名古屋大学 1981年 理系 第5問 解説

方針・初手
結論である $f(x) > 1$ を直接示すのが難しい場合、その否定を仮定して矛盾を導く「背理法」が有効である。ある $x > 0$ で $f(x) \leqq 1$ と仮定し、関数 $f(x)$ の単調性を利用して定積分を評価することで、与えられた条件 $\int_0^x f(t) dt \geqq x$ に矛盾することを示す。
解法1
$x > 0$ の範囲において $f(x) \leqq 1$ となる $x$ が少なくとも1つ存在すると仮定し、そのうちの1つを $c$ ($c > 0$) とする。すなわち、
$$ f(c) \leqq 1 $$
と仮定する。
問題の条件より、$x \geqq 0$ においてつねに $f'(x) > 0$ であるから、$f(x)$ は $x \geqq 0$ の範囲で単調に増加する関数である。 したがって、$0 \leqq t < c$ を満たす任意の $t$ において、
$$ f(t) < f(c) \leqq 1 $$
が成り立つ。
このとき、区間 $[0, c]$ における定積分 $\int_0^c f(t) dt$ を考えると、$0 \leqq t < c$ において $f(t) < 1$ であるため、
$$ \int_0^c f(t) dt < \int_0^c 1 dt $$
となる。右辺を計算すると、
$$ \int_0^c 1 dt = \left[ t \right]_0^c = c $$
であるから、
$$ \int_0^c f(t) dt < c $$
が導かれる。
しかし、これは問題で与えられた条件「$x \geqq 0$ のとき $\int_0^x f(t) dt \geqq x$」において $x = c$ としたときの不等式
$$ \int_0^c f(t) dt \geqq c $$
に矛盾する。
この矛盾は、ある $x > 0$ において $f(x) \leqq 1$ と仮定したことによって生じたものである。 したがって仮定は誤りであり、$x > 0$ の範囲ではつねに $f(x) > 1$ である。
解説
結論が成り立たないと仮定して矛盾を導く「背理法」の典型的な問題である。 導関数 $f'(x) > 0$ という条件から関数の単調増加性を読み取り、それを用いて定積分の値を上から評価(不等式を作る)できるかどうかが鍵となる。積分区間内で常に関数値が $1$ より小さい(または一部を除いて小さい)ならば、その定積分も $1$ の定積分より小さくなるという積分の基本性質を利用している。
答え
ある $x > 0$ において $f(x) \leqq 1$ と仮定し、関数の単調増加性を用いて定積分を評価すると、与えられた条件 $\int_0^x f(t) dt \geqq x$ に矛盾することが示された。これにより、$x > 0$ の範囲では $f(x) > 1$ であることが証明された。
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