \frac{1}{X} = a$ となり、両辺に $X$ を掛けて整理すると、
$$ X^2 - aX + 1 = 0 $$
二次方程式の解の公式より、
$$ X = \frac{a \pm \sqrt{a^2 - 4}}{2} $$
$a \geqq 2$ のとき、$a^2 - 4 \geqq 0$ かつ分子の $a - \sqrt{a^2 - 4} > 0$ であるため、得られた $X$ はともに $X > 0$ の条件を満たす。 $X = 2^x$ より、両辺の底を $2$ とする対数をとると、
$$ x = \log_2 \frac{a \pm \sqrt{a^2 - 4}}{2} $$
(5) 与えられた無限級数
$$ x + x(1-x) + x(1-x)^2 + \cdots + x(1-x)^n + \cdots $$
は、初項 $x$、公比 $1-x$ の無限等比級数である。 無限等比級数が収束(和をもつ)するための条件は、「初項が $0$」または「初項が $0$ でなく、かつ公比の絶対値が $1$ より小さい」ことである。
(i) 初項が $0$、すなわち $x = 0$ のとき 各項はすべて $0$ となり、級数は収束してその和は $0$ である。
(ii) 初項が $0$ でない、すなわち $x \neq 0$ のとき 収束条件は $|1-x| < 1$ である。 これを解くと、
$$ -1 < 1-x < 1 $$
$$ -2 < -x < 0 $$
$$ 0 < x < 2 $$
このとき、和は無限等比級数の和の公式より、
$$ \frac{x}{1 - (1-x)} = \frac{x}{x} = 1 $$
以上より、和をもつための条件は $x=0$ または $0 < x < 2$ であるから、$0 \leqq x < 2$ となる。 そのときの和は、$x=0$ のとき $0$、$0 < x < 2$ のとき $1$ である。
(6) 与えられた等式
$$ \int_0^x f(t) dt = \cos 3x + c $$
の両辺を $x$ で微分すると、微分積分学の基本定理より、
$$ f(x) = \frac{d}{dx}(\cos 3x + c) = -3\sin 3x $$
求める式は $f(t)$ であるから、変数 $x$ を $t$ に置き換えて、
$$ f(t) = -3\sin 3t $$
また、与式の両辺に $x = 0$ を代入すると、左辺は端点が一致し $\int_0^0 f(t) dt = 0$ となるので、
$$ 0 = \cos 0 + c $$
$\cos 0 = 1$ であるから、
$$ c = -1 $$
解説
小問集合であり、各分野の基本的な定義や公式の確認問題である。 (1)では、面積比から高さの比を導き出すことで内心の定義に帰着させる。 (2)の「鈍角になる範囲」は、球を境界とする領域の問題として頻出である。「線分上を含まない」という境界上の除外点に注意したい。 (4)の指数方程式は置換による二次方程式への帰着と、相加相乗平均を用いた定義域の確認が定石である。 (5)の無限等比級数は「初項が $0$」となる場合を見落としやすいため、丁寧に場合分けを行う必要がある。 (6)の定積分で表された関数は、両辺の微分による被積分関数の導出と、端点の代入による積分定数の決定という二つの操作が基本となる。
答え
(ア)内心 (イ)線分 $AB$ を直径とする球の内部。ただし、線分 $AB$ 上の点を除く。 (ウ)$2, -1 \pm \sqrt{3}i$ (エ)$a \geqq 2$ (オ)$\log_2 \frac{a \pm \sqrt{a^2 - 4}}{2}$ (カ)$0 \leqq x < 2$ (キ)$x=0$ のとき $0$、$0 < x < 2$ のとき $1$ (ク)$-3\sin 3t$ (ケ)$-1$
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