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名古屋大学 1975年 理系 第3問 解説

数学2/三角関数数学A/図形の性質数学1/図形計量テーマ/不等式の証明
名古屋大学 1975年 理系 第3問 解説

方針・初手

三角形の内角の和が $\pi$ であることと与えられた条件 $C = nB$ から、角 $B$ の取りうる値の範囲を絞り込む。辺の大小関係 $b < c$ については、三角形の辺と角の大小関係の定理(より大きい角に対する辺はより長い)を用いて示す。$c < nb$ については、正弦定理を用いて辺の長さを角の正弦(サイン)に置き換え、不等式の証明に帰着させる。

解法1

三角形の内角の大きさをそれぞれ $A, B, C$ と表す。 三角形の内角の和は $\pi$ であるから、$A + B + C = \pi$ が成り立つ。 これに $C = nB$ を代入すると、

$$ A + B + nB = \pi $$

$$ A + (n+1)B = \pi $$

$A > 0$ であるから、$(n+1)B < \pi$ となり、角 $B$ の範囲は

$$ 0 < B < \frac{\pi}{n+1} $$

となる。 条件より $n \ge 2$ の整数であり、$B > 0$ であるから、

$$ B < nB = C $$

が成り立つ。三角形において、より大きな角の対辺はより長いため、$B < C$ より

$$ b < c $$

が示された。

次に、$c < nb$ を証明する。 正弦定理より、

$$ \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} $$

が成り立つ。$C = nB$ であるから、これを $c$ について解くと、

$$ c = \frac{\sin(nB)}{\sin B} b $$

となる。$b > 0, \sin B > 0$ であるから、$c < nb$ を示すためには

$$ \frac{\sin(nB)}{\sin B} < n $$

すなわち、

$$ \sin(nB) < n\sin B $$

を示せばよい。 ここで、関数 $f(x) = n\sin x - \sin(nx)$ を考える。この関数を $x$ について微分すると、

$$ f'(x) = n\cos x - n\cos(nx) = n(\cos x - \cos(nx)) $$

となる。いま、$x$ の範囲を $0 < x < \frac{\pi}{n+1}$ とすると、$nx$ の範囲は

$$ 0 < nx < \frac{n\pi}{n+1} < \pi $$

となる。よって、$0 < x < nx < \pi$ が成り立つ。 関数 $y = \cos x$ は区間 $0 < x < \pi$ において単調に減少するため、

$$ \cos x > \cos(nx) $$

が成り立つ。したがって、$0 < x < \frac{\pi}{n+1}$ において $f'(x) > 0$ となり、$f(x)$ はこの区間で単調に増加する。 また、$f(0) = n\sin 0 - \sin 0 = 0$ であるから、$0 < x < \frac{\pi}{n+1}$ のとき、つねに

$$ f(x) > f(0) = 0 $$

が成り立つ。これにより、$\sin(nx) < n\sin x$ が示された。 この不等式に $x = B$ を代入すると $\sin(nB) < n\sin B$ となり、両辺を $\sin B$ ($>0$) で割り、さらに $b$ ($>0$) を掛けることで

$$ b \cdot \frac{\sin(nB)}{\sin B} < nb $$

$$ c < nb $$

が示された。以上より、$b < c < nb$ である。

解法2

辺の大小関係 $b < c$ の証明、および正弦定理を用いて $c < nb$ の証明を

$$ \sin(nB) < n\sin B \quad \left( \text{ただし } 0 < B < \frac{\pi}{n+1} \right) $$

を示すことに帰着させる過程は、解法1と同様である。 ここでは、数学的帰納法を用いてこの不等式を証明する。

自然数 $n \ge 2$ に対して、命題「任意の $0 < x < \frac{\pi}{n+1}$ を満たす実数 $x$ について $\sin(nx) < n\sin x$ が成り立つ」を証明する。

(I) $n=2$ のとき $0 < x < \frac{\pi}{3}$ において、2倍角の公式より

$$ \sin(2x) = 2\sin x\cos x $$

この範囲では $0 < \cos x < 1$ かつ $\sin x > 0$ であるから、

$$ 2\sin x\cos x < 2\sin x \cdot 1 = 2\sin x $$

よって、$\sin(2x) < 2\sin x$ となり、$n=2$ のとき命題は成り立つ。

(II) $n=k$ ($k \ge 2$ の整数) のとき、命題が成り立つと仮定する。 すなわち、「任意の $0 < x < \frac{\pi}{k+1}$ について $\sin(kx) < k\sin x$ が成り立つ」と仮定する。

$n=k+1$ のときを考える。$x$ の範囲を $0 < x < \frac{\pi}{k+2}$ とする。 このとき、当然 $0 < x < \frac{\pi}{k+1}$ も満たすため、帰納法の仮定を適用することができる。 加法定理を用いると、

$$ \begin{aligned} \sin((k+1)x) &= \sin(kx + x) \\ &= \sin(kx)\cos x + \cos(kx)\sin x \end{aligned} $$

帰納法の仮定 $\sin(kx) < k\sin x$ と、この範囲で $\cos x > 0$ であることを用いると、

$$ \sin(kx)\cos x < (k\sin x)\cos x $$

さらに、$\cos(kx) \le 1$ と $\sin x > 0$ であることを用いると、

$$ \cos(kx)\sin x \le 1 \cdot \sin x = \sin x $$

これらを足し合わせると、

$$ \sin((k+1)x) < k\sin x\cos x + \sin x = (k\cos x + 1)\sin x $$

ここで、$0 < x < \frac{\pi}{k+2} < \frac{\pi}{2}$ より $\cos x < 1$ であるから、$k\cos x + 1 < k + 1$ となる。 $\sin x > 0$ であるから、

$$ (k\cos x + 1)\sin x < (k+1)\sin x $$

したがって、$\sin((k+1)x) < (k+1)\sin x$ となり、$n=k+1$ のときも命題は成り立つ。

(I), (II) より、2以上のすべての整数 $n$ について不等式は成立する。 これに $x = B$ を代入することで $\sin(nB) < n\sin B$ を得て、$c < nb$ が示される。 以上より、$b < c < nb$ である。

解説

三角形の辺と角の関係に関する基本的な問題である。辺の長さをそのまま扱うのが難しい場合は、正弦定理や余弦定理を用いて角の三角比の問題にすり替えるのが定石である。本問では正弦定理を用いて $\sin(nB) < n\sin B$ を示すことに気づけるかが最大のポイントとなる。 この不等式の証明においては、解法1のように関数を定義して微分(数学III)を用いる方法が、範囲の確認さえ丁寧に行えば記述量が少なく簡明である。一方で、数学IIIを未習であっても解法2のように数学的帰納法を用いれば証明可能であり、どちらの手法も自然な発想として押さえておきたい。

答え

前半は三角形の辺と角の大小関係から $b < c$ を示し、後半は正弦定理により不等式を角の正弦に帰着させ、微分の利用あるいは数学的帰納法によって $\sin(nB) < n\sin B$ を証明することで、$c < nb$ を示した。これらにより題意は証明された。

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